ソートンと散歩をしていたら、不思議なおじいさんに出会いました。
美しい白髪に青い目、そして白人特有の桃色の肌。
てっきりロシア人だと思いました。
おじいさんはソートンを見て、
「いい犬だ。まさにジャーマンシェパードらしい、腰の落とし方。落ち着いた瞳がとても美しいね。君は何のために犬を飼っているんだい?」
とロシア語で話しかけてきたから。
びっくりしました。何のために犬を飼う?
目的を持って飼う?わからない。
ソートンは、うちの財務担当スタッフが、「かっこいいから」と警察犬訓練学校から買ってきた子犬だった。でも、彼が面倒見切れなくなり、同時に、仕事が忙しくなり、深夜まで働く私を自宅まで送るなどの面倒も見切れなくなり、ソートンをボディガードとしてあてがったのだ。
最初は、誰にでも敵意を向け、噛み付き、コードでも何でも引きちぎり、上目遣いにおどおどと人を見上げる表情が大嫌いだった。
それがいつの間にか、私のモンゴル生活でかけがえのない存在になっていた。
ソートンがいなかったら、とっとと日本に帰って、日本で仕事をしたってかまわない、というくらい、何度もモンゴルでの仕事を投げ出したくなった。仕事じゃなくて、「モンゴル国」というこの国の制度やウランバートルのモンゴル人との付き合いにうんざりし、絶望し、自分がどんどん退廃していくことは何度もあった。
「彼は私の家族です。」
たどたどしいロシア語で出した結論。
「なるほど。シェパードは賢く、やさしい。そういう飼い方ももちろんあるね。美しいシェパードだが、少しやせ気味かな。」
「ありがとうございます。しばらく留守にしていたから、その間にやせちゃったんです。餌はたくさん食べてるのに・・・」
というと、
おじいさんは、
「シェパードは賢くて繊細だからね。皮膚が弱いから、夏はなるべく水浴びをさせてあげたほうがいいよ。餌は一日4リットルぐらい食べるものなんだ。何をあげているんだい?」
ととてもきれいなモンゴル語で話し出しました。
私、びっくり仰天。ソートンも。
白人を見たのは初めてだったし、ロシア語なんかソートンにはわかりません。
日本語だってうんざりするのに、ロシア語なんか、とカリカリと神経質に耳をかきむしって上目遣いに「早く行こうよ」とせかしていたのに、突然のモンゴル語。
ソートンはきょとんとしながら、おじいさんの匂いをフンフンかぎ出しました。
「牛の心臓や肺、肝臓を混ぜて、粟とそばと大麦と米とキャベツや野菜くずと一緒に煮たおかゆです。それに魚をときどき。あとは羊の骨や卵の殻などで、寸胴なべに作ってわけてあげてます。」と私。
「それは正しい方法だよ。運動のやり方も正しい。でも、マーキングのために、他の犬の用足しした後をなめたり、嗅いだりするのはやめさせなさい。そういうところから伝染病をもらうんだ。やせ気味が気になるなら、寄生虫の検査を受けているかい?」
おじいさんの話し方はとてもおだやかで、ソートンを見る目はとても優しいのです。
ソートンは見知らぬモンゴル人男性が大嫌い。だって、ソートンを見ると、すぐに「あっち行け」って言われるか、石をぶつけるマネをされるからです。
「おじいさんもシェパードを飼っているんですか?どうしてそんなに詳しいの?」
私はびっくりして尋ねました。
「私はモンゴルで最初に犬の訓練センターを作ったんだ。シャルフーというものだよ。」
シャルフー(黄色い息子→モンゴル語だと「色白の人」のことをシャルフンといいます。彼の風貌にまさにぴったりの名前!)
そういえば、散歩中に出会ったマルチーズをつれたおばあさんから聞いたことありました。
モンゴル最初の犬の訓練士がこの近所にいるって。
このおじいさんでした。
ほんとにお隣のアパート。
びっくり。
ちょっと仕事で行き詰まり、何もかもが嫌になって、仕事を抜け出してソートンと散歩した昼下がりのことでした。
なんだか不思議な、でも心が優しくなるひと時でした。
ソートンと一緒に暮らすこと。
それは、思いがけない人との出逢いをもたらし、仕事以外の人間関係を繋いでくれる。
ソートンは私にとって、神様がくれた癒しの天使です。
美しい白髪に青い目、そして白人特有の桃色の肌。
てっきりロシア人だと思いました。
おじいさんはソートンを見て、
「いい犬だ。まさにジャーマンシェパードらしい、腰の落とし方。落ち着いた瞳がとても美しいね。君は何のために犬を飼っているんだい?」
とロシア語で話しかけてきたから。
びっくりしました。何のために犬を飼う?
