人の気持ちは、どちらかに寄る。
正と誤。
その時の感情でどちらにでも傾く。
一度どちらかに寄れば そう簡単に拠りどころを変えることはできない。
僕は一度だって、ぴーを想う気持ちに偏りなどない。
打ちつける大波にのまれたってただの一度も。
例えば 僕たちが仕事の前の晩 一緒に過ごす。一人で来てって言ったのに、何人も友人を引き連れて来る。ガヤガヤと上がり込み、それぞれが自分の言いたいこと、したいことやってる中、僕はぴーとキスしてハグを交わす。皆がやる一連の行動に伴って順番が回ってきたような態度でね。ただそれを待って、じっと視線を送る。ぴーが 片時も離さない携帯電話に、トークを送る。一方的な行動の連続。
なぜ 一人で来ないの?
僕と二人きりが嫌だから?
返信はないが、口パクで、〝あとで〟と離れたソファで僕を見る。
キッチンに一人立ち、クィッティアオセンレックの食べ残しをフォークで弄ぶ。乾いた汁、伸びたセンミー、一つだけ残った肉団子。ちぎれたパクチーが物悲しさを滲ませる。
「トゥーァ、、、、 キッチンの神様、、、 〝あとで〟が少し早かったかな?」
甘い呼び方で、出しっぱなしのライムを手に取り、ウインクをする。
「ぴー、飲み過ぎ注意だよ。ジンもウォッカもぴーには強すぎる。」
ナイフで半分にしたライムの果汁をチュウと吸って、フォークを握った僕の手を握る。
「一人で来たら、ノンは汁無しのクィッティアオですら手を付けられなかったと思うよ。」
「何言ってるの? 僕はそうなりたかったのに。」
昼の太陽を極力避けながら、スリーブレスの襟ぐりを汗で濡らし、顔を歪めて、この国は本当にもう!と怒る貴男に抱き寄せられ、キスをしたいのに。
「仕事あるし、無理させたくない。お互いのために、慎重にならなきゃ。」
カムバックを控えた僕たち。
ぴーの言いたいことも無論、解る。
でも、僕だってセクシャルな気分に昂りたい時だってあるんだ。
次の日、早起きで、昼のフライトだったとしても、 ギリギリまで愛し合って、着るものも取り繕うこともなく、シェイズをかけて人目を遮る。寝不足で腫れた目、マスクで隠した唇は、ぴーが吸い付いて赤く膨れる、まるでダウンタイム中のように見せられればいいのだ。
「ぴーは、、、、、ぴーは僕がいれば十分だ
何もいらないと言ってくれたよね?」
言ったけど、、、、、とライムとジンにガスを入れ、軽くステアする。
「僕ばかりが、ノンを独占できない。これからもずっと。」
目がチカチカする。
これだけ独占しておいて、まだ足りないと言うのか?
「君は当てつけとばかりに、自分をどのシーンにも委ね、魅力を爆発させる。」
飲む?と差す出すぴーの手を払い、ラオカオを手近なショットグラスに注いで飲み干す。
リビングから、冷やかしが飛んでくる。
《やってるのはゲーム?それともピノンのゲーム?》と。。。。。
ヤりたいのは ぴーとだけ出来るゲームだよ ‼
「戻ったほうが良いね。 僕のノンが二杯目のケチカップを叩きつけないうちに。。。。。」
偽らないのは良いことだ。
ただいつになっても、僕は装えるだけの度量がない。
ぴーの性格を考慮してばかりの臆病さは まだ消えない。
ぴーが欲しがってくれるなら、僕のすべてをあげるのに。
ラムよりも曖昧で、スピリッツよりも軽薄。
偽れないのは、僕から流れ出す 体液だけ。
続く。