人の名前や顔を覚えるの、得意?不得意? ブログネタ:人の名前や顔を覚えるの、得意?不得意? 参加中
通訳という職業柄、人の名前と顔を一致して覚えるのは得意です。政府間交渉とか表敬訪問、会議などでは通訳まで名刺をいただけることはめったにないのですが、通訳である私こそ、人の名前や肩書きなどを間違えてはいけないのです。

子供の頃から記憶力はわりとよいほうでした。

最近は、めまいくらっくらだったり、高血圧とかストレスとかで聴力がめっきり衰えてきたような気がするのですが、そうはいっても、まだまだ3人同時の会話の聞き取りなどもできます。

これはよく言われていることなのですが、幼い頃からピアノとかバイオリンとかクラシック音楽に慣れ親しんでいる人って、音感だけでなく、耳自体の聞き取り力がすごくよいみたいです。

私の場合は、母の胎内にいるときからずーっと音楽から離れることなくいたわけで、揺り籠はグランドピアノの下だったり、3歳ぐらいから父の出演している交響楽団のコンサートに連れて行ってもらったりと、複数の音を聞き分けるというのがとても自然なことでした。

それに、性格的に人懐っこくて、初対面でも物怖じしません。
子供の頃からドイツ人やイタリア人みたいに鼻がでっかくて、青やら緑やらトパーズ色みたいな日本人にはない色の瞳をした人たちとの接触が日常だったせいかもしれないし、幼い頃から独立心旺盛で、親元を離れて暮らしていたからかもしれません。

ともかくも、人と会うことが好きで、誰といつ、何を話したか、ということは基本的に忘れません。

機密事項に触れる場合や機密保持契約を結んだ仕事の場合などは、とっとと忘れることにしています。
その場合でも、出会った人と一緒に交わした握手とか食事とか、当たり障りのないことは覚えていたりします。

人の名前と顔をセットで覚える際に、その人の声や話したときの印象なども一緒にインプットしておくと、かけがえのない出逢いとして記憶できます。

なるべく自分自身の引き出しを増やしておいて、誰と会っても、共通の話題が作れるように日頃から、できる限りネットニュースのチェックや新聞、TV、雑誌などに目を通すようにしています。

そして、誰の話にも、共感とか感動を覚えるように心がけます。

「あー、この人はこんなことに興味があるんだー」ということを初対面の時に聞けば、感動と共にその人にイメージとして定着させることができます。

疎遠な人でも、一度あっただけでも、名前をフルネームで覚えておいて、再会したときに、笑顔で相手の名前を呼びながら挨拶すれば、相手の方が私を覚えていなくても、再会してからの会話がスムーズに行くってもんです。

通訳って黒子みたいなものだから、会議などでもできる限り目立たず、流れを邪魔せず、ペースをテンポ良く、話が弾むように心がけねばなりません。いってみれば、「あ、そういえば、通訳さん、いたんだっけ」って後々言われるくらい、私を通じて会話する異国人同士がおしゃべりで盛り上がってくれるのが理想。

通訳が名刺を渡せる機会ってなっかなか会議中などはないのですが、どこかで覚えていただいて、あるいは、いろいろな人伝いで口コミを使って、私を探し当てて、仕事を依頼してくださる、という方もいらっしゃるので、そういう方のご依頼は、万難を排して受けたい!って感激するのです。

ダルハン市給水施設改善計画が来月から実施開始なのですが、このプロジェクトの基本設計調査も、なんと18年前のわずか5日間ほどをご一緒させていただいた方からの18年ぶりの連絡から始まったお仕事でした。十人近くの調査団で、相手方カウンターパートも含めると30人余りになる、というのに、覚えていてくださった。
しかも、大学3年生で通訳として駆け出しのペーペーだった私なのに、ぜひに、と18年越しで再び、仕事を一緒にできるチャンスを作って下さった。
相手の方も、18年前のことなんて、私が覚えているのかな、と半信半疑のようでしたが、いただいた電話の声で、すぐに記憶を手繰り寄せ、二つ返事で承諾させていただきました。

事故でなくなられた元国土建設都市開発大臣だったナランツァツラルトさんも、18年前は、ウランバートル市役所の都市開発課の課長さんで、私達の調査団を案内してくださった方でした。モンゴル人もそういう一期一会の思い出を大切にとっておくのがお得意なようで、特にモンゴル国の首相も経験したことのあるナランツァツラルトさんは、10年ぶりにあってもすぐに、「おー!モンゴルだるま!!モンゴル語が上達したねぇ」とかビッグハグで歓迎してくれました。毎日毎日、何年間も数多くの外国人と面会、打ち合わせ、会議などをしているであろうに、あの再会の時、私のことを覚えていてくださったことに感激しました。

ほんと、民主化にとっても市場経済化にとっても惜しい方を失ってしまったと、とても残念です。

モンゴル人の政府高官や首相・大臣クラスの方にお会いして感じることは、偉くなっても垣根を高くしない人は、成功するし、人のこともよく覚えている、ということです。

逆にほんの10分、ゲルに立ち寄ってお茶を飲ませていただいただけの遊牧民でも、ずっと覚えていてくれる人もいます。
やっぱり、声の調子とか印象に残った会話の内容などを覚えているようですね。

なれないうちは、できる限り名刺をいただき、その名刺に印象に残ったことをメモしておくといいみたいです。
そして、人に覚えていただくには、写真や似顔絵入りの名刺が便利みたいですね。

人の名前や顔に限らず、目や耳、触感や直感、自分の感受性などをフルに使って、どんな人との出逢いも一期一会として、自分の中でのスペシャルな出逢いとして記憶するってことが、人の名前と顔をセットで覚えるための秘訣であり、人づき合いをいつでもホットにしておくための鍵、っていう気がします。