「お兄ちゃんをメロメロにしたいんです」

 

 

学校からの帰り道、唐突に蓮加がいった。

 

 

『えっと、それってどういう・・・』

 

・・・っていうかずっとメロメロなんですけど。

 

 

「えぇっと・・・

 もっと蓮加を好きになってほしいんです。

 だから蓮加にしてほしいこととか、

 こうなってほしいとかあれば教えてほしい。

 お兄ちゃんがいうことならなんでも

 ・・・その・・・なんでもがんばるので・・・」

 

そんなに顔真っ赤にしながら言われても・・・

こっちまで恥ずかしくなってくる。

 

『蓮加、急にどうしたの?』

 

 

「あのね、お兄ちゃんがこれからどんなに素敵で大人な女の人に出会っても

 蓮加がずっとお兄ちゃんの彼女でいたいの・・・。だから・・・」

 

そういう蓮加は真剣だった。

オレはこんなにも思われていたのか。

なんて幸せ者なんだろう。

 

同時に蓮加を不安にさせていたことに気づいた。

守るって決めたのに。

蓮加の不安を取り除くのはオレの役目だ。

この先もこの役は誰にも渡さない。

思いがきちんと伝わるように・・・

そう思いながら名前を呼んだ。

 

『蓮加・・・』

 

 

「はい」

 

 

『不安な気持ちにさせてごめんね。

 オレはとっくに蓮加にメロメロだから安心してね。

 この先どんな人と出会っても、ずっと一緒にいたいと思うのは

 蓮加だけだよ』

 

 

蓮加は真剣な表情で話しを聞いた後、

 

「・・・でもたまに子供だなーって思ってるでしょ」

 

 

『えーっと・・・

 たまに思う事もあるけど、それ以上に素敵な女の子になったなって

 思ってます。その表情とか仕草とか身体つきとか・・・

 あっ、ごめん。変な意味じゃなくてその・・・』

 

さすがに恥ずかしくなって、蓮加から目をそらす。

 

 

『・・・その・・・つまり、子ども扱いなんかする余裕がないくらい

 蓮加に夢中だってことなんだけど・・・』

 

そこまで伝えて蓮加をみてみると

下を向いて両手で顔を隠していた。

 

 

『あの・・・蓮加?

 ちょっと嫌だった?』

 

ふるふると首を振る。

 

 

「すごくうれしい・・・。うれしいです。

 お兄ちゃんがそういう事サラッと言うから

 結局蓮加がいつもメロメロなんですけど・・・」

 

両手の隙間から除く蓮加の顔は真っ赤だった。

 

 

『オレもすごくうれしいよ』

 

 

本当にここまで好きになるなんて・・・

愛おしくて仕方がない。

 

 

『あのさ・・・手つないでもいい?』

 

オレは自分の願望を口にしてみた。

たぶん初めてのことだ。

 

 

蓮加はうれしそうにオレの手をギュッと握って、

「お兄ちゃんがしてほしいことならなんでもします」

と言った。

 

 

!!!

何という破壊力!

何というパワーワード!!

 

オレは蓮加の小さな手をゆっくりと握り返し、

必死で平静を装った。

 

 

「なんかお兄ちゃんとつながってる感じで幸せ・・・」

 

 

!!!

またかっ!!

無意識でやってるところがたちが悪い・・・