モンゴルだるま@モンゴル語通訳・翻訳・エコツーリズム普及仕掛け人兼業遊牧民です。
ただいま委託遊牧民が私たちの家畜を無断で売却したり、屠殺して食べちゃったり、繁殖用の種オスを取り替えていたり、家畜に補助餌をやらず殴る蹴るの虐待をするなど、問題行動続出で、ただいま行政・司法両面に協力をお願いして紛争解決に奮闘中です。
私たちの兼業遊牧もそれなりに「トラブル続出」で大変な感じですが、2012-2013年の越冬は、夏からの予想通り、とても厳しいものとなり、21県(アイマグ)のうち18県91のソムで、ゾドによる緊急事態が報告されています。
ゾドというのはいろんなパターンがありますが、冬から春にかけて、家畜を飼育したり、人間が暮らしたりするのがとても困難になる自然災害の総称です。
ゾドは「越冬準備を怠った遊牧民が引き起こす人災だ」という人もいますが、2009ー2010年の史上最悪のゾドを経験し、かなり立派な家畜小屋を作り、ふんだんに干し草やフスマ・凍ったカブやじゃがいもといった補助飼料を備えておきながら、300頭ほどいた羊・ヤギの半分以上を凍死・衰弱死で失った私は、にわかに「そうだ、そうだ」とは賛同できません。
現在モンゴル国の国土の7割以上が「砂漠化」が深刻な状態で、越冬用の「干し草づくり」もままならない状況。特に今年の夏は雨が多くて、干し草作りが順調にできなかった地域もたくさんありますし、そもそも「干し草」に適した植物が生えていない地域も多いのです。
今、国家非常事態対策委員会が各地の深刻な被害と救援要請が出ている地域に備蓄用の干し草やフスマなどの補助飼料を届け始めています。
でも、燃料代が上がっていたりするため、辺境のしかも深い雪に閉じ込められた地域まで確実に届けるための資金が足りないとのこと。
必要な物資としては、人間用と家畜用の医薬品、餌・燃料。
そして、サポートとしては、人と家畜のための医療サービス。雪に閉じ込められて子供や妊婦さんなどが体調を崩したり、大量の家畜を一気に失ったショックで精神的に病んでしまう人も続出状況で心と体の両面サポートが必須とのこと。
2003-2004年のゾドの年はバヤンホンゴル県の南にある「グレートゴビ国立公園」でのゴビグマ(ゴビ砂漠にしか生息していない世界的にとても貴重なクマの仲間。2013年にある最新の統計では、すでに生存確認頭数は30頭をきってしまい、大型哺乳類としては「絶滅種」になっている)の生態調査と補助餌を餌場に配るレンジャーさんの仕事のサポートのため、JICA専門家として環境省にいたT先生(現在は弊社の出資者のひとり)にくっついていったときに「これがゾド地獄か・・・」と凄惨な現場を見せつけられました。
家畜の屍累々で、もはや家畜小屋やベースキャンプ周辺の死骸を片付ける気力もなくなった遊牧民たち。道を訪ねようとゲルに近寄ったものの、出てきた女性は「目の焦点があっていない」状態で不自然な痙攣をしていました。ショック状態で気が触れたのではないかとのこと。
「1000頭牧民」という地元の名士に与えられる称号を何年も連続でもらっていたという男性は、一回の吹雪で家畜のほとんどが全滅。わずかに数頭の馬と羊が生き残っただけ、という状況が吹雪がやんでわかった翌日ぐらいに、猟銃自殺したという話も聞きました。
行き倒れになっているまだ生きている馬から生皮を剥ぐ人もいました。自分の馬かもしれないし、他人の馬かもしれない。とにかく、死後硬直が始まったり、死体が凍りついてからでは皮をはぐこともできないから、まだ生きているうちに剥ぐしかないのだそうです。
お腹のなかが草でパンパンでも気温が低く、体温も下がりすぎて、食べた雪が体の中で溶かすことができず、反芻できないまま栄養失調で死ぬヤギもたくさん見ました。
2009-2010年のゾドで私たちのところは、半分くらいの羊・ヤギを失いましたが、全国的には、50-70%を失う壮絶な被害でした。
私も春に自分で羊やヤギの放牧に行き、朝は元気いっぱいに群の中にいたヤギが、夕方、日が暮れる頃に足が冷えて凍りつき、凍傷になりヨロヨロと歩けなくなったのを、担いで家に帰ってきたこともあります。一生懸命、凍傷の手当をしていても、あっという間に足は腐って壊死してぐにゃぐにゃになりヒヅメが外れたり。
立てなくなったヤギは気力を失って、私の腕の中ですーっと死んでいく。
人間だけでなく、動物も「生きる気力」を失うと、それだけで「死んでしまう」のです。
毎日、毎日、家畜小屋の裏にたまっていく死骸。初めて購入したヤギや羊で、それぞれに名前もつけていただけに、毎日、毎日泣いて泣いて。でもそのうち涙も枯れ果てて、悲しさよりも怒りがこみ上げ、そして自分自身の至らなさが情けなくなり自己嫌悪。
