モンゴル国では2008年に法律改正が行われまして、外国資本が入っている外資系企業と合弁会社の最低資本金額が、以前は1万ドル相当以上だったのが、10万ドル以上に跳ね上りました。

さて、弊社は、というと残念ながら、とてもじゃないけれど、そこまでの増資ができませぬ。

2001年に会社を起業しに、モンゴルに乗り込んだときだって、当時は「資本金1000ドルあれば起業できる」といわれていたものが、いざ手続きを始めてみたら、外資系は1万ドル以上、といわれ、結局、1人ではどうにもできず、合弁会社にした、という経緯。
この辺からして、行き当たりバッタリだったため、後々に実質上名義貸しに近い状態で、ほとんど何も会社に貢献せず、お金も出さず、というモンゴル人たちにしてやられる形で、大損をして、会社も私も壊滅状態近くまで追い込まれました。

外国投資局に、更新申請にいったときも、やっぱり、この資本金の件で注意されました。

「不動産物件を持っているなら、それで増資すれば、十分10万ドルラインまで行くんだから、定款と契約書を作り直して、明日また手続きにきたら?」といわれました。

外国投資局の言い分としては、
「うちとしては、このままの資本金額で登録更新をしてあげることはできるけれど、結局、入国管理局の滞在許可証と投資家マルチビザ発行の際に、最低資本金に達してないって、つっかえされて、二度手間よ」とのこと。

でも、ない袖は振れません。

もう弁護士さんと相談し、そのまま強行突破。緊急申請で、翌日にはCertificateを発行してもらうようにしました。

そして、その後、国家登記局での手続き。これは弁護士さんに一任しました。

たまたま、なのか、根回しの賜物なのかは不明ですが、ともかくも、登記簿の更新はうまくいったそうです。
実際は、1月末で、登記簿自体の期限が切れていたので、その分の罰金として1000トゥグルグほどかかったそうですが、そんなのは日本円で63円足らず。ビビたるものです。円高万歳!

なので、午後からは外国人登録局に赴き、いよいよビザと滞在許可証の更新です。
これさえ、うまくいけば、あと1年間は、大手を振ってモンゴルで暮らせるのです。
頼むよー。。。

それにしても、モンゴルに投資誘致のビジネスツアーだとか、投資家の方が随分、いらっしゃっては起業しているみたいですが、実際、1千万円近くの資本投下、しているのでしょうか?
現金だけでなく、現金相当の物での投資、知的財産なども資本金に評価額を記して入れることができるようになっていますが。

あと、よく、外国人の投資は、モンゴル人との合弁でないと起業しづらい、という話を聞き、私もそれを鵜呑みにして合弁会社でスタートさせてしまいましたが、実感としては、きちんと書類関係やお金などをそろえ、あとは起業手続きなどに詳しい弁護士さんや経営コンサルタントなどと相談しながら話を進めていけば、必ずしも、合弁会社にする必要はないし、1人起業のほうが、むしろ、後々の経営トラブルなどもなくて済むと思います。

株主として、会社を所有するのは1人でも、信頼ができて、優秀で、人脈豊富なスタッフを確保しておけば、十分会社は成長させることも、きりもりすることもできるのです。

あと、外国投資局などで配られている合弁会社の定款や会社設立契約書の雛形なども「社名や人名などを入れていくだけでOKですよ」とモンゴル人から薦められることが多いと思いますが、実際、その内容をよく吟味した上で、本当に自分の会社に必要な項目かどうかの検討、自分が会社をのっとられない、あるいは自分が追い出されないための危機回避となる項目が入っているかどうか、など気になる点はよくよく突き詰め、わからないけど、とりあえず、サインしとけば、会社ができるんでしょ、みたいな安易さで、署名捺印しちゃうと、私のように大変な目にあいますよ、とご忠告。
これは逆に、モンゴル人で日本人にお金的なサポートをしてもらって、起業を志す人たちにも言えることです。

モンゴル人が皆が皆、私を裏切った共同経営者たちのように用意周到な罠をはる詐欺師みたいなタイプだとは思いませんが、日本人とモンゴル人とは、お金の貸し借り、現金のやりとり、扱い方、財産の管理運用の仕方の感覚が全然違うので、思わぬ誤解やお互いの利益保護のための主張で、どうしても意見が合わなくなって、人間関係が決裂してしまう、ということもよくあることです。

