日本に一時帰国中、とにかく精力的に取り組むのが、読書と映画鑑賞と博物館めぐり。
自分が知らなかった知識や情報に浸される幸せと、感性が刺激される快感に恍惚となる。

ブックオフを見ると、とりあえず飛び込んでみる。
漫画、単行本、文庫本、CD、DVD、なんでもかまわない。
何が並んでいるのかなー、と見るだけでも幸せ。

今度モンゴルに戻ったら、また10ヶ月くらいはかの地での闘いが始まる。
誰と戦っているのか、といったら、今年はとにかく自分自身の感性との戦いだ。
去年は、一人相撲に近い状態でモンゴルの税制やら雇用制と闘い、そして全敗した。
負ける、ということはいろいろな意味で学ぶことも多いので、勝利よりも大事な体験だ、というのは、
「出ると負け」と言われていた小学生剣士時代からの教訓だ。

でも、やっぱり負けは負けで悔しく、屈辱感に打ちひしがれるので、ちょっとは勝ちたい、、、。
なんて煩悩に振り回されていた。

いくら、損をした。いくらお金を使った。
人にだまされた。裏切られた。

そんなネガティブな感情を会社経営という孤独な立場で感じること自体が、負け犬の戯言である。

「そんなみみっちいこというな、みっともない」

高橋師匠に前回の一時帰国の時に喝を入れられた。

師匠は師匠で、今、「日本」を追い続けて、かなりの額をつぎ込んでいるらしい。

毎年いただくお能のカレンダー。
そして写真集。

なんで何年も会えないタイムラグがあるはずなのに、私の悩みがわかっちゃうんだろう。
なんで、私が一番ほしくて、ほしくて、得られなかった言葉をぽーんと投げかけてくれちゃうんだろう。

高橋のぼる、という人がすんごい写真家で、真実の真実の核心の芯の部分まで見透かしてしまう眼と感性を持っているからなんだろうか・・・

あるいは、師匠は師匠で、自分自身の感性に対しての挑戦のなかで、私と同じような悩みを抱えていたりするからなんだろうか・・・

今日、岡本太郎の「強く生きる言葉」という本を全文、コンピューターでうちこんだ。
ほんとは書写しようかとも思ったんだけど、とにかく、本やらDVDやらを買い込んでしまっていて、特に紙というのは重いので、本のページ数のわりに文字が少ないこの本は、PCのデータとして保存したほうがいいかな、と思った。

私はキーボード入力が速いほうだと思う。
テレビ制作に携わっていると、「書き起こし」という作業がある。
ビデオで撮影した膨大な素材映像の中で、「これぞ!」という言葉を見つけて編集で抜き出すために、取材対象者が発した言葉のすべてをとりあえず、文字に書き起こすのである。

私はたいていが海外取材なので、英語とかモンゴル語とかから日本語に直すという作業なのだけれど、日本語の書き起こしというのもある。

翻訳しながらだと、1秒間にも人は結構いろんなことを話しているので、10分やるのに大体30-40分くらいかかってしまう。大体、ざっくり、とかいって大きくとってしまうと、あとで編集が大変になっちゃうこともあるので、1秒間が30コマにわかれているビデオテープのコマ単位で言い出しと言い終わりをとらえながらやるので時間がかかっちゃうのだ。

日本語の場合は、1時間分くらいを大体2時間から3時間くらいでこなす。

今回、「強く生きる言葉」の入力には2時間かかった。
1ページ、1ページに力強い岡本太郎の言葉があり、一文字一文字、一言一言を入力するについれて、自分にパワーがみなぎってきた。

この人、本当に天才だ。というかすごい人だ。

太陽の塔をみたとき、最初、
うわー、変な顔!

と思ったが、あれを眺めているうちに、なんでだかわからないけれど、自分の内側からパワーがみなぎってきた気がした。
メラメラと心の炎が沸き立つようなイメージが生まれてきた。

写真で見ても、岡本太郎の作品を見ると、私の中からは、エネルギーが生まれてくる。

それは、彼の作品にこめられているものが、そういった心の中から湧き出てくるエネルギーを凝縮したものだからなのだろう。

「芸術は爆発だ」

この言葉、岡本太郎そのものだ。

この言葉で、コマーシャルを作った人も、やっぱり芸術家だ。

2006年は、モンゴル帝国建国800周年記念の年で、いろんな人たちがモンゴルを訪れ、いろんなテレビ番組の取材のお仕事をいただいて、とにかく忙しく、アップダウンの激しいすさまじい1年であった。
自分の中で、ちょっぴりコーディネーターとして「勝った」気でいたのが、終わってみたら、まるで力石に負けた矢吹ジョーみたいだった。

だけど、ぼっこぼこにされたような気になっていたけれど、私はまだまだ負けたりないとわかった。
まだまだ全然、苦労してないし、弱ってもいない。

全然、本気勝負をやりきっていない。

強く生きる言葉を私自身の内側から作れるほどに、私は全然、何も見ていない。

投資だ、経営だ、と浮かれる必要もないし、
仕事、仕事と眼の色を変えてお金を稼ぐということに必死になる必要もない。

だけど、私が私である以上、そして、モンゴルで会社をやる、という取り組みに着手した以上、私自身が本気でなっとくできるように活動していかなきゃいけないんだ。

自分の原点がなんなのか。

それは、開高健であり、高橋のぼるであり、司馬遼太郎であり、井上靖なのだ。

彼らはモンゴルから、私の人生をがつーんと変えてしまう強い言葉を生み出した。

私はまだまだ、自分の人生をがつーんとできるほどの言葉を見つけていない。
この強く生きていくことで生まれる言葉を見つけるということが、私がモンゴルで続けていく旅の原動力なのかもしれない。



強く生きる言葉/岡本 太郎

¥1,050
Amazon.co.jp