派遣で秘書をしている。
この4月。他組織別部署に新しく派遣が雇われた。業務は「90%庶務、10%秘書」だという。
なので最初の入り口は、普通の庶務扱い。秘書経験はゼロ。20代半ばの若い女性だそうで、存在は噂に聞いてはいたが、特に挨拶も紹介もないまま数ヶ月が経った。
ところが、新人派遣のボスである「偉い人」がこの7月の人事異動で、経営幹部である「とても偉い人」に昇進した。
たまたまのタイミングである。
こうなると、新人派遣は秘書業務専属で対応が必要になる。恐らく派遣会社への説明もされないままの組織変更なので、わけわからないまま雪崩形式で、彼女の業務内容は庶務から秘書へとシフトした状態。契約変更が必要のはず。
この会社も初めて。秘書も未経験。しかも派遣。
20代半ばの若い女性なので、恐らく別会社での社会人経験すら乏しいと思われる。秘書って何?すら想像出来ていないレベル。
これがどういう状況かというと・・・。
とてつもない大きな組織の中で、自分がどの部署にあたるのかも理解出来ていない状態で、役員秘書としてのメール対応もアボ依頼の対応も、いきなりこなさなければならないことになる。新設の部署なので他に秘書はおらず、周囲は正社員のオジサンばかりである。
タイミング悪く、来月「ものすごく偉い人」の受入をする予定があり、担当する秘書達の中にこの新人さんをいきなり加えるようにお願いされた。
まぁ、はっきり言ってお荷物でしかない。行ったことのないチンプンカンプンの場所では、彼女1人で何の役にもたたない。
入館セキュリティ申請も未。パソコンの持ち出し申請も未。Wi-Fi設定も未。
派遣であっても秘書として雇われてさえいれば、業務の必須事項として部署内で全て整えられた状態で仕事がスタートするはずである。だが、入口が庶務で雇われた派遣なので、すぐにスタートできる業務環境すら整えてもらっていない。
パソコンは出張を想定されておらず、重く大きい。スマホではなくガラケーのみ。通話しかできない。
この会社の秘書は、出張が必須だ。彼女のボスの役職にもなると避けられない。
更に今回は日帰りではなく、前泊対応。その事前準備として日帰り出張もある。
お客様を受け入れるので、当然スーツ着用。旅費はカバーされるが、食費は自分持ちであるし、泊まりの場合、夜の懇親会も設定されるはず。
細かい事だが、デザリング機能のないガラケーの場合、モバイルデータ通信費用もかかる。マップ検索や新幹線予約、電子マナーも必須だからだ。
私の場合秘書生活10年にもなれば、必要なアイテも揃い、パソコン用のスーツケースや動きやすいパンプスやスーツも複数揃えている。
派遣の仕事といえど、結構お金がかかるのである。
お弁当と水筒持参で、会社に出社していれば良かったのとは全く事情は変わってくる。
自分1人で何処にでも行かなければならないので、精神的負担もプレッシャーもある。
彼女は、そのことわかっているだろうか?
加えて言うと、派遣会社から出張に対しての費用補助は、微々たるものだ。距離ごとに拘束費として加算はあるが、悲しいくらい微々たるものだ。移動時間は時給として換算されないので、会社で残業している方が得である。なのに、動きにくい格好での移動も緊張するし、慣れない場所で知らない人に気を遣って、滅茶苦茶疲れる。初対面の人にガンガン自分から挨拶して周らないといけない。
持ち出しの出費と比較しても、身体的負担を考えても、派遣の出張は全く割に合わない。
派遣は雇うのも簡単だが、辞めるのも一瞬だ。
若ければ尚更である。
さあ、この後どうなるだろう。
彼女がどんなタイプなのか、静観していこうと思う。