モンゴルだるま@モンゴル語通訳・翻訳・エコツーリズム普及仕掛け人兼業遊牧民です。

ただいま2010-2012年12月まで委託遊牧民という名のもとに私たちの家畜の群を食い物にしていた男たち(ロブサン(父)&オラーナ(本名バルスボルド)と戦っているところです。

22頭の2011年生まれの子羊、15頭の2009-2010年の史上最悪のゾドを生き延びた3-4歳の羊、5歳の乗用馬、6歳の牝馬を勝手に売却・屠殺処分したうえに、繁殖の要である種つけ用の種オス山羊を誘拐し、種オス羊を処分するという凶悪犯の被疑者として訴えているのですが、なかなか捜査がすすみません。
どうも地元の警察としては、地元の顔見知りを犯罪者にするのが嫌なのか、全然ちゃんとした捜査をしている気配がないのです。

とりあえず、オラーナくんは22頭の子羊と2頭の馬については、容疑を認めたものの、15頭の羊(一番市場価値が高い売れ筋)と種オス山羊の誘拐については否認を続けています。

でも、今、私たちの群におかれている「偽モートン(ニセの種オス山羊)」の元の持ち主がガナーくんの聞き込みによって明らかになりました。

さらに、リアルモートンのDNAサンプルが見つかったのです。

2012年春のカシミア採り体験ツアーのときにとったカシミアが実は、相場大暴落のため、売り時期を見誤り、そのまま我が家に保管されてました。
種オスモートンの強烈な「男臭」フェロモンむんむんのカシミアが我が家に残っていたのです。

でも、このフェロモン芳香むんむんのカシミアが本当にモートンのものかどうか?ちょっぴり自信がなくなっていたのです。だって、作業はすごく忙しかったんだもん。



今日、やっと行方不明だった委託遊牧民の奥さんムーギーさん(種オス山羊や種オス羊が勝手にオラーナくんの弟のところに持って行かれてしまっていたことや、勝手に馬や羊をオラーナくんが売却してトラックの頭金にしちゃってたことなどを教えてくれたため、オラーナくん一家に追い出されたあと、連絡がつけられなくなっていた)と会えました。

そして、春にいたのは、うちのモートンだと確信を持って証言してくれたので、私も自信をもってサンプル提出できます。しかも、種オスだから、400g近くたっぷり取れているので、たとえ地元のエルデネソムの警官がオラーナくんとグルで証拠隠滅をしたとしても、まだまだたくさんあるでよー!
「カシミアは20頭近く分も採ってるんだから、どれが種オスのかなんかわかるもんか」とオラーナくんたちは捨て台詞を吐き捨てていましたが、モートンは毛深いから、最後に作業したので、袋の一番上にのっかっていたうえに、すっごいフェロモン臭というか、イランイランの香水の元みたいな芳香を解き放っているので、間違えるわけがないのです。
元気なムーギーさんにもあえてすごく嬉しかった。

この件について、「大変だったね」と言われたりするのですが、実は、「大変だったね」という過去形ではなく、今もそれなりに「大変」といえば現在進行形で「大変」なのです。

年上の男の人がくっついていてくれればと、メッセージを送ってくださった方もいますが、私はモンゴルの司法制度がどれだけ公正であるか、という実験もかねているので、真っ向勝負でぶつかります。

それに、ガナーくんとか地元の遊牧民さんたちも直接的に支援しれていますし、「モンゴル国家畜盗難・詐欺被害対策協会」なるNPOだか国家プロジェクトだかのスタッフからもいろいろなアドバイスを受けています。
それにもしも、地元警察が証拠を握りつぶすなどして、まともな取り調べ・捜査をしないのならば、そのことも含めて「警察庁」の上の方の人たちに相談する用意もあります。

私たちは真実と証拠のあることしか語っていません。
そして、証言についても、きちんと裁判で証言する覚悟があるかどうか、事実かどうかの裏取りもしながら証拠集めを自分たちでやっています。

