ずーっと空っ風ビュービューでこのままでは旱魃(モンゴル語だと「ガン/ган」になっちまう、と私達遊牧民が懸念し始める頃、ようやく、待望のお湿りがありました。

草原の緑もウランバートル市内の街路樹や芝生的青草(日本だと雑草と呼ばれる類)も2日間の降水ですっかり元気に勢いを増して、めでたし、めでたし、、、と思いきや、なんとこの雨雪は、人工的に作った雨雲による降水だったのでした。

しかも、ウランバートル市街地やゲル地区では洪水続出。
日本のように降水量が多い国と違って、都市部の舗装道路の構造も雨水の排水路がないんですわ、ほとんど。
なんと、排水溝が設置されている舗装道路はウランバートル市内でもわずか30%にも満たないというのですから、驚き。しかも、この溝に、市民がガムだの吸殻だのゴミをポイ捨てしてたり、枯葉などが詰まってるから、ちょっとの雨でもすぐあふれ出ちゃうんですね。

さらに急速に膨張しているゲル地区は、私が学生時代は想像もしなかった山の急斜面や土砂崩れが置きやすそうな崖下などにも民家があります。地下水のくみ上げや永久凍土層が薄くなっていることで地層もすかすかですぐに地盤沈下や土砂崩れ、鉄砲水がおきやすくなっています。

去年も雨の多い夏、秋だったのですが、当時の政府もウランバートル市も「洪水対策に予算を割く」って発表していたのに、なんと今の今まで、なんの対策も講じていないし、補強工事も一切行われていない、ということが今日のEagleTVというアメリカ資本で「提灯ニュース」が多いモンゴル国では珍しいジャーナリズム志向が比較的生きている民放のニュースで発表していました。

私もガナー君の実家やアドーチ君宅等、日常的にゲル地区に訪れるので、気になってたんですけどね、やっぱりね。。。

1992年くらいから、この人工降水作戦は行われていて、以前も、降らせるはずじゃないところで大雪が降って、子供が家畜を探しに行ったまま遭難し、凍死とか雪に埋もれて死んだ、という話が続出して問題になっていますが、いまだにうまく狙いを定めてってわけにはいかないんですね。

人工降雨は、風が強く乾燥してくる今の時期、山火事防止のためにも、草原の草地力回復、保持のためにも重要な対策だとは思います。

でも、どのくらいの雲ができて、何ミリくらいの降水が期待できるかってところまではコントロールできないのだから、都市構造そのものをもっと土砂降りに対応できるように補強改善する必要がありますよね。

以前、建築家の先生が「地震による建物崩壊は人災だ。耐震設計で作った建物が壊れて人が死ぬのだから」というような趣旨のことをおっしゃっていました。
今回の人工降雨にしても同様です。人が自然の恵みを模倣した結果、社会的な被害が出ているのだから。

モンゴル民族も居住している中国の青海省フフノール地域に5万米ドル相当の緊急支援をモンゴル政府が無償援助として送ることが決定したそうです。
国家予算の50%以上を国外からの援助金に頼っているにもかかわらず5万米ドルを出す、その辺の外交バランス感覚が絶妙ですね。

私も青海省は、テレビ取材で行っていたので知り合いもいるし、思いいれもあります。

そして、外交対策としての援助、というのも重要だって理解しています。

でも、自国内で自分たちの手を下したことでの被害に対して、びた一文の賠償しないっていう政府は国民に対して不誠実な気もします。

ウランバートルに雨を降らすよりは、草原や砂漠、山岳地帯に満遍なく適度なお湿りをいただきたいものです。

いずれにせよ、モンゴル自体の水資源ポテンシャルが低くなっている今、早く適切な対応をしないと人の住めない砂漠になってしまう、というのも冗談でもなんでもなくなります。水ほど循環を感じるものってないなぁ、と雨上がりのぽかぽか陽気の中、ちょっぴり元気になったソートンと散歩しながら、そんなことを感じたのでした。

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