そうそう、オリジナルが一番だと思う。
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__(アンダーバー)が語る、ネットの変化と新作のコンセプト「ニコニコの時の流れだけやけに速い」
2014.07.10既存のボーカロイド楽曲を大胆にアレンジして歌う「フリーダム」と、オリジナルソングをしっかりと歌い上げる「フツーダム」という2つのスタイルでの歌唱を特徴とする『ニコニコ動画』出身の歌い手__(アンダーバー)。彼が7月9日に3rdアルバム『くぁwせdrftgyふじこlplp;@:「どうも__(アンダーバー)です。」(仮)』(通称:ふじこ)をリリースする。__(アンダーバー)の「歌ってみた」動画は、累計3000万回以上の再生数を誇り、Twitterのフォロワーも31万人以上、幅広い層から支持を集めている人気の歌い手だ。今回リアルサウンドでは新作に関するインタビューを実施。オリジナル曲志向を強めた理由や、彼自身の音楽的ルーツ、さらには近年の『ニコニコ動画』の歴史や変化についても語ってもらった。
「純粋な笑いをみんなと一緒に楽しみたい」
――『くぁwせdrftgyふじこlplp;@:「どうも__(アンダーバー)です。」(仮)』(通称:ふじこ)は、オリジナルとボカロカバーが収録された初の2枚組CDです。それぞれ性格の異なった力作ですが、今回2枚組にした経緯は?
__(アンダーバー):1stアルバムの『フツーバム~フツーダムに歌ってみた~』と、ボカロカバーアルバムの『フリーバム~フリーダムに歌ってみた~』をリリースしてきた僕にとって、今作は分岐点になると考えているんです。というのも、僕は自分の世界観を表現したくて、オリジナルをやっていきたいと思っていて。でも今までボカロ中心で活動してきた分、なかなかオリジナルは受け入れられづらいところがあったんですね。だからこれまでのボカロカバーでの活動も踏まえつつ、自分の思いも表現するために、思い切って2枚組にしました。
――そのオリジナルでは曲ごとに世界観を作り上げ、いろんな作曲家の方とコラボレーションしていますね。
__(アンダーバー):はい。__(アンダーバー)には、「アンダーバー星に住むアンダーバー王が、国の繁栄のために地球を侵略しにきている」という設定がありまして(笑)。このオリジナルはその始まりという位置づけかなと思います。アンダーバー王が、宇宙船で地球に落ちてきたところからスタートして、アンダーバー王が地球の人間のなかにひっそり潜みながら侵略していく。作曲家さんたちとのコラボレーションはその侵略が形になっていることを表しているんですね。でも侵略って言うと少し恐いので、洗脳っていう感じですね。__(アンダーバー)は人間のなかにひっそり潜みながら、人々の心を楽しませて洗脳していくことを大切にしています。
――「人々を楽しませたい」というコンセプトが生まれたきっかけは?
__(アンダーバー):将来も見えないし、自分の信じてきたものは本当にこれでいいんだろうか、とかすごく疑ってしまう時期が僕にはあって。それと同じように辛い思いをしている人たちも見てきて、そんな人たちにどうにかできないかなって思ったんです。誰にも相談できなくて、辛いことがあっても、僕の曲で少しでも気晴らしになれば嬉しいんです。
――__(アンダーバー)の音楽は、ユーモラスというか、くすっと笑えるような表現をしていくのがひとつの特徴ですよね。
__(アンダーバー):純粋に何にも深いことを考えずに毎日楽しかった時期って小学生くらいだろうなと思うんです。小学生くらいの時って、下らないシモネタ……それこそウンコだとかで大爆笑してたじゃないですか。今となっては何が面白いのかさっぱり分からないんですけど、あの時の気持ちが一番大事なんだなというのが僕の中ではあって。だから、『フリーバム』では昔の下らない、純粋な笑いをみんなと一緒に楽しんでいけたらと思って、ボカロ曲をアレンジしたりしていました。
――『フリーバム』で表現していた“純粋な笑い”を、今作ではオリジナル楽曲にも出していくと?
__(アンダーバー):そうですね。例えば、「まじしゃんず☆さまー」とかも、彼女ができないうんぬん(笑)っていうのを大胆にのっけてみたりとか、すごく下らないんですが、どんどんそんな感じでやっていきたいですね。
――その「まじしゃんず☆さまー」はヒャダインさんの作曲ですが、今作で関わっている他の作曲家も含めて、どのように曲を作っていったのですか?
