10:20A.M.

入り口を抜けると、右の棚に金属製の手桶が並んでいたので、

その一つを借りる。手押しの井戸水をくみあげて、そこに水を入れて

左手に持ち、墓地のなかへボチボチ歩いていく。

テニスコートをひとまわり小さくしたぐらいの広さだから、

これならすぐに見つかるべ、、

そう思いながら、端から墓石を見て回る。

外周に沿って、それぞれのお墓をチェックしていくのだが、

見当たらない。まさか、、、ちがうところ?

そんなはずはない、、、最後に真ん中あたりが残ったので

そこへ歩いていくと、、あった、、

墓石の脇を見ると、平成三十年八月二日 F田K夫 行年 七十一歳、、

間違いない。

墓石の両脇にあるステンレス製の花器のなかを掃除し、

中央に置いてあった湯呑み茶碗もきれいにする。

お花もお線香も持ってきていないので、とりあえず水だけ墓石にかけ、

茶碗のなかに水を入れて、合掌。

今度はIさんといっしょに来るかんね、、そんときにお花とお線香を

持ってきますよ、、

墓石は彼の大好きな太平山のほうを向いていた。