派遣で秘書をしている。

秘書というからには、担当する幹部がいるわけで、その当たり外れたるや自分の人生も左右する。こちら側には選ぶ余地は与えられず、ただただ選ばれるのを待つのみである。

明らかに男女比が偏った年配のオジサン方ばかりの飲み会では、必ずと言っていい程秘書ネタが話題になる。愛されてイジられる秘書もいれば、とことん悪口の対象になる人も居る。正社員だとて、一度嫌われたら終わりである。その噂は幹部の中でグルグル廻り、挽回することは困難だ。敬遠され引き取り手がなくなる。現に担当から外され居場所が無くなり、他社へ異動した秘書を知っている。他社と言っても大きな括りは同グループ会社なので、噂は付いて回り、結局現在も秘書間でハブられているのだそう。

自分のことではないとはいえ、ベテラン秘書の名前が呼び捨てにされ、悪口の対象になっているのを横で聞いていて、本当に恐ろしくなる。


大企業でたくさんの会社組織から成り立っており、社員人口はものすごい数だが、意外な所で知り合いや同期の繋がりがあり、それをきっかけにして、また繋がりが広がっている。要するに、どこで自分の噂話がされているかわからないということだ。

誰に対してもどんな場合でも、人間関係を粗末にしてはいけないと肝に命じる。巡り巡って自分に返って来るブーメランになる。


私はたかだか派遣社員で、この会社ではまだようやく1年経ったところだが、それでも女性の秘書というだけで、オジサンの飲みの席では格好のネタになる。


敵を作ってはいけない。発言も態度もメールの文章すらも丁寧にしようと思う。

秘書限定で言えば、スキルアップはたいして重要ではない。永く良いポジションで働くことを望むなら、コミュニケーション能力一択である。

何よりまず人間関係を築くことが生き残る道なのだ。