これから自分が取り組むことになる遊牧生活というのは、伝統的なものだけではやっていけない、と思っている。
私はたたきあげの遊牧民みたいな体力もないし、子供の頃から蓄積していくべき経験も持っていない。

乳搾りはできても、毎朝、ミルクスタンドで搾りたて牛乳を売りにくるおばちゃんのように毎朝、毎晩、10リットル近く、15頭もの牝牛の搾乳をする、なんて今、想像するだけでも手が痛くなってくる。

本当は理論より実践。
文化論よりも科学的な農学知識や牧畜知識、畜産加工技術の習得や衛生管理についての気構えなどを学ぶべきなんだろうけれど、エコツアー、コミュニティツアーなどといって、遊牧民コミュニティと一緒に、ホームステイや一日遊牧民体験などのプログラムをやっていると、やはり遊牧民にも経済観念、経営理念みたいなものがあると思うようになってきた。

2,000頭以上もの家畜を所有して、小作牧民を雇って「ミャンガトマルチン(1000頭以上の家畜を所有して国から表彰された牧民にあたえられる称号)」をもっている遊牧民の人たちは、ベースとなる生活は、一般的な遊牧民とそんなに変わらないのだけれど、その牧畜技術や意識などは、あきらかに、「なるべくしてなった」という人たちだ、という印象がある。

その中には、社会主義時代は、定住して、消防官や商店のおばちゃんだったり、学校の先生だった、なんて人たちもいる。

市場経済化以降、遊牧民の数も遊牧のやり方、放牧地に対する概念、畜産品の価値観などは大きく変動している。

モンゴルをフィールドとする文化人類学者としては、日本でももっとも著作や論文が多く、研究分野の垣根をとっぱらって精力的に活躍している小長谷有紀さんだから、この書名からも、かなり刺激的な内容になっている、と期待していいと思います。

実践については、まだまだちょっとずつ、遊牧民に教えていただき、体を鍛えていかなきゃいけないので、一朝一夕ではいけませんが、本を読むのは速いので、どんどこ吸収し、自分なりの考え方を構築していきたいです。



遊牧がモンゴル経済を変える日/小長谷 有紀

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