⚫︎疑惑

 

お互い実家暮らしから、いきなり始まった結婚生活、

基本的に掃除・洗濯・料理、家事は全て私がしていた。

 

私は結婚をきっかけに、家の事ができるように

今まで勤めていた会社を辞め

フルタイムだが残業の少ない職場へ転職した。

 

 

彼は残業があり忙しくしていたが

毎月の給料は私とそう変わらなかった。

 

 

彼が仕事から帰ると

点々と、脱いだ順番に服が落ちていて

それすらもかわいく、楽しく過ごしていた。

 

 

そんな楽しい結婚生活を送っていて、数ヶ月経ったある夜。

仕事から帰った彼はスーツのジャケットだけハンガーにかけ

そのままリビングの机で、疲れたのかうたた寝をしていた。

 

もう22時は過ぎただろう時間に

ハンガーにかかっていたジャケットの胸ポケットから

メールの着信音がした。

 

 

「?」

 

 

なんとなく、

本当になんとなく、嫌な予感がした。

 

 

 

これが女の勘というものだろう。

 

 

 

迷いもなくポケットから彼の携帯を取り出して

新着メールを開いた。

 

 

差出人の登録名は苗字のみ。

 

 

"○○(彼の高校時代のあだ名)、

相談のってくれてありがとう。

再会できてよかった。

 

これからも相談のってね。"

 

 

それ以前にやりとりしただろうメールは、全て削除されている。

 

 

 

 

 

一瞬にして頭に血が上った。

 

 

 

 

 

うたた寝していた彼をたたき起こし、問いただした。

 

 

「これ誰?」

 

 

私は聞いたものの

高校時代、九州でつきあっていた元カノの話しを聞いたことがあり

その子だろうと、検討がついていた。

 

 

「これ○○ちゃんやろ、何で連絡とってるん。

いつ会ったん?」

 

 

彼は頑なに口を開かなかった。

黙ったまま何も言わない。

 

 

 

まさか、

まさか彼が、、、

 

 

 

やましいことはあるかどうかは一旦置いておいて

私が嫌がることをわかっていて

メールボックスの全てのメールを消してまでコソコソしていたことがショックだったし、

彼が情けなかった。

 

 

 

彼は何も言わず、ずっと深刻な顔で黙って俯いているので

どうしようもなく私は自分の母親に電話をした。

 

 

「彼のこと信じたいけど、信じられへん、

どうしたらいいかわからへん」

 

 

泣きながら母に何度もそう話した。

 

 

 

 

それでもずっと黙っていた彼に私は言った。

 

 

「わかった、これ以上何も聞かへん、

でもこの女の番号消して」

 

 

 

彼は言う通りにした。

 

 

 

 

それで折り合いをつけた。

 

いや、”つもり”だったのだ。

 

 

 

 

今思えば、ここから彼への信頼が一気に崩れてしまっていた。

 

彼を少しも信じることができなくなってしまった。

 

信じたかった。

 

けど心はそうはいかなかった。

 

 

 

 

"彼は私を裏切った"

 

 

 

 

その心の傷がずっと消えなかった。

 

 

 

 

結婚て何?

 

 

 

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