家畜盗難・詐欺の被害について、なかなか表にでない、あるいは被害者がきちんと賠償してもらえていない背景には、地元の警察や家畜関係の「えらい」人たちが地元住民を「かばう」ためうやむやになってしまうという問題があります。

もともとモンゴル人同士の家畜委託契約も口約束が多くて、契約書をとりかわしているケースはレア。ましてや、所有している個々の家畜のDNAサンプルを村や国の家畜登録機関に提出するケースなんてレアなはず。それなのに、私たちがDNAサンプルを国に登録していないから、種雄山羊の同定ができない、とかさも、私たちに非があるような口ぶりで責め立てているのです。
どっちが容疑者かわからないぜ、っていう感じ。

今回の私のケースは、モートンについては、購入場所・販売者の写真が日付データ入りで残っていて、モートンと一緒に私がとった写真、預けた時の委託遊牧民との写真もあります。

さらにカシミア採りをしたときの写真などにもモートンがいるのを発見しました。

モートンがまさかこんなことになるとは思わず、血液サンプルなんかとってないよ、と途方にくれましたが、カシミアがあってよかったー!!
といっても、正直、モンゴルのDNA照合がどの程度正確なのかわかりません。

当初、モートンのカシミアかどうか、私も定かでなかったときは提出できなかったけれど、ムーギーさんの証言と、実際にカシミア採りツアーをしたときの写真が出てきたことによって形成逆転。

春の子ヤギ出産期を待って、うちの子ヤギと、モートンを誘拐して種付けさせたオラーナくんの弟ジャーハナくんのところの子ヤギ、そして偽モートンのDNAサンプルで照合しようと考えていたけれど、モートンの毛のDNAサンプルと、偽モートンのDNAサンプルでの対照なので、一致するかどうか、だけで済むから、かなり有力な証拠になるはずです。


殺されたり、傷つけられたりするのが怖いから、泣き寝入りする、なんてことはしません。
正義が必ずしも勝つとは限らない、というのは、以前からの経験でもわかっているけれど、今回は、証拠が不十分で相手を責められない、とかこちら側にも責められたら困ることがある、なんて弱気になる要素はひとつもないのです。

諦めずに、とにかくモートン奪還を信じてがんばります。

大変なんだけど、でも、この経験はとても私の中では大きな教訓となっています。

戦っているといっても、1月中は、表立って戦ってくれていたのは主にガナーくんでした。
でも、先日、私も地元エルデネソムの警察で事情聴取を受けました。
正直、ぬるいなぁ・・・てか、種オス山羊がモートンじゃないってのは、明らかなのに、なんとか私の言葉尻を捉えて「今いる種オスがモートンじゃない、ともはっきり言えないかも・・・」という曖昧さを印象づけて、モートン誘拐を被害届や供述調書から外そうとするので、もしかしたら、この警官、イケメンだけど、オラーナくんの味方なのかもしれないなぁ、って思いました。

確信を持ったのが、「ムーギーさんに電話をかけたけど、警官だと名乗った途端に電話を切って、ばっくれた」と言っていたことです。ムーギーさんの携帯電話の通話記録を見せてもらったのですが、この地元イケメン警官からの電話受信記録も不在着信記録もないのです。

「電話がつながらなかった」というなら可能性はあるけれど、「電話がつながって、警官だと名乗ったら切られた」といったら、この通話記録からは警官は嘘をついていることになります。

ともかく、今はオラーナくんは拘留されることもなく、ツァガンサルの準備なぞに勤しんでいるそうです。
私たちには「どこに被疑者がトンズラするかわからないから、早く家畜を引き取ったほうがいい」とか言っていましたが、私が「家畜を引き取ったあとに彼らが私たちの家畜を盗んだら、その責任が追求できなくなるじゃないか。足りなくなった家畜についての補填をしてもらわない限り、彼らの責任は追求する」と主張したのに対し、矛盾してますよね。

だって、家畜を引き取ったあと、彼らがどっかにいなくなるならわかるけど、30頭もの「自分たちの所有家畜だ」という羊や山羊とともに、私たちの冬営地に居座っているんですもの。

お隣さんが家畜泥棒って、「羊と飢えた狼の同居」と同じでしょ?

