宇宙寺院「劫蘊寺」2023年離陸へ。ご本尊は大日如来と曼荼羅、IoT衛星機能も

スマホ対応です

 

2021・02・02 

 

 

 

京都を拠点に人工衛星開発などを行っているベンチャー企業「テラスペース」が、京都にある真言宗醍醐派總本山の醍醐寺とともに「人工衛星による宇宙寺院の開発と打ち上げ」を行うべく提携すると発表しました。

2023年の打ち上げを目指しており、高度400km〜500kmの地球低軌道を約1時間半で周回する予定の宇宙寺院の名前は、「浄天院劫蘊寺(じょうてんいんごううんじ)」。仏教用語で”劫”は極めて永い時間の流れを、”蘊”の字は人間の存在そのものを示す要素を意味します。

宇宙にお寺(といっても小型の人工衛星ですが)を浮かべて、それが一体何になるのかという疑問は、われわれのように頭の凝り固まった一般人なら誰もが思うところです。しかし、ときおり夜空を見上げては、”三千大千世界”のごとく広大な宇宙の入り口となる軌道からわれわれを見下ろしている宇宙寺院に向かって手を合わせるだけでも、この数年で急激に分断が進み、新型コロナ禍への対応で疲弊しつつある人々の心が、ほんの少しなりと穏やかになるかもしれません。

この宇宙寺院には地上のお寺と同様にご本尊や曼荼羅などが祀られます。醍醐寺は真言宗なので、ご本尊は大日如来像。大日如来はすべての生物の根本であり、真言密教では宇宙の真理、また宇宙そのものの象徴とされます。

なお、劫蘊寺の位置はモバイルアプリで確認できるようにする予定とのこと。空を見上げて、ありがたい宇宙のお寺に手を合わせたつもりが、その時刻のお寺は地球の裏側、ブラジルの皆さんの上空だった…などという失態は、このアプリを使えば回避できるはずです。

 

 

さて、ただ軌道を周回するだけでも基本的にありがたいものだと言える宇宙寺院ですが、劫蘊寺にはさらに、IoT衛星としての実用的な機能も搭載されます。

IoT衛星とは、地上や海上のセンサー類からのデータを受信して、ネットワーク化するための通信衛星のこと。たとえば自動運転車や無人船舶のセンサー群が収集したデータや、河川や水路の水位・雨量監視データ、野生動物の行動把握のためのデータなどを吸い上げて、地上の基地局へと中継する衛星システム。

劫蘊寺の場合は、山間部の施設に保管される文化財の保護のためのデータ収集といった用途に用いるのだそう。はるか天空から大日如来の目が行き届いていると思えば、盗人もおいそれと手は出せないことでしょう。

なお、醍醐寺は定期的に宇宙全体の平和、そして宇宙における人類の活動の安全を祈願する「宇宙法要」を定期開催していくと発表しました。その第1回は2月8日午前10時から、テーマは「全世界の新型コロナの収束」を予定しています。YouTubeでライブ配信するとのこと。「宇宙祈願お申し込み」フォームから登録すれば個別の祈願もして貰えるとのことです。

ちなみに寺院ではありませんが、地球低軌道上にはすでに国家も誕生しています。2017年に打ち上げられた「宇宙国家アスガルディア」はウェブサイトのニュースページを見る限り、現在も活動は活発に行われている模様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都・醍醐寺が宇宙に寺院開設へ 人工衛星に寺機能、8日に初の「宇宙法要」

 

2021・02・01 

 

 

 

 醍醐寺(真言宗醍醐派総本山・京都市伏見区)は1日、京都市内の人工衛星開発企業と協力して宇宙に寺院を開くための実行委員会を発足した、と発表した。2023年に打ち上げ予定の人工衛星に寺の機能を持たせることを目指す。

 醍醐寺によると、地域や国の枠を超えた目線で平和や安全を祈る寺院の必要性を感じていたといい、寺の名称は「浄天院劫蘊(ごううん)寺」と名付けた。「劫」「蘊」ともに仏教上の言葉。大きな時間の流れや、人間の存在を形成する要素を意味するという。

 2年後に打ち上げ予定の衛星には本尊や曼荼羅(まんだら)など仏教の教えを象徴するものを搭載し、地球から祈る人たちの心のよりどころとする。8日に宇宙の平和と安全を祈る「宇宙法要」を初めて行い、今後も定期的に実施予定。醍醐寺の仲田順英総務部長は「打ち上げ後は宇宙からの画像を見ながら法要を執り行うなど、人工衛星を活用した祈りの世界を具現化したい」と話している。