モンゴルだるま@モンゴル語通訳・エコツーリズム普及仕掛け人兼業遊牧民です。
実は長年勘違いしていたことを謝らなければいけません。

1:視野は広ければいいってものじゃない。
2:馬の視野はかなり広くて、なんと350°も見渡せちゃう。

この事実は先日、「一人で馬で羊の放牧に行った挙句、とっても怖い思いをした」ときの経験とネット検索でゲットしたものであります。

山登りをする人たちがいうところの「ガレ場」(岩や大きな石がゴロゴロしているところ)の断崖絶壁にヤギを馬でおっかけて登った挙句、にっちもさっちもいかない袋小路のようなところに出てしまい、Uターンもできず、馬に乗ったまま、バックすること15mというとっても恐ろしい目にあってしまった・・・

で、実は私、怖くて後ろは振り返っているものの、あんまり足場がわかってなかったんですよね。
変な姿勢でバランス崩したら、そのまま谷底まで転げ落ちて、大切な馬も私も怪我・・・というか死んじゃうかも?というすごいデンジャラスゾーンに突入しちゃってたから。

とにかく、下がるしかない、からゆっくりゆっくり馬を落ち着かせながら、馬を信じて後ずさり・・・(この時間が超長かった)

で、馬も後ろなんか見えていないだろうから、ほんと足探り状態なんだろうなって思ってたのです。

でも、実際は、馬は後ろ、見えてたようです。
ただ、距離感があんまりないので、やっぱり怖かったと思います。

そういう意味では、手綱を引き絞って、適切に声をかける、重心をしっかりキープする、という自分の生存本能は正解でした。

で、思ったのがですね・・・
馬は「後ろが見えないから乗り手がへんなことをするとビビって暴れたりする」のではなく、「後ろでへんなことをしているのが見えすぎちゃうからビビって暴れる」のだということ。

今まで、乗馬ツアーの参加者にお伝えしていたことの真逆であったということですね。

よく、乗馬走行中に写真を撮ろうと、カメラを取り出すために、ゴソゴソしていて馬が暴れる、とか、ウィンドブレーカーや雨具を脱ごうとしたときにバサバサした音にびっくりして暴れる、というケースで落馬する方がいらっしゃる、というのは、同業他社の話やインターネットでのモンゴル乗馬紀行のサイト・ブログなどでもよく見ていたんだけど、あんまり私、こういうことやって、振り落とされそうになったことはなかったのです。(そもそも、あんまりこういう不用意なことは乗馬中はしないからだけど)

馬が暴れる時は、「不快感を感じたとき」と「身の危険を感じたとき」。
怒って暴れるってことはあんまりない気がします。
乗馬しようってお客様で馬に危害を加えようという人もいないし、悪気を持って乗ってる人、いないですもんね。

350°のぐるりとした視野を持っている、とはいえ、真後ろ=乗ってる人は確かに見えないから死角であることは確かだから、やっぱり、そういうところで、馬にとって嫌いな音がしていたり、なんだか馬にとって「想定外」の行動を取られたりすると不安になるってことはあるようです。

先日の「絶体絶命のピンチ」のときに乗っていた馬は、とってもおとなしくて乗りやすい子だったので、わりと冷静に対処してくれたからよかったけど、これが、ちょっとカンが強くてびびりやすい子だったら、ほんと危なかったかも・・・

私が大好きでよく乗っていたのは「ビビリー」こと「ビッデルテイ ホンゴル」という馬。
すごく走りが柔らかくて軽やかな足取りで、指示がすごく繊細に通じる乗りやすい子で私は大好きなのですが、私以外の人が乗ると、ちょっとしたことにびっくりして、横っ飛びしたり、猛ダッシュしたり、結構扱いづらいそうなのです。

もう500mくらい先のほうで白いレジ袋が風に吹かれて転がっているのを見るだけで、横っ飛びしたりしますからね。

乗ってる私には何にびっくりしているのかすらわからないこともあります。
で、ビビリーが見つめている遠く遥かの彼方に目を凝らして、、、小さなビニール袋がコロコロと舞っているのを見つけると。

そんな遠いところのものに驚いてどうすんの!って呆れたり笑ったりしてたんだけど、馬にとっては、いち早く危険を察して、「一目散にそれ逃げろ」というのがサバイバル処世術。

そして片目で広い視野(全体の4/5くらい)をカバーしちゃってる分、実は距離感覚があんまり優れているわけではないらしい。

まぁ、そういう馬の生態的特徴さえわかれば、馬が怖がらないように乗り手のほうでカバーしてあげられますね。

人間は「広い視野を持って行動しよう」って将来展望とか、状況判断の総合的な視野があることがよいことと奨励されるわけですが、馬にとっての広い視野って、実は結構、めんどくさいことなのかもね。

競走馬なんかだと、前だけ見て走っていればよいので逆に、広い視野をブリンカーという覆面をつけて、音や視野を遮蔽して、レースに集中させるようにするのですが、モンゴルでの乗馬トレッキングのような場合は、そういうわけにもいきません。

ある程度、馬の性格や癖を事前に馬主さんや乗馬ガイドさんから教えてもらったうえで、乗り手が判断して、馬の不安を取り除いてあげることや、万が一、馬がびっくりしたときに一緒にびっくり仰天して我を失うことなく、素早く落ち着かせてあげることが大事です。

それにしても、馬の視野がそんなに広かったとは!
でも、いろいろ考えちゃったり、あれこれキョロキョロした挙句、蓋の空いたマンホールに落ちそうになったり、いろんな人にぶつかっちゃったりする私も似たようなもの。

大事なことは、広い視野とともに、集中力ってことでしょうかね?
あとは冷静な状況判断と馬に任せる部分と自分が引き受ける部分というように役割分担を的確にすることか・・・

馬に乗ってると、遊牧作業をやっていると、いろいろ考えさせられること、身につまされることばかりです。

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