こんな提案、おかしいじゃないですか?

そして、ガナーくんがわずか1日の聞き込みで、偽モートンの元の所有者や、その偽モートンがどのような経緯でうちにきたか、などについての複数の証言をみつけてきたのに、警官、なーんもやってないんですもの。むしろ、偽モートンをうちの本来の種オスだと証言してくれる遊牧民とかを探してるんじゃないか?って感じ。

イケメン警官も悪徳警官なのか?あるいは、そもそも捜査能力が低いのか?それとも、とっても人のいい警官で、「地元から犯罪者を出したくない」っていう意識が強いからなのか?

まだよくわかりませんが、とにかく、ひとつひとつ、裁判でも戦えるだけの有力証拠を自力で集めていくしかないのかもしれません。

モンゴルの人から、何度も、「警察の上の人に話をつけてやる」とか「県知事に訴えろ」とか行っていただいているのですが、今のところは「一般庶民の立場」で、しかもAwayな「外人一個人」として、どのような扱いを受けるのかということも含めて観察・体験しようと覚悟しております。

まだこんなところで殺されたりはしません。
それに、私、なんだかんだいって肉体的な痛みにはかなり強いです。殴られたとか蹴られたとか、そういうことでの怪我や痛みはわりと回復も早いし。銃で撃たれたことはないけれど、オラーナくんがもってるへなちょこライフルの口径は6mmくらいの小さいものです。撃たれても、かなり痛いとは思いますが、弾頭が体内でぐしゃぐしゃに潰れるタイプではなく、貫通しちゃうタイプですから、多分、大丈夫。脳天撃ち抜かれたら死んじゃうか植物人間になっちゃうかもしれないけれど、そんなことにはならないはず。
だって、外国人を私利私欲のために殺意をもって殺せば、わりと高い確率で死刑ですから。

親より先には死ねない、死んじゃいけないと思いますが、死ぬのが怖くて、泣き寝入りなんてことは、やっぱり死ぬよりも恥ずかしいことのような気がします。

以前、やっぱりモンゴル人にものの見事に騙されて、泣き寝入りというか、「お金のことは諦めて、自分の好きな道を好きに生きられるほうがいいや」と和解したことがありました。でも、今回はそのときとは事情が全然違います。私には私利私欲のかけらもない。
「自分一人が儲けよう」と思って行動したことは、この件に関しては一度もないし、隠し事もしていない。そして、いろ記録もとっているから証拠として使ってもらうことは可能。
何よりも、同じモンゴル人同士が騙したり、騙されたりしているけれど、証拠不十分なのと、地元の警察や役人たちが犯罪者とグルになってかばい、構造的には、「よそ者VS地元の人たち」っていう形で、結局、被害者が負けてしまい、騙され損ってケースばかりだ、という実態を知ってしまったのです。

今回、私たちには状況証拠、目撃証言、実際のDNAサンプル、写真、契約書、家畜統計時の地元の記録など、かなりの証拠物件を持っています。もちろん、まだまだ足りないといえば足りないけれど、種オス山羊誘拐・取り替え事件については、物証と状況証拠も選り取りみどりに取り揃えております、という感じ。

地元のバグ長さんたちも応援してくれています。

家畜詐欺・盗難被害対策協会にとっても、私たちが被害分の弁償させることができるか、あるいは刑事裁判で彼らの罪をきちんと有罪という形で償わせることができれば、「成功例」として前例を作ることができるのです。

