⚫︎リセット

 

私は裏にお互いのアルファベットが掘ってあるカルティエのペアリングを
不倫相手からプレゼントしてもらい、喜んだフリをして受け取った。
 
 
内心、彼への敬意がどんどん崩れていた。
 
 
年上で何でも知っていて
頼りになって、大人だと思っていた人が
急に、大人になりきれていない
無責任に恋愛ごっこを楽しんでいる子供に見えた。
 
 
そんな彼を見て
旦那に向き合わず、現実から目を背けて
浮かれていた自分が恥ずかしくなった。
 
なんて情けない。
バカらしい。
 
 
その日は彼には何も伝えず
私の実家まで車で送ってもらい、考えた。
 
 
これからどうしよう。
 
 
 
 
私は何もかもフラットにしたくなった。
 
もう悩みの根源ごと全て無くそうと思った。
 
 
 
 
旦那とちゃんと向き合って
もう結婚生活を続けられないことを伝えよう。
 
 
そしてこの不誠実な不倫関係も終わらせよう。
 
 
それと同時に、誰も幸せにしない
"不倫"は金輪際しないと心に決めた。
 
 
 
まず私は不誠実な関係を終わらすために
年上の彼に会って話しをした。
 
 
 

「旦那と離婚することに決めた、

そしてあなたとももう会わないことに決めた」

 

 

 

びっくりした様子で

彼は離婚する事も、彼と会わない事も辞めるように私を諭してきた。

 

 

 

私の覚悟は強いものだった。

 

 

 

私を選ぶ覚悟のない人に

何を言われても、揺らぐことはなかった。

 

 

ズルい男だな。

 

 

諭されれば諭されるほどそう思った。

 

 

 

ほぼ一方的に言い切って別れ、

今後、彼と連絡が取れないように連絡先を消した。

 

 

 

 

 

そして旦那にも別れを切り出す日が来た。

 

車で迎えに来てくれるタイミングがあり

車中で話しを切り出した。

 

 

 

 

「もう無理だから、離婚したい」

 

 

 

 

完全に話すタイミングを間違えた。

 

 

彼はいつかのように我を忘れ、

アクセルを踏みながら、車のハンドルを左右に激しく切り

 

 

 

「お前が結婚したいって言ったから

してやったんやろう」

 

 

 

そう怒鳴りながら危険な運転をした。

 

 

 

 

怖くて泣いている私を見て、我に返って

泣きながら彼は言った。

 

 

 

 

「嫌だ、嫌だ、無理、、、」

 

 

 

 

私より泣いていたかもしれない。

 

 

 

可哀想だったけど

もう無理だった。

どうしようもなかった。

 

彼も自分の今さっきの行動を省みて

わかっただろう。

 

 

 

私は彼を甘やかし過ぎたし

彼は私に甘え過ぎていた。

 

 

 

私は言った。

 

 

「そういうところだよ」

 

 

「ごめん、本当にごめんなさい、、、」

 

 

そう言って彼はしばらく泣いていた。

 

 

 

 

このままでは彼をダメにしてしまうし、

お互いに幸せになれない。

 

より一層決心が固まった。

 

 

 

 

私は別の日に、市役所に離婚届を取りに行き

記入したものを彼に渡した。

 

そして荷物をまとめて実家に帰った。

 

 

 

それから約半年経った頃

冷静になった彼が

 

 

 

「俺が全部悪かった、ごめん」

 

 

 

そう言って

記入した離婚届を渡してくれた。

 

 

 

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