夏の夜は、なかなか眠れないことがあります。
暑さのせいでしょうか。それとも歳のせいでしょうか。 布団に入っても目が冴えて、天井を見ているうちに時間が経ってしまうことが、このごろ増えました。
そんな夜は、思い切って起き上がって、湯を沸かすことにしています。
鉄瓶の音が、頭を静かにする
台所で小さな鉄瓶を火にかけて、ぼんやりと待ちます。 大げさなことはしません。ただ待つだけです。
やがてお湯が沸いてくると、あの「しゅん、しゅん」という音がしはじめます。 この音が、不思議と頭の中のざわざわを落ち着かせてくれる気がします。
お稽古でも、釜の音は大切にしてきました。 師匠から「松風(まつかぜ)といってね、お湯が沸く音のことよ」と教えていただいたのは、もう何十年も前のことです。 その時はよくわかっていませんでした。 でも今になって、夜中にひとり湯を沸かしながら、ようやく少しわかったような気がしています。
夜のお茶は、ひとりで飲む
夜中にお抹茶を点てるわけではありません。 煎茶をひとつまみ、小さな急須に入れて、静かに飲むだけです。
夜なので、熱いお湯よりも少し冷ましてから注ぎます。 そうするとお茶の甘みが出て、なんともやさしい味になります。
師匠からは「お茶は時間を問わない」と言われていました。 朝に飲むお茶も、夜に飲むお茶も、お茶はお茶なんですね。 その言葉の意味が、こんなふうに身にしみるとは思っていませんでした。
今年の夏は、稽古に行けていない
今年の夏は膝のこともあって、稽古に行けない日が続いています。 手術から2ヶ月以上が経って、少しずつ良くはなっているのですが、正座はまだ難しい状態です。
家でお湯を沸かしていると、お稽古の場の静けさを思い出します。 畳の感触。釜の音。お菓子の甘さ。お道具を扱う静かな時間。
遠くにいても、お茶はすぐそばにある気がします。 それがうれしいです。
眠れない夜に、そんなことをひとりで思いながら、お茶を飲んでいます。
これが私の、夏の夜の小さな習慣になりました。
---
お茶の種類について気になった方は、ブログにも書いています。 抹茶と煎茶と玉露の違いとは?製法と味わいのことを調べてみました
眠れない夜に、のんびり読んでいただけたらうれしいです。