『美波、明日ってなんか用事ある?』

 

 

「えっ、なんにもないけど」

 

 

もしかしててっちゃんからデートのお誘い?

 

 

『あの母さんがさ』

 

 

「えっ、おばさんが?」

 

 

『美波にちゃんと挨拶したいからって・・・』

 

 

「え!!なんで?」

 

 

『なんでって、付き合い始めたからだと思うけど』

 

 

「・・・おばさん、もう知ってるんだ」

 

 

『あれ?美波のお母さんに聞いたって言ってたけど』

 

 

あー、そうか・・・・

 

なぜかお母さんには速攻バレたんだよね。

親って怖い・・・

 

 

私のお母さんとてっちゃんのお母さんは仲がいい。

自分たちも同年代で子供も同級生ってことで

小さい頃はよく家族ぐるみの付き合いをしていたものだ。

 

もちろん仲悪いのは困るんだけど、良すぎるのも困っちゃうな。

 

今までは普通に話せてたけど、

ちゃんと挨拶ってなるとちょっと緊張するかも・・・

 

 

『急に言われても困るよね、ごめんごめん。

 うまく言っとくから気にしないで』

 

 

「いや行く、行きます!!」

 

 

・・・・・・

 

 

『ありがとう。なんかごめんね』

 

 

「ううん・・・」

 

 

だっててっちゃんとはこれからもずっといたいし、

いつかは結婚とかってなったら、

おばさんとおじさんとも家族になるわけだし。。。

 

ってさすがにこれはひかれちゃうな。

 

でもおばさんもおじさんもすごく優しいし大好きだ。

早いうちにちゃんと挨拶しないとだよね。

 

 

『もし美波が良ければ

 久しぶりに家族で集まるのもいいかなって言ってたんだけど』

 

 

「そうなんだ。でもてっちゃんこそ、うちの親に会うのって、

 久しぶりじゃない、大丈夫?」

 

 

『あー、それなら・・・』

 

 

・・・?

 

 

『ごめん、言うなって言われてたから内緒にしてたんだけど。

 実は、この前挨拶してて・・・』

 

 

「えっ、どういう事?」

 

 

『いや偶然、駅でお父さんに会って、

 2人でファミレス行って話した』

 

 

「何それ!!」

 

 

『おじさんも付き合ってる事聞いてたみたいで。

 まあ美波の小さい頃の話とかいっぱい聞いて、

 途中から酔っぱらって大変だったけど・・・』

 

 

・・・・・・

 

お父さん・・・なぜ、お酒を飲む・・・

 

 

『本当に美波は愛されてるんだなって思ったよ』

 

 

酔っぱらってとか恥ずかしいし、

てっちゃんとお父さんが2人でファミレスとか

どういう状況よ・・・

 

 

『おばさんも途中で迎えに来てくれて

 あらためて挨拶しました』

 

 

そういえば、この前お父さん迎えに駅まで行ってくるって言ってたな・・・

 

なんか私の知らないところでいろんな話が進んでいて複雑だ。

 

 

『ごめんね。内緒にしてて・・・』

 

 

「ううん、こっちこそほんとにごめん。

 たぶん無理やりお父さんが誘ったんでしょ」

 

 

『いやいや、全然。オレも楽しかったし』

 

 

もう、お父さんは・・・

 

 

『あのさ、オレもお父さんとじっくり話せたし、

 その・・・美波の事が大好きっていう共通点があったからさ』

 

 

・・・・・・

 

 

『この先ずっと美波と一緒にいたいし、

 お父さんと美波の事を話せたのは、すごく嬉しかったんだ。

 だから・・・・』

 

 

そこまで言われちゃったら、お父さんを怒れないじゃん。

てっちゃん、お人好しなんだから。

 

 

「うん、わかった」

 

 

私の知らないところで迷惑かけていたようで申し訳ない。

っていうかさっき普通に大好きって言ってたな///

 

 

次の日の夕方、久しぶりにてっちゃんの家に家族で集まった。

 

 