そうならないようにするためにも、投資というのはリスクも大きい、といいつつも、日本人から預かった資金は、大切に、どのように使ったかがきちんと把握できるように、活用した年月日や金額、目的、その領収書、誰がどのような形でそのお金を使ったか、などの詳細を記録する習慣を最初からつけておいたほうがよいです。

正直いって、私は最初の半年でもうごっちゃごちゃで、めちゃめちゃな状態になってしまって、私の不在中に彼らがどのようにお金を使ったのか、明確な説明を要求しては脅されたり、恫喝されたりして、とても恐ろしい思いをしたものです。納得いかないなぁ、、、と思って自分で管理していたところ、相手方からも「利益の独り占め」みたいな勘違い、あるいは、彼らが横領するうまみがなくなってきた、など様々な思惑違いなどが生じたらしく、最終的には、一気に一切合財をもって行かれて泣き寝入り、に近い状態を余儀なくされたのです。

これは、もう完全に経営者失格、経験不足、あんた、向いてないよ、と言われても仕方がないことだったと思うし、この経験によって、私はいろいろ学ぶところも多かった、と今では「起こるべくして起こった事」と受け止め、マイナスからのリカバリーを一歩一歩、踏むべき場所を確かめ、足跡を振り返りながら、進んでいる最中です。

裏切り者、というのは便宜上の話で、私の元共同経営者だった人のやったことは、まさにそういう行為なんだけど、それは私側から見た評価であって、彼らからしたら、「してやったり」とそれまで、横暴で無礼で高慢な日本人独身中年女に制裁を加えてやった英雄、ぐらいに自分たちのことを思っているかもしれません。

お金とか会社経営とか、というのは、市場経済の歴史も浅く、コロコロと制度も国の方針も法律も変更し、また人の心も移ろいやすい国では、どこの国でも例外なくそうだとは思うのですが、信念と細心の注意と信頼関係や寛大な心などを自分の核にすえながら、相手の出方や主張にあわせて、臨機応変に、自分たちのゴールがどこにあるのか、を見失うことなく、すすめていくしかないんだなぁ。

自分では納得できない、とかたくなに財布の紐を縛ってしまうと、できるものもできなくなったりすることもあります。

といって、私自身は賄賂とか袖の下とかが当然っていうことは経験したことないし、袖の下や「知り合いルート」なしで、外国人が様々な許可手続きを取ることがモンゴルでは不可能だ、とも思いません。

一度、そういう「袖の下ルート」やら「政府高官とか大臣とか国会議員とか、権力者のルート」なんてものをうっかり使ってしまうと、政権交代や人事異動などで、がらりと変わってしまったときに、ツテがなくなり、タチ往生ってことにもなりかねないんじゃないかなぁ。

ともあれ、法律が額面どおりに施行しているわけではなく、じゃあ、誰のための、なんのための法律なの?というところを突き詰めて行ったりすると、どうも、どこの機関でも、「うちは別にいいんだけど」みたいに言ってくるのが不思議です。

どうも、新規起業でも、必ずしも10万ドルラインに資本金を乗せなくても、それに近い状態で資本を投下し、健全な経営を目指しているってことであったり、モンゴル人の雇用確保が見込まれる場合は、問題なく起業申請は受理される、ということも聞きました。

杓子定規に、書かれている法律がおかしい、とか悪法だ、とか批判したら、やっぱり行政の人たちは、「外国人の癖に生意気だ」と態度が硬化します。
でも、逆に、自分の信念や法律がつくられた意図としては、こういう経緯があることはわかっているけれど、現状はこうなので、なんとかならんでしょうか?と「相談」を持ちかける、という態度で交渉すれば、道が開けることもあるのです。

今回は、役人の言いなりになったほうが楽かも、と思いながら、自分のような立場でモンゴルで活動をしようと、高い志を持っている人が主張した場合はどうなるんだろうか?という実験的な思いも込めて、手続きを進めています。

あとは、難関といわれている外国人登録局でのビザと滞在許可証の更新がどうなるか、ですね。
応援、お祈り、よろしくお願いします。