自分の足で歩いて、耳で聞いて、目で見る、「あるく・みる・きく」の民俗学を実践した宮本常一先生の命日です。

「あるく・みる・きく」というのは、近畿日本ツーリストがやっていた「観光文化研究所」の出していた機関誌で今は廃刊。

でも、その精神は私が出入りしている地平線会議に受け継がれています。

宮本先生の話は、みわ塾主宰の恩師・MI輪先生からもさんざん伺っていたのに、なんとなーくノータッチでした。
今回の一時帰国中に地元の図書館で宮本常一先生の本を何冊か発見して読み始めて、目からうろこです。

なんで大学生の時にこれらの著作を読まなかったのか

私はこの宮本常一という巨人を知らずにきたことで、少なくとも10年分は人生の歩むべき道を誤ったかもしれない。
これまで自分の人生に後悔なんかない。失敗はあっても後悔なんかしない、とブイブイ生きてきたけれど、今回、「村の若者たち」を読んで、生まれて初めて後悔をした。

10年前にこの本と出遭っていたら、私の修士論文も少しはまともなものになっていただろうし、モンゴル人との付き合い方だって、大分違った方向からせめていたに違いない。

しかし、わが一族の人生は100年平均。まだまだやり直しはきくのだ。
気を取り直して、これからは、10年分を取り返し、これから先の20年分を先取りするべく、宮本常一をしゃぶりつくすのだ。はぁはぁはぁ。

いかん、いかん。わが人生を変えた名著「オーパ・オーパ!」開高健著・高橋昇写真 以来の衝撃でいかに紹介する本について語るとき、私はふつーじゃない人になってしまう今日この頃なのだ。

オーパ、オーパ!!〈モンゴル・中国篇・スリランカ篇〉/高橋 昇

¥1,000
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本日、1月30日付けの朝日新聞には、宮本常一先生の命日、ということで囲み記事にもなっていたし、私は、まだまだ初心者だから全然うまくまとめられないので、とにかく読んでみんさい!としかいいようがないのだけれど、とにかく、わが愛すべきモンゴル国は、先進国・日本の幻想に踊らされる前に、まずはこの宮本常一の思想に触れるべきだと思います。


日本の高度経済成長期に、戦後復興を合言葉にどんどこ技術革新をまい進させ、都会への集団就職、過疎化問題などと今の社会問題の種はここでまかれたんじゃないの?と思うくらいに急な変化が日本ではあった、ということは、社会科の教科書で見る以外には、あんまりピンときてませんでした。

今、モンゴルで起きている民主化・市場経済性導入以降の20年足らずの間の激変が生み出している社会的な歪みは、すでに、私が生まれるより前、50年近く前にすでにわが祖国・日本で生じていたのです。

宮本先生の本を読み込むことで、今のモンゴルが潜在的に抱える問題が見えてくるかもしれない。

というわけで、ワタクシ、アマゾンドットコムで宮本常一先生の著作をドカ買いしました。
それでも、ほんのサワリだけです。とにかく、この先生、著作が大量にあるのです。さらに宮本常一論みたいなお弟子さんたちが書いた本がまた素晴らしく、とにかく影響力のある人であったのです。
実際、毎年、本日、1月30日はわが師匠・MI輪氏はじめ、先生と交流のあった知人・友人(で生きている方は数少ないと思うけど。なんてったって今年が生誕100年ですからね)、その子供や孫、弟子、弟子の子供や孫・・・きっと子々孫々に語り継がれ、そこからまた次が育っていく、、、という感じで偲ぶ会が開かれているくらいです。

本は重量があるので、一応厳選して、理解力という脳みその限界もあるのでちょっとずつ、ちょっとずつ読み込んでいきます。

私は去年、1年かけて地球1周分、モンゴル全土を車やら馬やらで駆け巡りましたが、宮本先生は、なんと、徒歩で地球4周分もまわって調査を続けたそうです。

「あるく・みる・きく」
とかく文献中心の研究に陥りやすく、局所的な現地調査だけで、語ってしまいがちなモンゴル地域研究ですが、やはりこの宮本常一先生の精神に触れたからにゃあ、自分も継承して今年は自分の体を駆使して、モンゴルを感じたいと思います。

私をこんなやる気にさせてくれた先生の著作はこれです!

日本人を考える/宮本 常一

¥2,100
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宮本常一先生が、長距離電車や田舎の民宿などで、大宅壮一氏や野間宏氏など日本を代表する作家さんや研究者と共に文字通り「日本人を考えて」、自身の旅や人生をふまえて語り合う対談集。

この話し方で宮本先生のお人柄、地元の人たちとの率直な交流などを染み入るように感じられます。





村の若者たち/宮本 常一

¥1,680
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宮本常一先生の息子さんの千晴氏が家の光協会なるところから復刻版として再販。
宮本千晴氏は、地平線会議発足当時のメンバーの一人なのですが、とても物静かで穏やかにお話なさる方です。ほとんど話したことはないのですが、千晴氏の姿には後光が差しているような得体の知れない神々しさがあります。MI輪先生と宮本千晴さんが同級生で仲良しでよく宮本家に遊びにいっているうちにMi輪先生が常一先生のお弟子さん的になったと聞いています。

私とMi輪先生の関係もそんな感じなので、なんとなく納得。
学校とか塾とか、何かの道場とかそういう学びの場の囲いがないところで、師弟関係というのは生まれるものなのです。

他にも何冊かアマゾンで購入したのですが、よくよく考えると、先にブログでアフィリエイトにはっつけてから、購入すればポイント還元があったのだろうか・・・?

最近、宮本常一見直し論みたいなのがあって、人気が出てきているらしいのですが、なかなか普通の本屋さんではみかけない本なので、読み込んでみて、これはよい!と思ったら、また紹介しますんで、ぜひぜひご利用くださいませ。

全然面識も縁もゆかりもない私ではございますが、著作との出逢い、というのは、それだけでも魂のコミュニケーションだとと思っているので、宮本常一先生を偲び、しみじみと5回目の「村の若者たち」を読んでいます。