「大漁だったか?」
明け方、小戸时は数日前に見たままの格好で帰ってきた。

「大量だったよ。 真妃さん、ただいま。」
天文科学のノートをがむしゃらに書き写す ことじを横目に、昨日作って余った炒飯に、汁をぶっかけてレンゲを差す。
パソコン前に丼を構え、左手で鉛筆を、右手で飯をかき込む。
共通の学課はUSBをチラつかせると飯粒と汁で雑多な唇で、奪い取る。
要するに忙しい恋人の世話をするのに余念がない。
今はそういう俺だ。
本当は、服を引き剥がして、抱き潰したいところだが、休眠に入る前に、課題を終わらせる必要がある。
こんなことが重なるにつれ、俺自身も身の振り方を学んだ。
好きな男と同棲するだけの事象じゃあない。
帰る場所を創り、ひたすら待ってやる。
こいつが、ここに戻ってくる限りは、場を整えていたい。
今の俺以外だと ただの普通の恋人だ。
聞くに聞けない、知るのが怖い 臆病者。
けれど、ことじがどんな仕事をしているか、全く気にならない訳がない。
帰ってくるたび 変化を探す。
言葉で探っても、いつだって、
《知らない方が良い。この世の闇を知りたいなら別だが.....》とわざと難しい顔をして生えてもない顎髭を擦る。
だから俺は心で探す。
体の傷が増えていないか、、、、、
爪の間の赤黒い汚れ、、、
靴下の有無、、、
ことじの体内の穢れ、、、、、
あらゆる時間 共に過ごし探していく。
「まきさん おかわりある?この炒飯 ここ数日食った賄いの中で一番美味いわ。」
目を細めて笑う 汚え顔の綺麗な男。
俺もそろそろ食いてえわ、、、お前を。。。。。。
「待ってろ。作ってやる。」
ことじは、かたじけないと手を合わせ、全速力でノートを書き写す。
冷凍したご飯を油に入れて一気に炒める。
ゴチンゴチンと鍋肌が破裂音を奏で、無理やりほだされ悲鳴をあげる。
傷口に醤油を垂らされ、挙げ句に、卵で攻められる。
セックスならまるで強 姦だ。
劫火に焼かれるような褥に狂いたい。
先ずは、こいつを人として満たして、それからだ。
「なあ ことじ、、、大漁だったら 刺身の一皿でも持って帰れよ?」
走らせていた鉛筆をぴたりと止めて、ことじは、コック長の俺を見る。
「......ごめん。まきさん、、、ゲテモノばかり大量だったから! 食えたものじゃなかったんだ。」
なんにせよ、量は多めには違いないと察する。
もう一つ冷凍ご飯をぶち込んで、同じようにフライパンを振る。
余裕のない俺の精神を焼いて溶かして、美味い飯として ことじの口に流し込んでやる。
それが今の俺だ。