「JavaScript」が首位維持、「Rust」のコミュニティ急成長--SlashData開発者調査

2021/11/14 

 

 

 1万9000人以上のプログラマーを対象にした調査によると、JavaScriptは今日、世界中の開発者1640万人以上によって使われる最も人気のあるプログラミング言語となっており、「2位との差は極めて大きい」という。

 

 SlashDataが最近発表したレポート「State of the Developer Nation」(開発者世界の状況)の第21版では、世界の160カ国にまたがるソフトウェア開発者のプログラミング言語やツール、API、アプリ、テクノロジー分野の2021年第3四半期におけるトレンドだけでなく、開発者自身の姿勢についても光を当てている。

 またこのレポートでは、開発者の5GやIoTへの関与、特にプログラマーがツールやアプリ、サービスにおいて、テクノロジーの進歩をどのように活用しているのかについても目を向けている。

 JavaScriptは、ウェブアプリやバックエンドアプリにおける継続的な人気に支えられ、2021年第3四半期も最も人気あるプログラミング言語の地位を維持している。そのこと自体に驚きはない。詰まるところ、JavaScriptは何年にもわたって世界で最も普及している言語の座を維持してきているのだ。しかもSlashDataの調査によると、過去6カ月だけで250万人以上の開発者がJavaScriptコミュニティーに新たに参加したという。この値はSwiftのユーザーベース全体と同等であり、RustとRubyのコミュニティーを合わせた規模に匹敵している。

 なお、このデータにはJavaScriptから派生したTypeScriptやCoffeeScriptも含まれている。

 Pythonは首位と僅差とは言えないまでも、その人気は目覚ましいものがある。SlashDataによると、この言語は現在データサイエンスや機械学習(ML)、IoTといった分野のアプリケーションを中心に、約1130万人のプログラマーによって用いられているという。

 Guido van Rossum氏が生み出したPythonの人気はここ数年で爆発的に高まってきており、現在960万人の開発者によって使用されているJavaを抜き去っている。なお、SlashDataの調査によるとJavaはモバイルアプリやデスクトップアプリの主流言語であり続けているという。

 またこの調査によると、Pythonコミュニティーには過去12カ月で230万人の開発者が新たに参加したという。同レポートには「成長率は25%であり、700万人以上のユーザーを抱える大規模なプログラミング言語コミュニティーの中で最も高い増加率を有するものの1つに数えられる」と記されている。

 「データサイエンスとMLの台頭がPythonの人気を支えているのは間違いなく、ML開発者とデータサイエンティストの70%以上がPythonを利用していると回答している。一方、データサイエンス分野でしばしば用いられているもう1つの言語であるRを使用しているのは17%にすぎない」(同レポート)

 

 

 特定のプログラミング言語の開発者ベースを科学的に把握しようとすること自体、不可能なのはもちろんだ。SlashDataは「あるプログラミング言語がどれだけ普及しているのかを評価するのは簡単な話ではない」と記している。SlashDataによると、レポートで挙げられている数値は2つのデータに基づいているという。それらは、同社が独自に見積もっている、世界のソフトウェア開発者数(2680万人)と、「6カ月ごとに実施している数万人規模に達する」と同社が称する調査の結果だ。このためある程度の誤差が含まれているはずだ。

 この他に最も人気のあるプログラミング言語として上位に挙げられているのは、C/C++(750万人)、PHP(730万人)、C#(710万人)だ。SlashDataは、これらのうちPHPが過去6カ月で最も著しい成長を見せているとし、半年前の前回の調査と比べて開発者が100万人増えたとしている。PHPはJavaScriptと同様に、ウェブアプリとバックエンドアプリでの人気を維持している。

 Rustも近年になって注目を集めている言語だ。オープンソースのこのプログラミング言語は、組み込みソフトウェアや「ベアメタル」開発で最もよく用いられているものの、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を利用したゲームの開発でも利用されている。

 同レポートには「パフォーマンスやメモリー安全性、セキュリティを気にする開発者らによって強力なRustコミュニティーが形成されている。その結果、過去24カ月で他のどの言語よりも急速に成長し、2019年第3四半期にはわずか40万人だった開発者数が110万人とほぼ3倍になった」と記されている。

 

 

 SlashDataのレポートによると、開発者らは5Gのプロジェクト、特に産業用IoT(IIoT)やAR/VR、コンシューマー向け電子機器、AI/MLに関連するプロジェクトに携わるようになってきているという。

 また、驚くほどの話ではないだろうが、5G開発者のアクティビティーの中心地は中国だという。SlashDataによると、中国に拠点を置く回答者の13%が5Gプロジェクトに積極的に取り組んでおり、この値は世界平均のほぼ2倍に相当するという。

 その後には北米(11%)と南米(10%)が続いている。しかし同レポートによると、北米の開発者の43%は5Gに関心がない、あるいは関与していないとしている。この数字は世界平均の35%よりも高い値となっている。

 SlashDataは、この結果の背景には少なくとも、5Gに関する誤った情報があるのではないかと示唆している。同レポートには「5Gの可能性についてのより明確なメッセージによって、新たな開発者を呼び込めるかもしれない。しかし、5Gに関する誤解や偽情報がまん延している時代においては、困難が伴うだろう」と記されている。

 

報酬が持つ力

 SlashDataは、ワークフォースの力学が変化し、IT市場の雇用情勢が流動的な状況における開発者の心情についても調査している。

 具体的には、現在の職場から去って他の仕事を得るとしたら、その理由は何かという質問を開発者に投げかけている。これに対して半数の開発者(50%)は報酬が今よりも高い場合に転職すると答えたが、3分の1の回答者は金銭は動機にならず、キャリアの向上(31%)や、知識やスキルの強化(31%)、より挑戦しがいのある役割(24%)、リモートワーク(22%)、より良い企業文化(20%)といったものが動機になると答えている。

 東欧の開発者は報酬の増加を最重要視する傾向にあり、10人中7人近くがより高い報酬を提示された場合に転職すると回答している。中国の開発者も報酬を重視しており、5人中3人が転職のきっかけとしてより高い報酬を挙げている。

 

 その一方、経験豊富な開発者は自らの仕事の満足度を重視しているという。16年以上の経験を有する開発者のおよそ6人に1人は何があっても転職は考えないと回答している。そして、キャリアの向上や、より挑戦しがいのある役割が転職の動機になると回答したのは、いずれも3〜5年の経験を有する開発者が最も多かったという。

 また同レポートには、「開発者が転職を選択する理由は数多く存在しており、報酬の影響を無視して語ることはできないが、われわれの生活の中で仕事の役割が変化している実情を考えると特に、その他の要素も重要な役割を果たしている」と記されている。

 「開発者の雇用と維持に携わる人たちにとって、報酬は重要であるものの、そればかりが大事というわけではない」(同レポート)