私が森を進んでいきますと、私以外の動く音が聞こえました。初めて聞く音、逸る気持ちを抑えながら私はその音に近づきました。

 

「あなたは、だれ?」

 

進んでいった先には髪の長い、切れ目の女性がいらっしゃいました。彼女はミコト様が仰った私以外の10人の御一人なのでしょう。私は私が想像していた以上にとてもうれしく思いました。これから彼女と上手くやれるか、今からとても心配していました。

 

「お初にお目にかかります。日秋夜嶺と申します。よろしければ貴方様の御名前を聞かせていただきたいのですが」

 

綺麗な紫の瞳に覗かれながら私は彼女に伺いました。

 

「・・・シルヴィ・ヴィオレットよ。よろしく頼むわね。夜嶺、あなたはここに生まれた理由とか、知っている顔をしているわね、よければ聞かせてくれないかしら?」

 

ヴィオレット・・・スミレを冠した名の人はそう言いました。私は知る限りのすべてをお話ししました。

 

「なるほど、ね。要するには後8人で龍帝を倒すのね。だから私たちはいくつもの武器を所有しているのね」

 

そう言われてから私は武器の有る空間の存在に気が付きました。どうやらその空間は私だけの空間で物を出し入れすることが出来るようです。私はその空間から直感でつかんだ武器を取り出しました。

 

「・・・あなたも杖を使うの?」

 

「ヴィオレット様も杖をお使いになられるのですか?」

 

ヴィオレット様が杖を取り出しながらそう聞かれたので、私は反射的にそう聞き返していました。やはりあの空間は個人に与えられた空間なのでしょう。私と同じように何もない空間からヴィオレット様は杖を抜いていました。きっとはたから見ると私も同じように取り出したのでしょう。

 

「ヴィオレット様って・・・、私たちは10人しかいない仲間じゃない。

 敬語が抜けないのは仕方ないとするから、まずは私を名前で呼んでちょうだい。

 私は夜嶺と友達にもなりたいから」

 

ヴィオレット様・・・いえ、シルヴィさんはそう私に言ってくださいました。私たちは頭で色々と理解をしています。これからの世界の常識を少しだけ。ですが何もかも初めての行為、いわば赤子と大して変わらぬ存在なのです。ですので、シルヴィさんの提案はとてもうれしく思いました。私も初めてなことが多いので、友達、というものをつくってみたかったのです。しかし、私はミコト様から世界を救うという大役を任されました。私はほかの9人の方々に頼みごとをする立場になります。だからこそ慎重にお話をさせていただいていました。それも、杞憂だったのですね。

 

「わかりました、敬語はその、頑張ります。

 なのでシルヴィさん、これからは友人として、仲間として共に戦ってくれますか?」

 

「えぇ、もちろん。よろしくね、夜嶺。それと」

 

 

あなたの名前、夜の嶺とても美しい音ね、と

私の友人は教えてくれましたそんな時です。

 

 

「くろ君ーーー!こっちから人の、人の声がするよぉーーーー!」

 

「わぁったから、ひめ。落ち着け!」

 

そんな声が聞こえて参りました。シルヴィさんとそちらの方を見ると橙色の美しい髪の女性と、その女性を横抱きにした全身の殆どが黒で覆われた男性がゆっくりと近づいてきました。

 

「みーっけた!初めましてー!私はカラリエーヴァ・ブラークだよ、これから一生よろしくね」

 

「俺はチプラータ・サンツィオだ、以後このエーヴァごとよろしく頼むぜ」

 

私たち二人はとても、その、驚いてしまいました。あの、ある意味色々と。男女の友情とはこのような形なのでしょうか・・・?

 

「二人のことはね、精霊さんが教えてくれたんだー。私は中央の姫になるんだけど、理解追いつくかな?」

 

 精霊、中央の巫女。最初の知識としてありました。世界を統べる精霊様は5種類に分かれます。北・南・西・東そして中央。その精霊様の頂点である精霊王様に気に入られた5人の乙女は精霊王の御力を余すことなく発揮することが出来るという。まさに精霊王様方のお姫様。その5人の影響力は、世界を滅ぼすほどです。そして、5人の御方が決めたのならば、世界が滅びることを止めることはできないでしょう。精霊王様には眷属の精霊様がいらっしゃいます。その精霊様方とでしたら、少し気に入られれば、御力を少し借りることもできます。彼女は、カラリエーヴァ・ブラーク様は、世界を統べる中央の精霊王様のお姫様なのです。きっとチプラータ・サンツィオ様はお姫様の護衛として天から使わされたのでしょう。

