家畜小屋は昨日でおおむね完成。
あとは、隙間にホヤホヤの牛糞やらボロ布などを詰め込んで目張りをすれば完璧!

ヤギに裾や紐をかじられたり、牛にドつかれたりしないようにするためのゲル囲いも立派なものができてました。

できてました、というのは、ガナー君ではなく、ガナー君実家のご近所さんの若旦那が3日ほど前から現地に乗り込んでくれて、ガナー君と私がウランバートルで段ボール箱調達にわらわらしている間、せっせと仕上げてくれていたから。

私達は、ガナー君実家から、やれテーブルだ、椅子だ、なんだかんだと、ガナー君ママからの指示でもってクコとになった「私達の家具」の積み込みなどで出発が遅くなってしまったのです。

一昨日、昼過ぎに現場到着してみたら、もう屋根葺きも9割方終わってて、囲い柵はほんと、立派なもの。
写真掲載ができるようになったら、すぐに掲載しますね。

想像してもらうしかないんだけれど、とにかく釘をほとんど使わずに仕上げたとは思えないほど丈夫で、標準体重はるかにオーバーの私が登っても全然びくともしないほどの柵なのです。

屋根はさすがに、丸太のきれっぱしの端っこみたいな薄いものだし、屋根の骨組みも細いし、継ぎ足し、継ぎ足し使ってる廃材なので、「危ないし、せっかく作った屋根が壊れると厭だから、絶対乗るなよ!」といつにない強い口調で止められました。

きわめてシンプルなつくりで、小屋といっても、南側半分は壁もなく、屋根だけかけた状態に、1mほど拡張した部分が柵で囲われているというもの。
まぁ、モンゴル人遊牧民の一般的なミニマムデザインです。

でも、ガナー君のアイディアでさらに一工夫。
この前面の柵から屋根にかけて、骨組みを斜めに組んで、吹雪や大雨、強風などの時には、風除けカバーをかけられるようになっています。

屋根部分には、段瓦の代わりにボール箱を敷き詰め、さらに、家畜糞の塊となったボーツで全面を厚さ5-10cmほどで覆います。
こうすると、屋根が防水できるんだそうです。
段ボール箱の代わりに屋根に使う黒い防水紙や厚手のビニールなどの敷物を敷いたりもするそうなのですが、なんといっても、我々の目指すは低コスト。でも、なんとかなるんじゃないかなぁ。。。

大事なのは、屋根よりも、むしろ家畜たちの寝床となる部分です。
こちらは、乾いた家畜の糞を20-50cmくらいしっかり敷き詰めなければいけないのです。
家畜糞は、なによりも効率のよい保温材。

冬のゲルの床下も羊やヤギのコロコロした糞を敷き詰めておくと、メタンガスの発酵で床下暖房になるって寸法。

とはいえ、私達のようににわか遊牧民だと、この乾いた家畜糞が大量にはないので、お隣の遊牧民宅の羊やヤギが撒き散らした糞のおこぼれをいただくことになります。図らずも、お隣の家畜囲いの清掃をすることになりました。

家畜糞は乾かすと立派な燃料になるので、遊牧民は夏のうちに、自分たちの冬営地にある家畜小屋の中を掃除し、冬の間に堆積した家畜糞を外に出して、天日干しにして、次の冬に備えます。

なぜか、お隣のお宅は、夏のあいだ、ずーっと冬営地をほったらかしにしていたので、(だから私達は、彼らは今年はここを放棄するんじゃないかって思ってたくらい)家畜糞は、全然乾いていないのです。

乾いてないうえにかっちかちに固まった家畜糞はとても重いのです。

屋根葺きに使うのは乾いてなくても、ノープロブレムなのですが、家畜の寝床部分は、しっかり乾いていないと、熱を発するどころか、家畜の体温を奪ってしまいます。
また家畜糞の層が薄すぎても、家畜はのんびり寝てられないので、あっという間に寝不足と体力低下で衰弱して病気にかかりやすくなってしまうのです。

夏がかきいれどきで忙しかったとはいえ、夏のうちに準備ができなかったことが悔やまれます。
これこそが、「アリとキリギリス」の教訓なのです。あぁ。

でも嘆いてばかりも入られません。

家畜小屋完成を喜んだのも束の間、昨日は1日中、吹雪でした。
30分も地べたに工具を置いて作業をしていると雪に埋もれて、見つからなくなるほど。

まだ便所建設は手付かずなため、岩陰などに隠れての野ざらしトイレなのですが、あまりの寒さにうんちもお尻の穴に引っ込んじゃうくらい。

あー、これがあと2日も続いたら、ここ10年経験したことのない、女性のお悩み・便秘ってやつになっちゃうのだなぁ、、、などとため息です。

でも着膨れすぎて、お尻の大事なところまで到達できないほどモコモコだから、諦めました。

無理にこんな吹きさらしの中で踏ん張って、粉雪に足をとられて、お尻丸出しのまま転げたら、それこそ、誰が見てなくても、自分の中でトラウマになってしまう。それほどすごい風だったのです。

いっそ、家畜小屋の中で、自分でボーツをつくってしまおうか、と思ったのですが、それもまた、数多くの男性人や、ガナー君ママが近くで作業しているため、後々の物笑いの種になってしまう、という懸念から断念しました。

家畜の糞は、大地に生み出されたホヤホヤでも平気でつかめるのに、己の産物でも、人のブツは近寄るのもためらわれる。これは文明という幸福を享受した故の人間の弱さなのだろうか。。。

排泄行為ひとつとっても、都会の人として草原でやってたときと、草原を棲家としようとしてからとでは、これほどまでに考え方が変わってしまうのか。。。

空っぽの家畜小屋でしたが、ともかく完成じゃい!と思ってたら、お隣のおじさんが、「お宅の家畜小屋、寝床の糞を増やすのに協力するから、ちょいと貸してくれ」と言ってきました。なんでも、屠殺用の羊と自分たちが飼育している羊やヤギとを区別する必要があるんだ、とか。

このお隣さんは、「お宅の羊とヤギを面倒見る代わりに、うちの牛をお宅の家畜小屋にいれさせてくれ」と提案してきた人たちなので、私はちょっと警戒気味。だから、囲いにも扉をつけてなかったのですが、寝床糞不足だけは、どう努力しても、どれだけお金をかけても解決できない問題。

背に腹は変えられず、仕方なく了承。

「絶対に、牛は入れないで下さいよ」と念押ししたけど、主不在ではどうなることやらわかりません。
牛は、やたらと痒がりで、壁とか柵とかにゴリゴリ首やら体やらを押し付けてこするので、釘を使ってない構造のわれらの家畜小屋はひとたまりもないのです。

近所づきあいは大変だし、大草原にポツネンと遊牧民生活をスタートさせようとするというのも、これまた大変なことなんだなぁ、とつくづく思い知らされました。

そうはいっても、外観だけは立派な遊牧民一家っぽくなったのはとても嬉しいことであります。