「PHP 8.1」がリリース ~PHPの持続的発展を支援する非営利団体「PHP Foundation」も設立

列挙型、交差型、Fibers、読み取り専用プロパティなど新しい言語機能が多数実装

 

2021/11/26 

 

 

 

 スクリプト言語「PHP」の新しいメジャーバージョン「PHP 8.1」が、11月25日にリリースされた。以下の新機能と改善が導入されている。

  • Enumerations:定数セットの代わりに利用できる列挙型
  • Readonly properties:初期化後は変更できない読み取り専用プロパティ
  • Fibers:非同期コードを手軽に書ける仕組み
  • Pure Intersection Types:交差型。複数の制約を同時に満たす型
  • never return type:呼び出し元に返らない関数の返り値の型「never」
  • First-class Callable Syntax:「Closure::fromCallable」をシンプルに書くための糖衣構文
  • "final" modifier for class constants:子クラスでオーバーライドできないクラス定数「final」
  • New fsync and fdatasync functions:「fsync」「fdatasync」関数を実装
  • New array_is_list function:配列(実体はハッシュ)が0キーから始まるリスト化を判定する関数
  • Explicit Octal numeral notation:8進数を明示するプレフィックス

 以前の「PHP」よりいかにシンプルに書けるようになったかは、リリースアナウンスに詳しい。

 

 パフォーマンスも向上しており、「Symfony」デモアプリのリクエストタイムではこれまでのバージョンに比べ20%以上もの時間短縮が図られている。

 

 なお、「PHP 8.1」のリリースに先立ち、主要な貢献者であったNikita Popov氏のJetBrains退社と「PHP Foundation」の設立もアナウンスされている。

 著名なOSS(オープンソースソフトウェア)プロジェクトであっても、実体は個人または少数の開発者の貢献――ときには犠牲と表現した方が似つかわしい――でかろうじて成り立っているものはおおい。なかにはメンテナンスする開発者が「燃え尽きて」しまい、プロジェクトが断絶してしまうことも少なくない。

 そうした事態を避けるため、新しい開発者を迎え入れ、既存のメンテナーの負担を減らし、健全な財務状況の下プロジェクトを継続させるために、「PHP」でも財団を設立しようという動きは以前からあったという。しかし、とくに緊急の課題ということもなかったので先送りされていた。

 Popov氏はまだ高校生だった2011年頃から「PHP」に関わっており、3年前にJetBrains社に加わって「PHP 7.4」、「PHP 8.0」および「PHP 8.1」で中心的な役割を果たしてきた。しかし、近年はこれに加え「Rust」や「LLVM」でも積極的に貢献を行っており、とうとう「LLVM」での活動に集中することになったようだ。氏が「PHP」に費やす時間は大幅に減るとみられている。

 主要な貢献者を失ったことは打撃だが、PHP言語の持続的な発展を使命とする非営利団体ができたのは大きな成果といえるだろう。財団にはJetBrains社のほか、以下の企業が参加する。

  • Automattic
  • Laravel
  • Acquia
  • Zend
  • Private Packagist
  • Symfony
  • Craft CMS
  • Tideways
  • PrestaShop

 寄付金は年間で30万ドルを見込んでおり、JetBrains社は10万ドルの拠出を予定しているとのこと。同社は財団へのスポンサー参加を呼び掛けている。

 

 

 

 

 

 

 

プログラミング言語「PHP」を支える非営利団体「PHP Foundation」設立

2021/11/26 

 

 

 広く普及しているプログラミング言語の1つであるPHPの未来を保証するために、新たな非営利団体が設立された。

 PHPは1995年、Rasmus Lerdorf氏によって生み出された。ウェブ技術調査企業W3Techsによると、世界のウェブサイトの約78%で用いられていることもあり、人気言語の1つとなっている。

 チェコ共和国に拠点を置き、統合開発環境(IDE)を手がけるJetBrainsが、PHP Foundationの設立を発表した。PHPの今後の開発に向け支援する数社で構成されている。JetBrainsのほか、Automattic、Laravel、Acquia、Zend、Private Packagist、Symfony、Craft CMS、Tideways、PrestaShopが名を連ねている。

 PHPの非営利団体を設立するというアイデアは何年も前から存在していたものの、PHPの主要な貢献者であるNikita Popov氏がPHP以外の道に進むと決断したことで、団体設立が喫緊の課題となっていた。

 Popov氏は、JetBrainsでの約3年間を含め、10年間にわたってPHPに携わってきたが、LLVMに軸足を移すという決断を下した。

 JetBrainsは、「Nikita(Popov氏)はPHP以外にも、RustやLLVMに長期間にわたって貢献してきた。そしてPHPの時と同様に、LLVMが趣味の対象から本当の仕事になったことで、同氏はLLVMに関するプロフェッショナルなアクティビティーに注力していくと決断した」としている。Popov氏は12月にJetBrainsを退社する予定だという。

 JetBrainsは、「同氏は豊富な知識と専門性を有しているため、同氏のようなPHPの主要な貢献者を失うのはコミュニティーにとって痛手だ。これによって、ウェブの78%で用いられているこの言語が危うい状況に陥る。また、メンテナーに大きな重荷がのしかかるのは言うまでもない。OSSの世界では、こうした重荷が、残念ながら人々の燃え尽き症候群につながる場合もたびたびある」と述べている。

 PHP Foundationが設立される背景には、PHPのある重要な部分の保守に専心できる開発者層が薄いという現実がある。PHPのコントリビューターであるJoe Watkins氏が5月、この課題について提示していた。

 Watkins氏は、「PHPのソースコードには、少数の人々しか理解できない部分があるという状況が常態化している」と述べている。そして、この言語の将来は特にDmitry Stogov氏とNikita Popov氏の2人にかかっているとWatkins氏は指摘する。両氏は、PHPのJITコンパイラーの保守で欠かせない存在だ。JITはPHPの将来に不可欠であり、なくすことはできない。

 PHP Foundationは「Open Collective」で資金を募っており、年間30万ドル(約3400万円)の調達を見込んでいる。JetBrainsは毎年10万ドル(約1100万円)を寄付する。

 「PHPのコア開発者に、市場相場の給与を支払えるようになると期待している。資金が集まるほど、より多くの開発者がフルタイムでPHPに取り組めるようになる」