危険を承知で家畜小屋の中で焚き火をしてみたり、弱った家畜をゲルの中で飼ってみたり、子羊をウランバートルの自宅アパートで看病したりしたけれど、結局無駄で全滅。
無力感とか「もう遊牧なんかできない」とか「私はいったいいくつの命を奪ってしまったのだろう」と考えて罪深さに眠れない日々が何ヶ月も続いていました。
こういう無力感や絶望、怒りや自己嫌悪は、私が外国人だからでも、センチメンタルだからでも、初心者だったからでもなく、きっとほとんどの遊牧民、モンゴル人も感じるゾドによるダメージだと思います。
去年の夏から秋にかけての渡り鳥の「わたり」の時期や花の咲く時期、いろんな野生の「食べられる植物」の実のつき方などで、「冬が厳しくなるぞ」と覚悟はしていましたが、今年もまた-40℃を下回る日が続き、かつ大雪や吹雪がひっきりなしに続くという地方がこれほど多いとは。
「草原の我が家」は完璧な「人災」(しかも狼に家畜の世話をさせてしまったような被害)で結構辛い感じではありますが、とはいえ、今は法的措置を地方行政に要請し、私たちの手からはほとんど問題が離れてしまった感じで「あとは神と「お上」の采配に委ねる」という感じです。
新しい委託遊牧民のおじさんも張り切ってくれていますし、周辺の遊牧民の人達もいろいろ心配して、馬の見回りなど協力してくれています。
人災は、人と人とのつながりでなんとか対応することができます。
でも天災・自然災害は、人知を超えたところで起きます。
何をどうがんばっても、ありとあらゆる手段を尽くしても、ダメな時はダメ。
でも、ダメになってしまって、全財産を失って、身寄りもなく、希望もなく、専門的な知識や技術もない人たちが「行き場を失ってウランバートルに流入」というのも、もう受け入れキャパを超えてしまっているので厳しい状況。
なんとか、地元に残って再生できる手段を講じなければいけません。
モンゴル国内では、支援募金の募集などもあります。
どれが信用できるのか、リサーチしてわかったら、私のところもヒィヒィではありますが、少しでも同じ遊牧民同士、何かの足しにしてもらえたらいいな、と思っています。

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ただいま委託遊牧民が私たちの家畜を無断で売却したり、屠殺して食べちゃったり、繁殖用の種オスを取り替えていたり、家畜に補助餌をやらず殴る蹴るの虐待をするなど、問題行動続出で、ただいま行政・司法両面に協力をお願いして紛争解決に奮闘中です。
私たちの兼業遊牧もそれなりに「トラブル続出」で大変な感じですが、2012-2013年の越冬は、夏からの予想通り、とても厳しいものとなり、21県(アイマグ)のうち18県91のソムで、ゾドによる緊急事態が報告されています。
ゾドというのはいろんなパターンがありますが、冬から春にかけて、家畜を飼育したり、人間が暮らしたりするのがとても困難になる自然災害の総称です。
ゾドは「越冬準備を怠った遊牧民が引き起こす人災だ」という人もいますが、2009ー2010年の史上最悪のゾドを経験し、かなり立派な家畜小屋を作り、ふんだんに干し草やフスマ・凍ったカブやじゃがいもといった補助飼料を備えておきながら、300頭ほどいた羊・ヤギの半分以上を凍死・衰弱死で失った私は、にわかに「そうだ、そうだ」とは賛同できません。
現在モンゴル国の国土の7割以上が「砂漠化」が深刻な状態で、越冬用の「干し草づくり」もままならない状況。特に今年の夏は雨が多くて、干し草作りが順調にできなかった地域もたくさんありますし、そもそも「干し草」に適した植物が生えていない地域も多いのです。
今、国家非常事態対策委員会が各地の深刻な被害と救援要請が出ている地域に備蓄用の干し草やフスマなどの補助飼料を届け始めています。
でも、燃料代が上がっていたりするため、辺境のしかも深い雪に閉じ込められた地域まで確実に届けるための資金が足りないとのこと。
必要な物資としては、人間用と家畜用の医薬品、餌・燃料。
そして、サポートとしては、人と家畜のための医療サービス。雪に閉じ込められて子供や妊婦さんなどが体調を崩したり、大量の家畜を一気に失ったショックで精神的に病んでしまう人も続出状況で心と体の両面サポートが必須とのこと。
