「2回とも蓮加から不意打ちみたいにキスしたって事ね」
そう珠美に言われて確かに・・・と納得してしまった。
舞い上がってお兄ちゃんとのキスの話を珠美に自慢した結果、
冷や水をぶっかけられる。
その後、さんざん珠美はフォローしてくれてたけど、
一度腹落ちしてしまったものを無かった事にするのは難しい。
キスして喜んでたのは私だけなのかな?
お兄ちゃんからしてもらった事無いし・・・
授業中ぐるぐると良くない思考の沼にはまっていき、
放課後には言いようのないモヤモヤにすっかり覆われていた。
どうしたら、お兄ちゃんからキスしてもらえるんだろう・・・
お兄ちゃんの教室に向かって、廊下をヨタヨタ歩いているとふいに声をかけられる。
「蓮加ちゃんどしたの?」
顔を上げるとシオリ先輩が心配そうにこちらを見ていた。
「なんかあった?」
見た目で心配されるくらいには考えこんでいたみたいだ。
「私でよければ話聞かせて」
うぅ・・・シオリ先輩優しい・・・
「じゃあ、相談してもいいですか?」
「うんうん、なんでも言って」
「お兄ちゃんとの事なんですけど」
「喧嘩でもしたの?」
「えっと、喧嘩じゃなくて昨日キスしたんですけど・・・」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
「先輩?」
急にフリーズしてしまった先輩に声をかける。
!!!
「・・・っはぁぁ!!死ぬかと思った;;」
息が止まってたみたいに大きめな呼吸を繰り返す。
「先輩?」
「ごめんごめん;;ちょっと思ってたのと違ったから;;とにかく詳しく教えて!!」
急に眼がギンギンになった先輩に戸惑いつつ続ける。
「はい、えっと・・・2回したんですけど」
!!!
「2回っ!!」
「はい、1回目はお兄ちゃんの部屋で寝てるとこに蓮加がチュってして」
「ぶほっ!!!」
変な声を出して大きくのけ反る。
あれ?人ってこんなに身体反って大丈夫なんだっけ?
「大丈夫ですか?」
「うんうん!!超大丈夫!!続けて、続けてっ!!」
「えっと、2回目はデコピン待ちで目をつぶってるお兄ちゃんに蓮加がチュってして」
!!!
「ぐはっ!!はぁはぁ・・・」
「嬉しかったんですけど、なんか2回とも蓮加の不意打ちみたいな感じで・・・」
・・・・・・
「そもそもお兄ちゃんはキスしたいと思ってたかもわからないし、
どうしたらしてもらえるんだろうって・・・」
・・・・・・
「なんかいい方法無いでしょうか?」
・・・・・・
・・・・・・
「蓮加ちゃんっ!!」
「はい」
「キスしてほしいんだね?」
「えっと・・・はい////」
「私がしてあげるっ!!」
「先輩?」
「いただきまーす」
唇を突き出して近づいてくるシオリ先輩。
「ちょ、ちょっと待ってください;;」
「無理無理、もぉー可愛すぎて無理!!絶対するっ!!」
ずずずっと迫ってくる先輩の肩を両腕で必死に止める。
「ダメです;;;恥ずかしいし///」
「あ、ごめんね。こんな一目につくとこじゃ恥ずかしいよね。人気のない暗がりに行こうねー」
「そ、そうじゃなくて;;」
・・・・・・
「蓮加の唇はお兄ちゃんとチューする用だからダメなんです///」
・・・・・・
・・・・・・
「先輩?」
「ぶはああっっ!!!」
頭を抱えて廊下をゴロゴロとのたうち回るシオリ先輩。
唐突な行動についていけずに立ち尽くす。
『蓮加?』
廊下の向こうからやってきて目を丸くしているお兄ちゃんと目が合う。
『えっと・・・これどういう状況?』
「蓮加もよくわかんない;;;」
『久保先輩、大丈夫ですか?』
「超大丈夫で死にそうっ!!私の事はいいから蓮加ちゃんにチューしてあげて!!」
『えっ!!』
「ちょっ;;;なんでもない!!お兄ちゃんもう帰ろっ;;;」
『う、うん///』
シオリ先輩の事は心配だったけど、お兄ちゃんの腕を引っ張ってその場から離れる事にした。
ーーーーーーー
「・・・お兄ちゃん聞いてる?」
『え?ああ、ごめん・・・』
「ううん・・・」
・・・・・・
・・・・・・
久保先輩と何を話してたのかは知らないけど、蓮加にキスしてって先輩が言ってたのだけめちゃめちゃ覚えてる。
というかそれがずっと頭から離れなかった。
気づいたら蓮加の唇ばかり盗み見てる事に気づいて、昨日のキスの事を思い出して勝手に気まずくなる。
そんなオレの様子に蓮加も気づいているようだった。
「・・・さっきの気になるよね」
『うん、まあ・・・』
「ちょっと相談っていうか、話し聞いてもらってたの。その・・・昨日のキスの事///」
『うん・・・』
「2回とも蓮加からしたじゃん;;;」
『うん///』
「どうしたらお兄ちゃんからしてもらえるんだろうって思って///」
『えっ!!』
蓮加がそんな事考えてたなんて・・・
「どうしたらっていうか・・・どういう時にしたくなる?」
恥ずかしそうに上目遣いをしてくる蓮加に嘘をつける訳もなく・・・
『えっと、今めちゃめちゃしたい・・・です///』
「えっ?」
驚いた後に熱っぽい目で見てくる蓮加。
・・・・・・
・・・・・・
「蓮加も///」
『蓮加・・・』
そのまま吸い込まれるようにゆっくりと近づいていって・・・
「ゴッホンッ!!」
『へ?』
「さすがにもうちょっと学校から離れてからにしたら?」
わざとらしい咳払いに振り向くと、呆れ顔の飛鳥と数人の生徒の視線。
!!!
『そ、そうしますっ;;;蓮加行こっ;;;』
「うんっ//////」
飛鳥の気遣いに感謝しつつ、真っ赤になってその場から逃げた。
同じく真っ赤になっている蓮加の小さい手をぎゅっと握って。