今日、地平線会議の仲間でアドベンチャーサイクリストの安東浩正君が、シベリアへと旅立っていった。
 これから半年間、厳寒のシベリアで自転車だけを道連れに孤独な冒険の旅が始まる。今回は同行者がいる、ということだけれど、企画計画書にもあるように、過酷な長期型自力走行による旅はやはり頼れるものは自分だけ、だ。
 正確には、まだ日本国内にいるみたいだけど、明日にはロシアの大地に立っているそうだ。そして再び帰還するのは来年の6月過ぎくらい?

 安藤浩正君のホームページにアクセスしてもらえば、わかるけれど、すごい人です、この人。とにかく笑顔がむちゃ可愛い。ちっこい目がとてもキレイに澄み渡っていて、くっきりノリ眉毛で、本当に謙虚が服来て歩いているみたいな男です。
 かわいい奥さんと娘さんもいて、一家の大黒柱・・・でありつつ、いつまでたってもヤンチャ坊主、みたいなピュアさを残しています。

 最近は、こういう人が日本を代表する冒険家になる時代なんですわ。

 2003年植村直己冒険賞を受賞し、ますますテンションがあがる・・・と思いきや、ひさびさに地平線会議の大集会で再会してみれば、相変らずの飄々としたヤンチャ坊主のまんま。

 NHKの「トップランナー」やら「クイズミリオネア」やら、今年は随分日本のテレビにも出演してました。見損なった番組のDVDがある、というからおねだりしたら、旅支度で忙しい中、ちゃんと送ってくれました。

 前回のシベリア横断中にロシアの地元テレビに取材されたニュース映像などもりだくさん。
 すごいなぁ、と思ったのは、単独行だから通訳さんなどは当然ついていないわけですが、たった独りで未知の大地を自転車で走り続け、ロシア語をマスターしてインタビューもロシア語で受け答えをし、日本の文化や自転車の旅の魅力を行く先々の村でロシア語で講演したりと、人間がいるところではちゃんと異文化交流もしているところです。

 今回のシベリア横断第二弾のチャレンジは本人も「成功する確率はそんなに高くないんですよ」なんていうくらい過酷なルートと過酷な条件です。
-50から-60℃の野外、しかも未舗装道路(地図にあるのかもさだかではない)を自転車でただひたすら、ベーリング海峡を目指して半年間も走り続ける。
多分、自転車を押すことの方が多いのではなかろうか?
 自然との闘いも想像を絶するすさまじいものになるだろう。

 それでも、彼は、一瞬かもしれない自然がみせるであろう笑顔を楽しみにしている。
 前回の旅での薄氷のバイカル湖上の縦断。もし氷が割れて彼が落ちたとしても、きっとタイガの主・ハニガしかその事実を知るものはいなかっただろう。
 そんな危険は彼自身も重々承知で、実際、いつもそのことを心配していたらしい。それでも、世界第一位の透明度を誇るバイカル湖の氷の美しさを写真におさめる余裕もある。(本当に厳しいときはカメラが機能する状態じゃないから、今回の-60℃の危険な美しさは、彼の言葉による表現を期待するしかないのかもしれないけど)オトコは危険と隣り合わせのロマンに惹かれちゃう生き物なのだ。

 本人は飄々としていますが、その旅が本当に人間と自転車の可能性をかけた一世一代の大勝負であり、真剣勝負であることは計画書などからも明白。
 そういうプレッシャーを感じていないわけはないと思うのですが、それでも、ボチボチ行ってきます、といえちゃう彼は、本当に素敵な仲間です。

 「成功しそうになかったら、モンゴルに立ち寄るのも面白いよね」なんて話も出ていたので、「ムリせず、マイペースでがんばって。いつでもモンゴルでお迎えするよ」なんて送り出してしまいました。

 いまや人類に冒険とか探検って無縁って思う人もいるかもしれない。
 だけど、地球上には人類である私達のアイディア一つで冒険になるネタはゴロゴロしている。冒険を冒険たらしめるのは、挑戦者の日頃の努力の積み重ねとロマンを創出する創造力だ。
 自分に対する挑戦者であるかぎり、私達はみんな冒険者なのだ。
 行動者としては、一歩も十歩も千歩も地球一周分も先を行っているような安東浩正であるけれど、それでも私達は同じ目線で地平線の先を見つめることができる、その気持ちが嬉しい。

 本当のチャレンジャーは他人に対して、とても謙虚で優しくて、自分の心に燃え盛るモチベーションと精神力で他人にも勇気を与えてくれる。

 安東くん、絶対、生きて還ってくるんだぞ! 
 そして、また身振り手振りつきで飄々とすんげえ体験を珍道中のように語って下さい。

 君のためにモンゴルで私はいつでも扉を開けて待っているけれど、
 本当は来年の今頃、東京であなたと再会して、冒険譚を聞くことになるって信じてます。

 がんばれ、がんばれ、安東浩正!
 行け行け、ゴーゴー、安東浩正!
 冬将軍に負けるな、安藤浩正!
 シベリアの凍てつく村の人たちを
 ヤポンスキーのにっこり笑顔でとろかしてやれ!

 一瞬が全て、全てが一瞬。
 生きて、還れ。可愛い奥さんとお嬢様のためにも。
 自分の言葉で身体で人間と自転車の可能性を語るためにも。
 君は、一家の大黒柱だ。私達のかけがえのない仲間なんだ。