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雪の壁のような、この急登が坊主ころがしと呼ばれるところか、、
ストックの真ん中部分を持ちながら一歩、いや半歩ずつ
登っているときだ。上から吹き下ろしてくる風が勢いを増した。
オレの10mほど上にいる相棒も静止している。
ここで吹き飛ばされたら、谷底まで落ちてしまうべな、、
両肘、両膝をついて上体を丸めて、青いダンゴムシになる。
ジャケットのフードがバタバタ暴れる。
風がなかなか弱くならない、匍匐前進のようにして登る。
ここを登り切れば、あとはそんなに危険なところはないはずだ。
風は上からだけでなく、真横からも吹いてきた。
まったく気が抜けない。
あと少しで急登が終わりそうなころ、後ろを振り向くと、、、、
孤のように描かれた雪の底が切れ落ちて、
はるかその先には緑の津軽平野が広がっていた。
ここからの下山は無理だんべな。
やっぱり、別ルートにしてよかった。
