
6年間も在籍した大学の指導教官が私の苗字を知ったのは卒業式の「卒業証書授与」の瞬間だった・・・平凡な苗字もちのモンゴルだるまです。
今週は、珍しく都会で働いています。
通勤、というのもやってます・・・といいたいところですが、1週間のお仕事のうち、ちゃんと「通勤バス」を使ったのは1回だけ。
さて、待機時間となったので、PCを職場に持ち込み、久々にブログネタに参戦です。
モンゴルでは私に限らず、男の人も女の人も、「名前で呼ばれて」お仕事しています。
モンゴル国で、苗字にあたる「オボグ」は「親の名前」なのです。
並び方は日本と同じ、「苗字+名前」という並び方なんだけど、苗字は大抵、イニシャル1字で省略。
大統領とか大臣とか、ちょっぴり「偉い人」も名前で呼ばれるというのはなんだかフランクな感じですよね?
でも、この苗字と名前、とっても混乱を呼ぶのです。
英語が外国語として優勢をしめつつある昨今では、Last name(Family name)とFirst name(Given name)というカテゴリーで記入用紙が作られているので、混乱することも少ないけれど、20年前は共産圏ってことでロシア語の影響が強く、かつロシアもまた「父親の名前+名前」だったから、その辺、すごく複雑でした。
だから、外国人の名前のときもすごく変なことになってて・・・
日本人の場合、名前で呼び合うってよっぽど親しい間柄じゃないと「ないなー」ですよね?
モンゴル語通訳仲間の場合、女性は結婚して姓が変わる可能性があるから、名前を使い、男性は苗字を名乗るっていうのが通常パターンでした。
私もその慣例に従い、名前を使って仕事しているのですが・・・残念ながら、全然、婚姻による改姓のチャンスに巡り合っておりません。これもまたさびしい・・・
でも、私の苗字は、日本でもかなりメジャーで平凡なものなので、同じクラスやプロジェクトチームに同姓がいることが多かったので、名前で呼ばれるほうが楽ちんです。
特に、モンゴル人にとっては、苦手な感じならしく、ありきたりな名前のわりに、まともに発音してもらえないから、苗字使うことはめったにありません。
仕事上で一緒にお仕事させていただく方々も、特に男性は、「仕事相手の女性を名前で呼ぶなんて」と内心、戸惑っていらっしゃるとは思うんだけど、モンゴル人が皆私のことを名前で呼んでるから、なんとなく「流れ」で名前で呼んでくださいます。
名前で呼ぶか、苗字で呼ぶか。
モンゴル人がらみの面白エピソードをひとつ。
日本のある出版社が主催していた国際絵本挿絵コンクールで受賞したモンゴル人画家さんのお話です。
モンゴル現代画家の重鎮にツルテムさんというお御所がいます。
ツルテムさんには、エンフジン・ムンフジンという双子の息子さんがいらっしゃるのです。
そして、時期をずらして、この双子の兄弟が受賞をしたという快挙。
モンゴル人画家って実は絵画的なだけでなく、詩情というか抒情というか、何か音楽的な目に見えないメッセージが込められた不思議な空気の作品を生み出す方が多いという気がします。
で、エンフジンさん・ムンフジンさんのお二人、双子だけあって、ほんとに外見がよく似ていらっしゃるんですね。
というのは、のちに会ってからわかった話。私が知っていたのはツルテムさんで、息子さんにあったのは、この授賞式の後の話。
さて、いよいよ授賞式・・・
「◎◎賞の受賞は、、、Mr.ツルテムーーーー!」
ということで・・・ぱちぱちぱち!わーわー、と祝福の声に包まれて、和やかに終わったそうです。
実際は、双子の片割れ、ムンフジンさんのほうが受賞。
その前に受賞してたのは、もうひとりのエンフジンさん。(逆だったかも?)
で、授賞式後のレセプションで、エンフジンさんと会ったことのある日本人が「おめでとう、ツルテムさん」と握手
・・・ご当人は連続受賞おめでとう、という気持ちなわけですがムンフジンさんにとっては、初受賞。
なーんとなく、話がかみ合いません。
Mr.ツルテム・・・と聞いていた私はもっと?マークだらけでした。
だって、目の前のおじさん、誰?私のしってるツルテムさんじゃないんだもの。
若返ったのかなぁ?不思議、不思議??
全然話がかみ合わないのは、私が下手だからか?とデビューしたばっかり、ハタチそこそこの新米通訳はあわてました・・・
でもね、ふと見たパンフレットで思ったんですね・・・
ひょっとして、2回も受賞しているMr.ツルテムは別人なのではないだろうか?と。
お父さんも双子の兄弟も、モンゴルでは素晴らしい画家として成功している芸術家族だったのかーーーー。
恐る恐る、ご本人に問いただしてみたところ、案の定。
全ての真相がわかった時、レセプションの席で皆大爆笑。
Mr.ツルテムと呼び出されたムンフジンさんが奇妙な顔をしていたのもさもありなん。
そして、きっと前の受賞者のエンフジンさんも同様だったのでしょう。
でも奥ゆかしく、あまり多くを語らず、その時の雰囲気を大事にする(そのためには平気で嘘もつくくらい)国民性ゆえ、家族の誰一人訂正することなく、謹んで賞を受け取っていたのでしょうね。
オリンピックでも、せっかく柔道やボクシングでメダルをとっても、報道されるのはお父さんの名前ばかり・・・ということが90年代は何度かありました。
論文の「参考文献リスト」などの著者名をどうするか、というのも複雑なんですけどね。
一応、ルールとしては、モンゴル人の名前の場合、名前を大文字で前に書いて、コンマで区切って苗字をイニシャル大文字+小文字綴りで表記というのがなんとなく落ち着いてきているようです。
苗字についての扱いよりも、名前の扱いが大事で、それは、基本的に「その人本人」という変わらない個性を大事にしているってこと・・・のような気がして、ちょっとすてきなモンゴルの習慣だと思います。