2003-2004年のゾドの年はバヤンホンゴル県の南にある「グレートゴビ国立公園」でのゴビグマ(ゴビ砂漠にしか生息していない世界的にとても貴重なクマの仲間。2013年にある最新の統計では、すでに生存確認頭数は30頭をきってしまい、大型哺乳類としては「絶滅種」になっている)の生態調査と補助餌を餌場に配るレンジャーさんの仕事のサポートのため、JICA専門家として環境省にいたT先生(現在は弊社の出資者のひとり)にくっついていったときに「これがゾド地獄か・・・」と凄惨な現場を見せつけられました。
家畜の屍累々で、もはや家畜小屋やベースキャンプ周辺の死骸を片付ける気力もなくなった遊牧民たち。道を訪ねようとゲルに近寄ったものの、出てきた女性は「目の焦点があっていない」状態で不自然な痙攣をしていました。ショック状態で気が触れたのではないかとのこと。
「1000頭牧民」という地元の名士に与えられる称号を何年も連続でもらっていたという男性は、一回の吹雪で家畜のほとんどが全滅。わずかに数頭の馬と羊が生き残っただけ、という状況が吹雪がやんでわかった翌日ぐらいに、猟銃自殺したという話も聞きました。
行き倒れになっているまだ生きている馬から生皮を剥ぐ人もいました。自分の馬かもしれないし、他人の馬かもしれない。とにかく、死後硬直が始まったり、死体が凍りついてからでは皮をはぐこともできないから、まだ生きているうちに剥ぐしかないのだそうです。
お腹のなかが草でパンパンでも気温が低く、体温も下がりすぎて、食べた雪が体の中で溶かすことができず、反芻できないまま栄養失調で死ぬヤギもたくさん見ました。
2009-2010年のゾドで私たちのところは、半分くらいの羊・ヤギを失いましたが、全国的には、50-70%を失う壮絶な被害でした。
私も春に自分で羊やヤギの放牧に行き、朝は元気いっぱいに群の中にいたヤギが、夕方、日が暮れる頃に足が冷えて凍りつき、凍傷になりヨロヨロと歩けなくなったのを、担いで家に帰ってきたこともあります。一生懸命、凍傷の手当をしていても、あっという間に足は腐って壊死してぐにゃぐにゃになりヒヅメが外れたり。
立てなくなったヤギは気力を失って、私の腕の中ですーっと死んでいく。
人間だけでなく、動物も「生きる気力」を失うと、それだけで「死んでしまう」のです。
毎日、毎日、家畜小屋の裏にたまっていく死骸。初めて購入したヤギや羊で、それぞれに名前もつけていただけに、毎日、毎日泣いて泣いて。でもそのうち涙も枯れ果てて、悲しさよりも怒りがこみ上げ、そして自分自身の至らなさが情けなくなり自己嫌悪。
危険を承知で家畜小屋の中で焚き火をしてみたり、弱った家畜をゲルの中で飼ってみたり、子羊をウランバートルの自宅アパートで看病したりしたけれど、結局無駄で全滅。
無力感とか「もう遊牧なんかできない」とか「私はいったいいくつの命を奪ってしまったのだろう」と考えて罪深さに眠れない日々が何ヶ月も続いていました。
こういう無力感や絶望、怒りや自己嫌悪は、私が外国人だからでも、センチメンタルだからでも、初心者だったからでもなく、きっとほとんどの遊牧民、モンゴル人も感じるゾドによるダメージだと思います。
去年の夏から秋にかけての渡り鳥の「わたり」の時期や花の咲く時期、いろんな野生の「食べられる植物」の実のつき方などで、「冬が厳しくなるぞ」と覚悟はしていましたが、今年もまた-40℃を下回る日が続き、かつ大雪や吹雪がひっきりなしに続くという地方がこれほど多いとは。
「草原の我が家」は完璧な「人災」(しかも狼に家畜の世話をさせてしまったような被害)で結構辛い感じではありますが、とはいえ、今は法的措置を地方行政に要請し、私たちの手からはほとんど問題が離れてしまった感じで「あとは神と「お上」の采配に委ねる」という感じです。
新しい委託遊牧民のおじさんも張り切ってくれていますし、周辺の遊牧民の人達もいろいろ心配して、馬の見回りなど協力してくれています。
人災は、人と人とのつながりでなんとか対応することができます。
でも天災・自然災害は、人知を超えたところで起きます。
何をどうがんばっても、ありとあらゆる手段を尽くしても、ダメな時はダメ。
でも、ダメになってしまって、全財産を失って、身寄りもなく、希望もなく、専門的な知識や技術もない人たちが「行き場を失ってウランバートルに流入」というのも、もう受け入れキャパを超えてしまっているので厳しい状況。
なんとか、地元に残って再生できる手段を講じなければいけません。
モンゴル国内では、支援募金の募集などもあります。
どれが信用できるのか、リサーチしてわかったら、私のところもヒィヒィではありますが、少しでも同じ遊牧民同士、何かの足しにしてもらえたらいいな、と思っています。

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