この前、テレビのバラエティ番組で、世界で一番視力がいい人コンテスト!みたいなのをやっていて、ケニアのマサイ族やモンゴルの遊牧民などがはるばる日本までやってきていた。
 だだっぴろーいところで暮らしているから、モンゴル人はさぞかし目がいいのだろう、と思いきや、意外と普通だったりする。

 以前、西田敏行さんと一緒に、モンゴル最北端の狩猟・遊牧民の集落までテレビ取材にいったことがあったけれど、そこで視力検査をしたときに、意外に2.0から3.0くらいで、当時の自分とそんなにかわんないじゃーん、と思った覚えがある。
 1996年、パソコンに出会うまでは、私は20mくらい離れていても、視力検査表の2.0の部分の、さらに下にあった説明まで読めていた。大学の健康診断でも、検査室に入ったとたんに視力項目2.0になっちゃうくらいだった。

 電気もない薄暗いテントの中で、印刷の悪い新聞や雑誌を寝転んで斜め読みしていたり、それほど栄養状態もいいわけでもない彼らだから、そんなにずば抜けているわけでもないらしい。そんな彼らと一緒に暮らしていた私も同様である。

 今では、パソコン漬けで、乱視の度が進み、運転免許証の更新での視力検査もギリギリだ。「右・・・かな?」(私)「あんた、本当に見えてんの?いつも運転してる?」(警察の人)「あはは、いえ、モンゴル在住なんで、身分証明書代わりですよ。普段はめがね着用なんです。(いつもどこかに置き忘れてるけど)」といった、あやふやなやりとりと気合で切り抜けている。

 遊牧民や狩人の皆さんは、視力はたいしたことないんだけれど、動体視力はかなり世界的に誇ってよいと思う。
 1200mくらい離れたところにいるノロジカとかを普通に裸眼で発見しちゃうし、当たり前のようにライフル2発をソノ距離から撃って、しとめてしまう。
 なぜ2発かっていうと、猟銃の弾を必要最小限で獲物をとる、というのがいい狩人の条件だから。一発目はとにかくあてて、2発目で確実に急所をぶち抜く。崖から獲物が転落しちゃうと探すのが大変なので、その場に倒れるように撃つのがコツ。1発目を撃つときは、獲物のどこを撃てば、自分が回収できる方向に逃げるか、ということを予想している。野生動物の心を自分の心にシンクロさせて、照準を合わせるのだ。

 このとき、そんなにはっきりと獲物の姿かたちが見えていることは少ないらしい。
 多分、そこにいるはず、という信念をもって、照準を合わせていると、見えてくるんだそうで、獲物もこっちに気づいて、一瞬立ち止まってみつめるんだと。
 この一瞬が山の神様がくれたチャンスなので、必ずしとめないと、次回から獲物が取れなくなるって、狩人たちは信じている。

 森や草原をモンゴルのホンモノの遊牧民や狩人と歩くと、目に見えない色んなものが、「見えてくる」。

 いまや、めがね無しでは都会では生きていけない私だが、自然の中で生き抜くための、野生を見る眼=動体視力と心眼は、鈍らせないようにしていたい。