目的を持って飼う?わからない。
ソートンは、うちの財務担当スタッフが、「かっこいいから」と警察犬訓練学校から買ってきた子犬だった。でも、彼が面倒見切れなくなり、同時に、仕事が忙しくなり、深夜まで働く私を自宅まで送るなどの面倒も見切れなくなり、ソートンをボディガードとしてあてがったのだ。
最初は、誰にでも敵意を向け、噛み付き、コードでも何でも引きちぎり、上目遣いにおどおどと人を見上げる表情が大嫌いだった。
それがいつの間にか、私のモンゴル生活でかけがえのない存在になっていた。
ソートンがいなかったら、とっとと日本に帰って、日本で仕事をしたってかまわない、というくらい、何度もモンゴルでの仕事を投げ出したくなった。仕事じゃなくて、「モンゴル国」というこの国の制度やウランバートルのモンゴル人との付き合いにうんざりし、絶望し、自分がどんどん退廃していくことは何度もあった。
「彼は私の家族です。」
たどたどしいロシア語で出した結論。
「なるほど。シェパードは賢く、やさしい。そういう飼い方ももちろんあるね。美しいシェパードだが、少しやせ気味かな。」
「ありがとうございます。しばらく留守にしていたから、その間にやせちゃったんです。餌はたくさん食べてるのに・・・」
というと、
おじいさんは、
「シェパードは賢くて繊細だからね。皮膚が弱いから、夏はなるべく水浴びをさせてあげたほうがいいよ。餌は一日4リットルぐらい食べるものなんだ。何をあげているんだい?」
ととてもきれいなモンゴル語で話し出しました。
私、びっくり仰天。ソートンも。
白人を見たのは初めてだったし、ロシア語なんかソートンにはわかりません。
日本語だってうんざりするのに、ロシア語なんか、とカリカリと神経質に耳をかきむしって上目遣いに「早く行こうよ」とせかしていたのに、突然のモンゴル語。
ソートンはきょとんとしながら、おじいさんの匂いをフンフンかぎ出しました。
「牛の心臓や肺、肝臓を混ぜて、粟とそばと大麦と米とキャベツや野菜くずと一緒に煮たおかゆです。それに魚をときどき。あとは羊の骨や卵の殻などで、寸胴なべに作ってわけてあげてます。」と私。
「それは正しい方法だよ。運動のやり方も正しい。でも、マーキングのために、他の犬の用足しした後をなめたり、嗅いだりするのはやめさせなさい。そういうところから伝染病をもらうんだ。やせ気味が気になるなら、寄生虫の検査を受けているかい?」
おじいさんの話し方はとてもおだやかで、ソートンを見る目はとても優しいのです。
ソートンは見知らぬモンゴル人男性が大嫌い。だって、ソートンを見ると、すぐに「あっち行け」って言われるか、石をぶつけるマネをされるからです。
「おじいさんもシェパードを飼っているんですか?どうしてそんなに詳しいの?」
私はびっくりして尋ねました。
「私はモンゴルで最初に犬の訓練センターを作ったんだ。シャルフーというものだよ。」
シャルフー(黄色い息子→モンゴル語だと「色白の人」のことをシャルフンといいます。彼の風貌にまさにぴったりの名前!)
そういえば、散歩中に出会ったマルチーズをつれたおばあさんから聞いたことありました。
モンゴル最初の犬の訓練士がこの近所にいるって。
このおじいさんでした。
ほんとにお隣のアパート。
びっくり。
ちょっと仕事で行き詰まり、何もかもが嫌になって、仕事を抜け出してソートンと散歩した昼下がりのことでした。
なんだか不思議な、でも心が優しくなるひと時でした。
ソートンと一緒に暮らすこと。
それは、思いがけない人との出逢いをもたらし、仕事以外の人間関係を繋いでくれる。
ソートンは私にとって、神様がくれた癒しの天使です。