__(アンダーバー):一曲ごとの、はじまりから終わりまでのメインストーリーを全部まとめて作って、その曲を作者さんごとに分けてお願いした、という感じです。「まじしゃんず☆さまー」に関しては、思い通りのものが来た!っていう感じでしたね。ヒャダインさんはやはりずっと作曲をされてきた方なので、イメージ通りのものを作成していただいてすごく感謝しています。詞もすごくのっけやすかったです。
――コンセプトをしっかり固めて作った初のオリジナルアルバムを制作して、見えてきたものはありましたか。
__(アンダーバー):今までいつかオリジナルをやっていきたいと思っていた分、自分のなかでは意外とスムーズにできたかなと。一回目にしては良いものができたなと思えたので、今後作っていくアルバムもかなり良いものにできそうかなっていう手応えも感じています。
――溜まっていた表現衝動を出したという?
__(アンダーバー):そうですね。それで聴いていただいて楽しんでくれるのが一番なんですけど、そのなかに隠されたコンセプトというか、「フリーバム」もそうなんですけど、根底は暗~い気持ちから作っていることがほとんどなので(笑)。そういうところも感じてもらえたらと思います。
――非常に多様な音楽的なルーツが見え隠れする作品でもあります。
__(アンダーバー):物語性や歌もあり、演技もありっていうところで、大きな影響を受けたのはSoundHorizonさんですね。それからフリーダムのバックボーンになっているといったら、これは初めて言うかもしれないですけど、「ボボボーボ・ボーボボ」っていうマンガ。本当にくだらないというか、つじつまの合わないもの、そんな展開、勢い、ゴリ押し感から影響を受けています。SoundHorizonさんのような真面目な世界観もありつつ、「ボボボーボ・ボーボボ」のようなアホみたいな世界観で、面白いのにどこか物悲しい、心に刺さるところがある、ということを感じてほしいですね。そんな二面性が「フツーダム」と「フリーダム」なのかなって思います。

「歌で大事なのは、詞をどこまで言葉として表現できるかということ」
――改めて振り返っていただきたいのですが、音楽を通して自分を表現するということについて、どのように捉えていますか。
__(アンダーバー):正直、最初歌は趣味程度でしかなかったんです。カラオケ行ってワイワイ楽しむだけみたいな。「ひとカラ」に行くことが多かったんですけど、ひとりで行ってどうやったら歌がうまくなれるだろうとか、誰かとカラオケ行ったりするときとかも、誰かにうまいと思ってもらいたい、楽しんでもらいたいっていうのを当時から思って歌っていて、ニコ動に投稿するようになりました。
――歌がうまく聞こえる要素にはどのようなものがあるのですか?
__(アンダーバー):僕は、何十年とずっと歌をうたってきた人には絶対に敵わないと思うんですが、世の中に下手ウマと呼ばれる人たちがいて、下手なんだけど魅力を感じる要素はなんだろうと考えたんです。それで、それは詞をどこまで歌にのっけられることなのかな、という気がして。音程やリズムを取るのはもちろん、詞をどこまで言葉として表現できるかということが大事なのかなと。そっちのほうが歌の本質が伝わるんじゃないかと考えて、そこに力を入れ始めました。それでそのうちに、動画も曲も作れるようになって今に至るので、すべてが延長線上にあるというか。そういうふうに歌っていって、ライブに出るようになると、音楽を作る人たちとも徐々に触れる機会が多くなっていろいろ話していくと、曲やメロディーを一個一個作るのにもさまざまな思いが込められているんだなと思うようになったんです。それで「フリーバム」を作る上での思いとか考えが変わっていって、その結果今のオリジナルがあると思うんです。そういう意味では、ボカロの影響はすごく大きかったです。
――そのボカロでのカバーが「フリーバム」ですが、今回の作品についても伺っていきたいと思います。今回カバーの選曲はどんな基準で?
__(アンダーバー):いまのニコニコ動画って世代が変わってきているなと感じていて。僕は初音ミクが出てくる前からずっと観ていたんですが、時期によって4世代くらいに分かれるんじゃないかと。僕の中での初音ミクは「ミックミクにしてやんよ」とか「メルト」とかそのくらいなんです。けれども今のユーザーにとっては、初音ミクって「千本桜」とか「カゲロウプロジェクト」とかになってくるので、意識の差が出てくるというか。僕は昔の曲の方が思い入れが強いので「ハロープラネット」とか、その世代によって違うものを入れていきたいなと思いまして、古いものから新しいものまで幅広く、初音ミク、ボカロっていうのはこういうものなんだよ、こういう曲があるんだよというのを聴いてほしくて、昔のものから今のものまで幅広く選曲しました。
「ニコニコ動画は昔のようにくだらない場所であってほしい」
――初期の世代と今の世代では、どの点が変わっていますか?