 

「精霊様に知られているとは何たる光栄。改めまして、日秋夜嶺と申します。」

 

「・・・シルヴィ・ヴィオレット、夜嶺の友人よ。」

 

「あー、ひめはそこまで凄いやつじゃないから、謙遜とか無しな。お互い情報交換しようぜ」

 

チプラータさん(お二人も敬語は要らないといわれましたのでシルヴィさんと同じように接することになりました)から聞いた情報によりますと、お二人は同じ場所で生まれたそうです。そして、お互いが夫婦だという認識から始まったとのことですが・・・。夫婦とは、強制されてなるものなのでしょうか?お二人に聞きますと、

 

「「全然違和感ないんだよね(な)」」

 

と、言っていました。・・・愛の形は人それぞれ、無限大ということでしょうか?まだまだ未熟な私たちですから、世界に人がたくさん生まれてから、多くのことを学ばせていただきましょう。そう強く決心いたしました。

 

 カラリエーヴァさんから聞いた情報によりますと、私たちはすべての武器を扱おうと思えば扱うことが出来ますが、やはり自分に合うタイプがおおよそ4種類(メイン武器とサブ武器が3種だそうです)あると教えてくださいました。そして、戦闘するにあたって得意な戦い方・ジョブがあると教えてくださいました。わかりやすくいうのでしたら後にできる日本文化の侍ジョブならば、メイン武器は刀、という感じです。ジョブはカラリエーヴァさんが鑑定の魔法を精霊様の力を借りて行うそうです。ちなみに、精霊様の力を借りるのは信憑性を上げるためのもので、精霊様のお力を借りなくても鑑定はできるそうです。

 

 チプラータさんのメインは剣、サブが魔導書・短剣・槍の騎士、カラリエーヴァさんのメインが魔導書、サブが剣・短剣・レイピアの特殊ジョブの姫だと教えてくださいました。やはり、カラリエーヴァさんは生まれながらのお姫様なのですね。精霊の姫だけではなく、戦闘職も姫様だなんて・・・。そして、流石生まれながらの夫婦というべきでしょう。殆どの使用武器が同じです。申し訳ないのですがチプラータさんのサブの一つが魔導書と聞いたときは、二人で驚いてしまいカラリエーヴァさんに笑われてしまいました・・・。

 

「それじゃ、二人の武器を調べていくか!」

 

チプラータさんはそう言うと漆黒の剣を取り出しました。そして私たちは長時間かけて戦闘をし、私たちの使用武器を把握しました。これも鑑定で知ることはできますが、武器を知ることはやはり自分の体で理解することが一番いいと伺いました。その為私たちは武器を変えながら数時間にわたり戦闘をしました。その間カラリエーヴァさんは、私たちのジョブを調べ、食事の用意をしてくださいました。私たちの使用武器とジョブ、私のメインは杖、サブがレイピア・短剣・体術の特殊ジョブ・巫女でした。特殊ジョブに関してカラリエーヴァさんは初めてミコト様に出会ったから巫女に選ばれたのだろうと言っていました。シルヴィさんのメインも杖で、サブが双剣双銃・鎌・弓の魔術師でした。

 

 

「はーい!ごはんですよーっと」

 

カラリエーヴァさんが用意してくださったご飯はおにぎりとお味噌汁で・・・お味噌、汁?

 

「ねぇカラリエーヴァ、これは何を使ったの・・・?」

 

顔色を悪くしたシルヴィさんがそう言いました。そう、お味噌汁の色が、白かったのです。ですがお味噌の匂いはしますし、お豆腐なども入っています。

 

「えっとねー、おにぎりは中にあんこを詰めました!」

「「「おはぎ!?」」」

 

最初のショックは安全だと思ったおにぎりでした。まさか中にあんこが入っているとは・・・。

 

「次にお味噌汁には牛乳を入れて、お豆腐とニラと鮭とお味噌を入れたよ♪」

「「「なんでさ(ですか)!?」」」

 

この時私たちの心は団結いたしました。二度とカラリエーヴァさんにお料理をさせないと。