モンゴルだるま@モンゴルよろずコーディネーター兼業遊牧民です。

昨日、午後2時過ぎに安倍首相がウランバートルに到着。
午後3時ごろからモンゴルのサイハンビレグ首相との首脳会談が行われました。

日本でもNHKをはじめ、ニュース報道されていたと思います。

時事通信の記事によると
 【ウランバートル時事】安倍晋三首相とモンゴルのサイハンビレグ首相が22日に行った会談の要旨は次の通り。
 【経済連携協定(EPA)】
 サイハンビレグ氏 実施のためのモンゴル国内法が本日、国会で可決した。
 安倍氏 私の訪問に合わせて成立したことは大変喜ばしい。EPAを通じ両国経済関係が一層発展することを期待したい。
 【経済協力】
 サイハンビレグ氏 炭田(開発)で覚書に署名できることをうれしく思う。東進鉄道を進めることに賛同し、調査を進めてくれることを歓迎したい。2020年東京五輪・パラリンピック準備で、モンゴルは建設労働者を派遣する用意がある。
 安倍氏 炭田開発と東進鉄道について、提案内容を日本側関係者に真摯(しんし)に研究させたい。
 【北朝鮮】
 安倍氏 北朝鮮による核・ミサイル開発に対して国際社会が自制を求めるべきだ。拉致問題解決に向けて引き続きモンゴルの協力を期待したい。
 サイハンビレグ氏 北東アジアの安定にも貢献していきたい。
 【安全保障】
 サイハンビレグ氏 (安倍政権が掲げる)積極的平和主義を支持する。日本の国連安全保障理事会常任理事国入りも支持する。
 安倍氏 感謝する。(2015/10/22-18:44)


引用元時事通信のサイトは↓
「日・モンゴル首脳会談要旨」

前記事で私が予想していたような流れでしたねー。
まあ、他の流れようがないと思うのだけれど。

前からずーっと協議されていたことばかりですが、首脳同士が「方針について合意」というのは大きいことなのではないかと。


モンゴル側としては、今年は経団連のモンゴル訪問団も実現したし、日本からどーんと大きな投資をひっぱってきて、閉塞気味+失速気味なモンゴル経済の勢いを取り戻したい、という期待は大きいはず。

オリンピック施設建設のためのモンゴル人労働者派遣とかって、わりとちゃっかりですよね。
日本は基本的に外国からの単純労働者の受け入れはやらない方針のはず。
実際には、結構、酪農・農場・農協関係はじめ、単純労働っぽいところで「実務研修生」という名目で工場派遣や農場派遣でモンゴル人が日本で暮らしているのですが。

建設分野でモンゴル人の労働者派遣というのはなかなか興味深いお話です。

だって、モンゴル国内の土木建設事業や高層ビル等のインフラ建築ですら、モンゴル人労働者が集まらず、中国とか北朝鮮とかからの出稼ぎ労働者で工事が行われているのが現状ですから。

技術的な問題や労働条件(主に給与関係)で折り合わず、ということなのですが。

日本だったら給料高いだろうから、出稼ぎ行かせたいなーっていう本音でしょうが日本的には、安い労働力だったら、他の国からいくらでもゲットできてしまうのではないか、と。

炭田開発・東進鉄道についてもしかり。

2012年にタワントルゴイ(通称TT)のコークス炭田の開発投資の権利を国際入札で、三井物産・神華(中国国営企業)のジョイントベンチャーコンソーシアムで決めたはずが、ロシアの横やりや政権交代のせいでとん挫。

そして、今年2015年に、今度は住友商事・神華グループのコンソーシアムで権利をとって・・・で、やっぱり、話の進みは意外と遅かったりして。

さらに、炭田開発の投資の話が、やれ、地方に火力発電所を作れだの、鉄道工事に参画せよだのと、投資側が想定していない投資計画がバーター的条件みたいに交渉するモンゴル側の話は、モンゴルでのテレビ報道を見ていても「それ、おかしいべ」と日本人の私は思ってしまうのです。

モンゴルでビジネスしている日本人は少なからず、大なり小なり、こういう絵空事に近い、壮大なドリームプロジェクトをモンゴル人から持ちかけられたことがあるはず。

ストーリー的にはモンゴル国の発展に大きく貢献できるし、なんか儲け率よさそう、みたいに見えるけれど、じゃ、投資コストの内訳は?とか工程スケジュールは?とか、ROIどのくらい?とかっていう話になると、なんか尻すぼみ。

数値・金額的な根拠というか裏付けが全然ない「あったらいいな」な野望で、「そりゃいいですね。モンゴルのためにどーんと行きましょう!」という気前のいい日本人投資家を釣り上げようというのは、いくらなんでもちょっと無理。

楽しい話だけれど、「提案内容を研究」というのは、根拠のない話では日本人は動きませんよ、という遠回しな言い方ではないかと、想像します。

いくらなんでも、日本だって、「アベノミクス」という提灯で、為替相場の円安操作でみかけは「景気回復」っぽいにせよ、やっぱり、経済的閉塞感からの脱却ってまだまだだと思うし。

国際条約締結で決めて国際入札で決まったはずの話ですら、政権交代すると、ぐずぐずとルールが変わり、投資タイミングがおかしくなってしまうし、国内法もころころ変わってしまう、モンゴル人の経済的感覚やセンチメントで、進む話もとん挫する、という実情を「研究」したうえで、投資できる人は、よっぽどの腹黒か、よっぽどの冒険者だといわざるをえません。

でも、鉱山開発が非常に魅力的なのは間違いないですね。
けた違いですものね。収益も雇用促進もインフラ整備の可能性も。

ここは、日本のマインドにあわせて、モンゴルが一発奮起すれば、「山は動いた」ってことになるんじゃないかと期待。
モンゴル側が動かないと日本は動かないよ、というメッセージはかなり前から出しているはずなんだけど、意外と、自分たちが変わらなきゃ、汗水たらして、骨をおってがんばらなくちゃ、という話への反応が薄いんですよね、モンゴル政財界って。

切り札カード的に拉致問題で協力って出てくるけれど、実際問題として、これ、何ができるのか?
横田めぐみさんのご両親ももうかなり高齢で、健康状態も万全とはいえないし、早く解決してほしいけれど、この問題はどうやったとしても、当事者両国の首脳同士で対決しなければ、らちが明かない・・・。

まぁ、そんなこんなで、とにかく安倍首相、モンゴル2回目の訪問は無事終了。
日本とモンゴルの関係者の皆さま、お疲れ様でした。

外務省のモンゴル関係者も大集結だったみたい。
ほんとお疲れ様、な話ですよね。

でも同じ首相が在任中に2回もモンゴル訪問って、なかなか珍しいですよね。
この意義がモンゴル側にどれだけ伝わるのか・・・

まぁ、方向性は決まったのだし、一応、EPAを実際に活用するための、国内法の整備も進んでるってことになっているのだから、モンゴル国内の家畜衛生面での改善とか、むちゃくちゃな農薬使用とかは規制がかかってくれるんじゃないか、と期待です。

乳製品と蜂蜜・チャツラガナあたりはモンゴルから日本への輸出は関税撤廃という流れらしいので、私たちも恩恵にあずかれるチャンスはあるかもー。

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