__(アンダーバー):曲調が大きいですかね。昔はバラ―ドというかJ-POPっぽい曲がすごく多くてそれがウケたっていうのがあるんですけど、徐々にBPMが早くなっていったんですよね。昔はJ-POPサウンドだったのがバンドサウンドになって、バンドサウンドからテクノサウンドに変わっていったというのは感じます。
――今回、かなりBPMの早い曲も入っていますよね。
__(アンダーバー):そうですね。そこで思ったのは、ボカロは人間の歌うものじゃないと(笑)。いまさらなんですけど痛感しています。昔のものですら、息継ぎがなかったり、滑舌的に難しいものだったのに、それがさらにありえないレベルのものになっていて(笑)。ましてやボカロというとさまざまなジャンルがあります。でもそれはボカロからバラードからロックまで歌ってきて、自分のスキルアップになったかなと思います。
――今回の収録曲で特に難しかったのは?
__(アンダーバー):7曲目の「ニセモノ注意報」ですね。この楽曲は曲のなかでBPMが早くなっていくんです。滑舌もすごく難しいし息継ぎもないし、そういう意味ではすごく大変でした。歌うだけじゃなくて、曲の歌詞を表現していかなければならなかったので苦戦しました。
――世代の話でいうと、曲調だけではなく歌詞の変化もあると思うのですが、どんな点で感じますか。
__(アンダーバー):だんだん複雑になっていっていますね。もちろん作曲者によっても違うんですが、昔の方はけっこう直接的表現というかわかりやすい表現が多かったんですが、最近になって「これは日本語なのか?」と思うような表現とか、初めて聞くような難しい言葉を使われる方もいますし、すごく物語性が出てきて、深読みができるものが増えてきてるなと思います。
――そうしたものをユーザーも求めていると。
__(アンダーバー):ニコニコで投稿していくうちに、新しい世代は新しいものを求めてやってくると感じました。そういうなかで作り手さんも新しいものをどんどん広げていくので、楽曲自体のクオリティも高くなってきて、「これはもはやプロじゃねぇの?」って思うことも多々あります。その移り変わりが早くて、「ニコニコの時の流れだけやけに速いな」と思いますね(笑)。それから昔はいかに面白いこと、変なことをやって投稿して、視聴者がみんなで盛り上げよう!という風潮があったんですが、最近になるにつれて、その風潮がなくなってきているなと感じます。最近は、いかに投稿者が楽しませるかというふうになっている。でも僕は、ニコニコ動画は昔のようにくだらない場所であってほしい、あの良さは失ってほしくないとも思っています。
――そういう変化も、オリジナルをやるという背景にあるのでしょうか。
__(アンダーバー):いまの子は二次創作よりも一次創作を楽しみにしていってるのかな、っていう気はしますしね。僕のリスナーさんでも、ずっとボカロを聴いてきてる人がいるんですけど、そういう人たちも、僕の音楽を聴いてくれたうえで少しずつ変化してるというか。「__(アンダーバー)さんのオリジナルが見たいな」「__(アンダーバー)さんのつくりだす世界を楽しみたい」っていう人が増えてきているというのは感じています。僕だけでなくリスナーさんにも、流れの変化は一緒に出てきているんだなと思います。
「アリーナとかドーム規模でライブをやっていきたい」
――最近は大きな会場でのライブ活動も成功しています。ライブパフォーマンスに対する手応えは?
__(アンダーバー):ライブを通して、自分の本当にやりたいことが明確になってきたと思っています。ライブでは、コメントとか字じゃなく生でお客さんが楽しんでるのが伝わってくるので、自分がやりたかったのはこれだ、と思えるようになりました。僕としてはライブに重点をおいてこれからの表現活動をやっていきたいですね。昔の僕もそうだったんですけど、ライブというのは敷居が高くて、足が運びづらい場所だったんですが、そういう人たちに対して、ライブというのは楽しいものだと伝えていきたいし広めていきたい。だから、ライブもエンターテインメントなものにしていきたいです。
――今作で新たなチャレンジになりましたが、今後の活動はどうなっていくとお考えですか?
__(アンダーバー):ボカロ文化は消えてほしくないなって思うので、ボカロもやっていくつもりです。けれども、メインはオリジナルを作って、それをライブでやることだと考えています。
――9月6日にはTOKYO DOME CITY HALLでワンマンも控えています。
__(アンダーバー):僕のやりたい、表現したいことはそれこそ会場の広いところじゃないと表現しきれないというか。僕は演劇とかミュージカルが好きだったんで舞台セットをがっつり組んで、ダンサーさんも含めて壮大に表現していきたい。いろんな構想があるのでアリーナとかドーム規模でライブをやっていきたいんですよね。まだ気は早いですが、そういう思いは強くあります。
(取材=神谷弘一/構成=高木智史)