私はとにかく緊張していて・・・

明らかな歓迎ムードだからこそ、どう振る舞ったらいいのかわからないんだけど・・・

 

 

なんとなく全員そこには触れないまま会話をしながら

料理の準備を始めた。

始めてみたら、昔からの付き合いがあるので

みんな笑顔で楽しい時間だった。

 

 

 

「よし、乾杯しましょうか」

「そうですね」

「じゃあ、2人にやってもらおうか」

 

 

え、ちょっとお父さん何言ってんのよ・・・

 

 

『あ、はい。じゃあ・・・』

 

 

「ちょっ、ちょっとてっちゃん?」

 

 

『大丈夫だよ・・・』

 

私を安心させる様に笑ってくれた。

 

 

・・・・・・

 

 

かっこいい・・・

 

 

 

『あの、僕たち交際をすることになりました。

 家族ぐるみの付き合いがある中で

 心配かけてしまうかもしれませんが、

 今後もよろしくお願いします』

 

深々とお辞儀をするてっちゃん。

 

まじめっ!!
 

 

付き合いました、の挨拶にしてはちょっとやりすぎな気もするけど。

 

私もちゃんと伝えないと!!

 

 

「あっ、あの二人で必ず幸せになりますので

 これからも見守ってください!!!」

 

あれ?私の方がやりすぎ?

 

 

一気にしゃべって顔を上げると

大人たちは皆拍手で祝福してくれた。

ほんとに嬉しそうだ・・・

 

お父さんだけ泣きそうな顔だったけど・・・

 

 

もー。恥ずかしい・・・

 

 

「かんぱーい!!」

 

その後は大人たちが大騒ぎで

何を話したか、あまり覚えてないけど、

とても素敵な時間だった。

 

 

 

 

・・・・・・

 

しばらくしててっちゃんと2人で

片付けをしていた。

 

こういう時に家が近所ってすばらしい。

まさかの大人が4人ともつぶれてもなんとかなるんだから・・・・

 

正直お父さんには文句を言いたかったし、

なんならしばらく口もきかないくらいに怒っていたんだけど、

 

あんなに幸せそうな顔を見せられたら、何も言えなかった。

男ってずるい!!

 

 

『美波、今日はありがとね。みんな喜んでくれたみたいでよかった』

 

 

「うん、私も嬉しかったよ、ありがとう。

 お父さんが色々ごめんね」

 

 

『ううん・・・なんかあらためて美波と付き合えてるんだって思ったよ』

 

 

「うん、私もだよ・・・」

 

 

『美波とずっと一緒にいたいから。

 今日はちゃんと挨拶できて本当によかった』

 

 

!!!

「わ、私もよかったです!!」

 

 

なんか結婚前の挨拶みたいじゃない?

勝手にプロポーズされた気になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ美月、ちゃんと聞いてる?」

 

 

「はいはい。

 ・・・で、両家の挨拶を済ませたと・・・・」

 

 

次の日の朝、

美月に電話で話を聞いてもらっていた。

 

 

「うんうん、そーなの!!」

 

 

「・・・あのねー、休みの朝からそんなのろけ話きかせないでよ・・・」

 

眠そうに言う美月。

 

 

「いや、そういうんじゃなくてさ。

 大変だったっていう話だから」

 

 

「・・・そんなこと言って、

 めちゃめちゃ嬉しかったんでしょうが」

 

 

「そりゃ、そうだけど・・・」

 

 

・・・・・・

 

 

「もー・・・なんなのよ。

 ・・・ていうか森田君キャラ変わりすぎじゃない?」

 

 

「そうなの!!!」

 

 

「えっ?」

 

 

「てっちゃんは前からかっこいいけど、

 今回は特にかっこよすぎて死ぬかと思った!!」

 

 

・・・・・・

 

 

「私を安心させようと笑いかけてくれたりさ・・・」

 

 

・・・・・・

 

 

「本当のプロポーズとかされたら、死んじゃうかも・・・」

 

 

・・・・・・

 

 

「切るわ・・・」

 

 

「ちょっと美月!!もうちょっと聞いてよー・・・」