〇:なんかごめんね。付き合わせちゃって

ア:いえ、嬉しいです;;;

〇:嬉しい?

ア:あっ、そのお祭り。最近無かったじゃないですかっ;;;

〇:ああ、そうだね。ここも3年ぶりとかになるのかな




地元のお祭りにアルノちゃんと2人で来ている。

留守番しているなぎの為の買い出しのようなものだが。

それにしても、お祭りってこんなにカップル多かったっけ。

久しぶりすぎて、よく覚えてないけど。





ア:人いっぱいですね

〇:ほんと天気でよかったね

ア:先週末は雨すごかったですもんね

〇:うん、あれくらい降っちゃうとさすがに誰もこれないだろうし

〇:楽しみにしてる地元の人は何日も前から天気予報見てたんだろーなーとか

〇:屋台の人達の仕入れた材料とかどーなっちゃうんだろーなーとか

〇:だからほんと天気でよかったなー

ア:〇〇さんってそういう事考えてるんですね

〇:変かな

ア:変じゃないですよ。なんからしいなって思いました




柔らかいアルノちゃんの表情に自然と饒舌になる。




〇:オレがけっこう天気に恵まれない族の人間だからさ

ア:そーなんですか

〇:そーそー、人生の重要なシーンで常に大雨降ってる感じ

ア:うわぁー、それはなんか大変ですね

〇:まあでもさすがに慣れてきて最近はそんなに悪くもないかなーって思ってるんだけど

ア:悪くない?

〇:うん。予定していた催しが無事に行われたってだけでよかったーって、人より幸せを感じる瞬間が多いっていうか

〇:今もこうやってお祭りに来れて、みんな楽しそうでよかったなーって

ア:ふふ、なんかそういうの素敵ですね

〇:まあ、なぎは残念だったけど。お腹痛いんじゃしょうがないし

ア:あぁー・・・あれは応援してくれたんだと思います

〇:んっ?

ア:と、とにかく買うもの買って早めになぎのとこ帰りましょう;;

〇:いいの?せっかく来たのに

ア:ほんとは、なぎも〇〇さんとお祭り楽しみたかったと思うので

〇:そっか、ありがとね。ところでアルノちゃんも同じ部族?

ア:んぅー、私は恵まれる族だと思います

〇:ほんと?意外かも

ア:えぇぇー;;;

〇:はは、ごめんごめん

ア:恵まれる族ですよ

ア:今日の晴れも・・・先週の雨も・・・・

〇:そーだ、先週ダメじゃん

ア:ダメじゃないですよ

ア:〇〇さんといっぱい話せたのは、雨のおかげですから///////




ああ・・・

確かに先週アルノちゃんを車で送ってなかったら、成り行きとはいえ今こうして2人で出かける事なんてなかっただろう。

まったく不思議な縁だなーなんて感心しつつ、先週の雨に感謝してしまった。







ア:浴衣着てる人けっこういますね

〇:そーだね

そーいえば、アルノちゃんの浴衣姿は見損ねたんだった。

まあ、想像だけでだいぶやられましたけど。

ア:可愛いなあー

浴衣を着てるカップルをみて羨ましそうに言う。

いや、アナタが可愛いんですけど・・・・

そんなオレの視線に気づいて恥ずかしそうにする。

ア:あっ;;私みたいな首短い族が着てもあんな風にはならないんですけどね;;;

〇:いやいや、アルノちゃんが着たら絶対優勝でしょ

ア:えぇぇ・・・そんな;;;;普通のトーンで言わないでください;;;;

〇:あ、でも浴衣姿も見たかったけど、今日はエプロンいただいたんで

〇:めっちゃ可愛かった。ほんとごちそうさまです

ア:えぇぇ・・・な、なんですかっ;;;

〇:あんなの毎日見られたらもう最高だよなぁー

・・・・・・

・・・・・・

ん?

気付くと両手で顔を覆ってうずくまっていた。

//////

//////

ア:もぉぉ;;;ずるいです//////

〇:ずるい?何が?

ア:だって・・・そんなの本気にしていいのかなって思っちゃうじゃないですか///////

〇:本気で言ってるけど

・・・・・・

・・・・・・

ア:んうぅー・・・・そーじゃなくって・・・・

なんだかお気に召さなかったらしい。





よく分からないけど

不満そうに口を膨らますアルノちゃんが可愛すぎて・・・

エプロンとか・・・

浴衣とか・・・

そーいうのが乗っかってるときは自然に言えたのに・・・

素の可愛さをしっかりくらってしまうと何も言えなかった。







〇:それにしてもカップル多いね。お祭りってこんなだったかなー;;;

・・・・・・

・・・・・・

〇:アルノちゃん?

さっきからちょいちょい立ち止まるアルノちゃんを振り返ると、じいーっとこちらを見ていた。

ア:あの;;はたから見たら私達もカップルだと思うんですけど//////

!!!!

言った後に恥ずかしそうにする仕草に、心臓がどかんどかんと暴れだす。

・・・・・・

・・・・・・

ア:なんか;;;言ってください///////




・・・・・・

・・・・・・

えーっと;;;

これはなんて言ったらいいんだ;;;;

・・・・・・

・・・・・・

〇:えっと;;;どっちかっていうと兄弟じゃない?

ア:ち、違いますっ!!絶対恋人ですっ///////

〇:いやいや//////

恋人って;;;

真っ赤な顔で睨みあげられて、何も言えなくなってしまう。

そんなオレの胸中を知ってか知らずかペンギンみたいにテトテト近づいてきて

ア:だって、ほら・・・

・・・・・・

ア:こうしたら兄弟じゃないですよ

垂れた右手の小指をちょこんと摘ままれる。

!!!





オレもそうだがアルノちゃんも真っ赤になっているのが顔を伏せていても分かる。

確かにこれは兄弟じゃないけど///////

・・・・・・

・・・・・・

何を言っていいのか

・・・・・・

この後どうしたらいいのか

・・・・・・

分からなくなってるのがお互いに分かってしまって

・・・・・・

・・・・・・

ふっ・・・

同時に笑ってしまう。








〇:・・・行こっか///////

ア:はい///////

それだけで全て繋がったような感覚だった。





人も多いし、はぐれないようになんて自分に言い訳をしつつ、アルノちゃんと繋がっている部分を極力考えないようにする。

そー思えば思うほど、隣りにいる妹の友達の事を考えてしまう。

湧き上がる予感しかない自分の感情をなんとか抑える為に。

キョロキョロと屋台に目をやって、なぎへのお土産クエストを始めた。









焼きそば

・・・・・・

お好み焼き

・・・・・・

りんご飴

・・・・・・

お金を払う時にすっと指が離れて

お金を払い終わると、すっと小指を摘ままれる。

不思議なもので繰り返しているとそれが自然であるかのように思えてくる。

小指を摘まむ側と摘ままれる側の動きも徐々にシンクロ率が上がってきて・・・

このまま手を繋ぐのが自然というか、むしろ繋がないほうが不自然に思えてくる。

今アルノちゃんの手をきゅっと握ったら、どういう反応するんだろうか・・・

それは許されるんだろうか・・・

そんな事を考えていると前方に見知った後頭部が目に入る。

綺麗に束ねられた髪がふわっと揺れて振り向いた瞬間、同時に声が漏れた。

あっ・・・







〇〇・・・

シオリ・・・

懐かしい元カノと再会だった。




【続く】