夫が60歳になる頃

私に言った



俺が60になるんだから

もういい加減にしろ

ブランド買うとか

そういうの

いい加減にやめろってことだよ



何言ってるの?

そう聞き返した


だから

俺の同級生

サラリーマンのやつは定年なんだよ

俺も60になるんだから

君もそろそろやめろって事だよ



意味がわからなかった

この人、何言ってるんだろ

あなたは60歳になるだろうけれど

私はまだ50代が始まったばかり

なんで私があなたの60歳に

合わせなきゃならないの?

口にする事はしなかったけれど…

絶望感しかなかった



誰よりも着道楽

好き勝手に国内海外旅行に行きまくり

車も3年毎に新車に乗り換え

機嫌が悪ければサンドバッグ代わりに

私に当たりまくる

労いの言葉なんてなかった

できて当たり前

できなかったら容赦なく詰り倒す

どうせ君なんかが…

君なんて何やったって…

私がやりたいことは

いつだってダメに決まってると言われた

子どもの素行が少しでも気に入らなければ

そんな育て方だからこうなるんだと言う。

綺麗でもない

可愛くもない

スタイルも悪い

頭も悪い

何一つとして気にいるところがない

だから俺の言うことを聞いていればいいんだ!


ずーっとそうだった

あきらめることが普通だった

やっと子育てが終わりになってきて

やっと私はこれからの自分の生き方を

考えられるときがくるのに…?



何をどう話したところで無駄だって知ってる

話したところで何も分かり合えない

私が夫をわからないように

夫も私がわからないのだから


何もかもが合わないと思ってる私

何もかもが合わないと思ってる夫

そこは共通してるんだよね笑



あの絶望感があったからなのか

あらゆる期待をやめた

ほんの少しも期待はしない

期待しないから絶望もない

だから私は快適に過ごせる道を見つけた


私は私でご機嫌に過ごすから

どうかあなたもご機嫌でいてください。

私は私で勝手に1人で落ち込むから

あなたもあなたで勝手に1人で落ち込んでください。私は私で這い上がるから、あなたもあなたで

這い上がってください。



絶望感プラス

2人でいるのにものすごく孤独だったあの頃

今の自分とは別の人みたいだと思う



小さな頃から母に言われてきた


『あんたはほんとうにしぶとい』

『どうしようもなく、しぶとい子だよ』


小さい頃はとても嫌だったけれど

もしかしたら褒め言葉だったのかなぁ…