モンゴルだるま@モンゴル語通訳・翻訳・エコツーリズム普及仕掛け人兼業遊牧民です。

ただいま、本業のひとつ(本業多すぎ!不定期の仕事多すぎ!という反省はとりあえず、どっかの棚の上においとくとして)である翻訳作業に没頭中です。

1月下旬が締切の、専門性が高く、数学と物理と化学の計算式が苦手だから文系になった私にとっては、そもそも、原稿の中味を理解すること自体にてこずっていたレポート原稿が当面のターゲット。

昨日の夜、翻訳仕事のひとつを納品しちゃったらすっかり気が抜けちゃってるんだけど、それどころではない。というか、下旬が〆切期限とはいえ、私の兼業のほうの事情でとにかく今週中に「片づけちゃう」必要が生じているので、かなり一生懸命です。

さて、昨日は、去年の夏シーズンまで楽しく順調だったはずの「エコツアーWith遊牧業」のパイロットプロジェクトだった「モンゴルだるま牧場」ですが、越冬用家畜小屋づくりが始まったあたりから、実は先行きに不安というか、映画とかテレビの連続ドラマだったら視聴者が「モンゴルだるま、あぶなーい!そいつは裏切り者だよー!!」「気をつけろ!そいつに任しちゃだめだーーー!!」とか叫んでいたであろう、数々のエピソードが静かに進行していたってことで、遊牧業関連に話をしぼって、そのゴチャゴチャの一部をご紹介してみました。

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ともかく「1月20日ですべてをきれいさっぱり返してやるぜ!」と鼻息あらくふんぞり返った(ような携帯電話の声とかメッセージ)委託遊牧民(だけど、実は裏切り者)オラーナ君ですが、そもそも、家畜とか返して、きれいさっぱり清算するのは、1月7日だったはず。だから、私、楽しい一時帰国を早めに切り上げて、モンゴルに戻ってきたのよ?

でも7日は見事な肩すかしで「草原の我が家には関係者が一人もいませんでした」という状況でした。
でプンスカしながらウランバートルに戻る途中で上記メッセージがガナー君にきたんだけど、翌日8日に憤りながらガナー君がゆかいな仲間たちと一緒に訪れたところ、ご近所さんたちから「お宅の干し草を格安で売るって話、本当?」って聞かれてびっくり仰天。

つまりは、「毎日、ウランバートルから清算交渉に通うのは、燃料代高騰の昨今、軍資金がない冬シーズンではモンゴルだるま(つまりは私)もガナー君も無理だろう」とふんだオラーナ親子が、私たちが不在の間に、とっとと干し草を売りさばいて、その分で家畜損失分の弁償金を調達しよう、という魂胆だってこと。

いくら寒いとはいえ、夏と秋にたっぷり栄養価の高い草を食べて肥えている(はずだった)家畜たちは、まだメイン食料は放牧中の枯草なのです。だから、ほとんどの干し草は健在のまま。
でも、1月中旬からいよいよ本格的な厳寒期+家畜の体力が衰えるので、干し草のありがたみとか、夏から秋にかけて、遊牧民がどれだけ備蓄準備をしたかの力量が試されるのです。

という時期に格安(だってオラーナ君にとっては元手はタダだもんね)で売却ってことになれば、かなり素早くさばけるはず・・・
悪巧み、すげー!

でも、ご近所さんたちは、誰も「そんなやばい草、いらねーよ」な状態で、私たちにご注進してくれたのです。

オラーナ君はたぶん、彼自身も今、年上熟女の手練手管で骨抜きにされてるっていう迷走状態なんだろうけれど、それ以外にも、父親や母親もまた「横流しとちょろまかし」で数十年を暮してきた人たちだったという生活環境が、こういった悪知恵を培ってしまった要因なんだと思われます。

モンゴル人って基本的に直接自分の損得にかかわらないことには、口出ししない。「関係ないっす」という立場を貫く民族です。
当事者が気が付き、予防策をとるなり、防御・対抗をするしかない。

だから、今まで、噂話で「オラーナ君が、ご近所の遊牧民バターさん(現在、傷害罪等で拘置所暮らし)の婚約者を寝取った」という面白いゴシップネタぐらいしか提供してくれていなかったのです。

でもこの厳寒期、これからが一番きつい、っていう時期になって、家畜を放り出し、雇い主をコケにして、繁殖用種オスを自分の弟宅の家畜の群に無断で持っていったり、勝手に交換したまま「毛色は年とともに変わるから」なんてしれっと嘘をついたり、乳牛を殴る蹴るの虐待でストレスをかけて乳搾りができないようにする、など家畜を大事にしない狼藉の数々に、ご近所さんも「こりゃ酷すぎる」と我慢できなくなっちゃったのでした。ありがたや。

馬泥棒事件の時以来、ご近所さんでもある雇われ遊牧民のおにいちゃんが、馬の群がどこにいるか、をほぼ毎日のように報告してくれる、お隣さんのおばちゃんが乳牛に餌をやっていないとか、種オス牛が屋外に放置されてるって話をチクる、種オス山羊とニューフェースの種オス羊がいなくなってるぞ、とか教えてくれるなどなど。

刺激が少ない草原生活ならではの、見事な「諜報活動」の集大成を見せていただいた感じでした。

こういう通報が日々あったからこそ、数々の証拠をつかみ、大事にいたる前に未然に防ぐことができたことも多々ありました。
・「種オス山羊・モートンの誘拐事件(無事、確保成功)
・種オス羊・ブルーの奪還(オラーナ君弟のところに婿入りされていたのを連れ戻し成功)
・若駒転売事件(未遂状態で確保。売却の話はついちゃったということなので、代替の馬を弁償させることで手打ち。もし、この情報を知らなかったら、「オオカミに襲われた」とか「いるけど今はいない」みたいなごまかしかたで、なし崩しで泣き寝入りすることになった)
・干し草横流し事件

羊16頭の無断売却と雌馬の無断屠殺は、まだ不正が露呈する前で、ご近所さんたちも「まさかそこまではやらないだろう」と思っていたから防ぐことはできませんでした。
でも、この二つの事件は私が一時帰国する前に発覚し、ご近所さんと情報をシェアするきっかけになったので、ある意味、必然だったのかも・・・
私のマネジメント能力のなさと人を見る目のなさ、人事管理の甘さも同時に露呈し、すごく残念な話だけれど、それでも、モンゴルの遊牧民と「仕事をする」ってことの難しさや厳しさを魂に刻み付けることができた貴重な経験でもありました。

昨日から、暫定的に委託遊牧民として求職していたおじさんをゲットし、現地にはりつけております。オラーナ君たちの委託遊牧契約は1月20日まで、ということになったので、それまでは、干し草や燕麦・フスマの管理、衰弱した家畜たちへの餌やりなど体力回復のための看病をお願いしています。

そして、今日から、ガナー君が2月4日まで冬休みの娘を連れて「張り込み」に出動。
私は翻訳作業を完了し、無事、納品してからの合流、という流れであります。

とにもかくにも、草原での厳しい環境での生活。
外国人でしかも独身女の私独りでは、とてもじゃないけれど、兼業遊牧生活はできません。
ちょっと情緒が不安定だけど、一生懸命がんばってくれるガナー君や、彼のゆかいな仲間たち、そして草原の「ご近所さん」たちの協力、助力があるからこそです。

みんなに支えられながら、4回目の越冬なう。
なんとか乗り切りたいです・・・その前に貴重な現金収入源である翻訳作業をとっとと完了させろって話(なのに20分もブログに費やしちゃった・・・)

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