9:40

雪の壁のような、この急登が坊主ころがしと呼ばれるところか、、

ストックの真ん中部分を持ちながら一歩、いや半歩ずつ

登っているときだ。上から吹き下ろしてくる風が勢いを増した。

オレの10mほど上にいる相棒も静止している。

ここで吹き飛ばされたら、谷底まで落ちてしまうべな、、

両肘、両膝をついて上体を丸めて、青いダンゴムシになる。

ジャケットのフードがバタバタ暴れる。

風がなかなか弱くならない、匍匐前進のようにして登る。

ここを登り切れば、あとはそんなに危険なところはないはずだ。

風は上からだけでなく、真横からも吹いてきた。

まったく気が抜けない。

 

あと少しで急登が終わりそうなころ、後ろを振り向くと、、、、

孤のように描かれた雪の底が切れ落ちて、

はるかその先には緑の津軽平野が広がっていた。

ここからの下山は無理だんべな。

やっぱり、別ルートにしてよかった。