これは単に素人外国人が遊牧民に騙されました、という個別の話ではなく、モンゴルのあちこちで続発している社会問題の検証過程なんだと捉えて頂ければ、私が心をおられたり、不安になったりせずに、自分が置かれた状況や起きている出来事を、好奇心と平常心を保ちながら受け止めていることもご理解いただけると思います。

それにしても、ほんと毎日、毎晩、よくもまあ、これだけ色んなことが起きるものですね。
ドラマか映画のような展開って実際に起こるものですね。ちょっと客観的に、自分が視聴者になった感じの視点で、日々起きていることを捉えてみると、やっぱり、「なんて面白いドタバタだろう」って思っちゃう。そしてどう考えても、私が「バッドエンド」で終わるわけがない。

いつも楽観的なモンゴル人がこの件については、「万が一ダメだったら・・・」と最悪のケースを想定しているのに対して、私は、「万が一なんて切羽詰った気持ちにならなきゃいけない事態、全然起きてないじゃない」とすっごくポジティブ。
なんでだかよくわかんないけれど、モートンは絶対今も生きているし、必ず私たちの元に戻ってくると確信しちゃっています。

それ以外の子達に関しては、ダメかもしれないけれど、まぁ、何かしらは戻ってくるだろうなー。お金でも羊でも馬でもいいから戻ってきてほしいなぁ、とこの辺は希望的観測。あわよくばって感じで、戻ってこなかったときは、しょうがないや、家畜泥棒被害にあいました、ということなんだな、っていうだけ。それで私の遊牧民へのリスペクトが損なわれたり、私が遊牧をすることを諦めたほうがいいっていうことにはなりません。

だって、こういうハプニングやトラブルも含めて、遊牧って楽しいんだもの。
どんなに「被害額でか!(2012年モンゴル人ひとりあたりのGDP額よりもでかい)」という状況であったとしても、羊や山羊と一緒に放牧に出かけるのも楽しいし、馬が餌を求めて鼻面スリスリしてくるのも可愛いし、牛が甘えてくるのとか超癒されます。
空気は綺麗だし、騒音ないし、空は青いし、大地は真っ白だし。気分最高!って思える。

今月中は、一生懸命都会で働いてみたけれど、でも草原暮らしがあるからこそ、私のバランスは取れているんだなって。

昨日、満月だったので、瞑想をしてみたわけですが、たいていのことは「手放すことで気持ちが晴れる」って、すーっと手放しちゃうんだけど、今の状況については、「家畜被害にあったことを諦めて手放す」のではなく、「この家畜被害によるダメージに対する不安」を手放すというのが妥当だなと。執着心は最初からなくって、大事なことは問題解決の道筋を最後まで見届けること。
オラーナ&ロブサン親子に対しては、とっくの昔に、「哀れな人たちだなぁ」って思ってるから恨みとか怒りとかはないのです。何度もこのブログで書いているけれど。

物欲や執着心でガチガチになっている彼らとパッキリ袂をわかつことができて、かえってラッキーだと感謝すらしています。

この貪欲詐欺親子のおかげで、なんとなく、近隣の遊牧民の皆さんやソムのお役人さんたちとお近づきになれてるわけだし、今後の展開のためにもっともっと真剣なマネジメントを検討することができている。私にとっては、とてもよいチャンスなのです。立て直しをしつつ、飛躍するためのリセットなんだと思えば、落ち込む要因は何もないんだもん。

甘ちゃんでおバカちゃんだったなぁということは反省してます。
高校の同級生からかけられた言葉で「済んだことはしゃーないわ」というのが一番パンチがきいてて、元気でました。そうなのです。
終わっちゃったことなんかくよくよしてたって、しょうがない。だってそのときはそういう流れだったんだもん。

ともかく、「おわたー(つд⊂)」って思ってたら、モートンのDNAサンプルが出てきたり、偽モートンの飼い主が見つかったり、まだまだ時の流れは私たちにアドバンテージあるんじゃなーい?

これからの展開にワクワク、ドキドキです。
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
これからも応援してくださいませね。


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