「あの世」が天国であるならば、地獄行きが決定してる僕。
そもそも天国や地獄の存在を証明してくれる人は皆無
よって、お伽噺のようなもんだ。
宗教にとって都合の良い設定なのは、馬鹿な僕だって分かる

その点「生まれ変り」という説には期待した!
「生まれ変ったらアメリカ人になりたい」なんて悠長な事は言ってられない。
それは天国と同様、立派な人生を全うした人間が言える希望で…

僕みたいな最低の男が人種どころの話ではない。犬や猫にされるかも知れないし、それどころか虫かも?
「ゴキブリやカメムシは嫌だなー」

そんな贅沢な事は言えない!動物や虫なら大体、寿命は長くて十数年、再度チャンスはやってくる。
上手くいけば数日で生まれ変れるかもしれない…

しかしゴキブリから人間に生まれ変わるなんて出来るのだろうか?
せいぜい頑張って、次はネズミくらいだろう…
あぁ…ゴキブリから人間まで一体、何回死ねばいいのか…

生まれ変りで避けたいのは「木」です。
下手したら400年も生き続けるかもしれない…400年待って、やっと死んで次が、また木だったら…死にたくなる。

まあ最低の男なんだから、それも仕方ない!
それから数日間、考えた結果 僕が一番生まれ変わりたくないものに辿り着いた。

それは「毬藻(まりも)」
そう!北海道の湖に居るやつ…生きてるんだか?死んでるんだか?
自ら成長してるんだか?綿ぼこりの様に只、大きくなっているんだか?湖の底を転がり漂っている。

僕が毬藻なら、早く生まれ変わる道は只ひとつ
岸に打ち上げられ、枯れ果てて死ぬ!正しく運のみ!

もし願いが叶い、陸に上がって神様に
「どうか次は動物か…いいえ、虫でも構いません」と祈っている時

見知らぬオジサンが柄の長いモップのような道具で、陸に上がった毬藻達を湖に押し戻すんだ。

それが天然記念物を守るオジサンの仕事…

毬藻は嫌だ…

何れにしても僕の人生は今回しかないという事。
いや待てよ?来世の事ばかり考えていたが、じゃあ前世は何だったんだ?

覚えてない!って事は…前世もなければ来世も無い
これもまた宗教の作り話って事か!