「久しぶり、覚えてる?」


LINEの通知を見て驚く。

1週間前に会ったあいつだ。


共通の友達から私の連絡先を貰ったらしい。

一言断りを入れろと思ったが、もはや後の祭りだ。


「この前ダサイって言ってきた人だよね。見た目ブスなら、ストレートにそう言えばいいじゃん」

「いや、ブスとは思ってないけど。確かに言い過ぎたなと思った。お詫びに食堂で何か奢るよ」


その翌日、食堂で久しぶりに会った。

ブスじゃない、奢る、という言葉に釣られて行ったことは否定しない。


そして、今度は服がダサいと言われないように、持ってる服の中で綺麗めのものをチョイスして着ていった。自分で言うのもなんだが、健気だ。


待ち合わせ場所の食堂前まで行くと、Tくんとその仲間たちが5人くらいで待っていた。

Tくんは私を見るなり、「今日はダサくないな」と呟いた。


「ほんとに奢ってくれるの?」と聞くと、「俺は奢ると言ったら奢るよ」とサラリと言ってみせた。結局ハンバーガーセットを奢ってもらった。


食堂内では、私含め6人でグループ席に座った。席の位置は、Tくんと1番離れた場所だった。


ただ、ハンバーガーを食べている時も、Tくんの仲間の女の子達と話している時も、Tくんは遠目に私をジッと見て(観察して)いた。


隣の女の子が席を外した時、すかさずTくんは私の隣に座ってきた。「なに?」とTくんの方を見ると、Tくんの顔がだいぶ近いところまで来ていた。耐性のない私は、そのままフリーズしてしまった。


「おもしろいなあ」私の様子を見て、さらに顔の距離を縮めてくる。周りから「T、やめなよ」と言われ続け、ようやくTくんは元の席に戻っていった。


異性の顔が近くに来るって、結構ドキドキするんだなと思った。同性とは違う、なんなんだこれは。

Tくんはそこそこカッコイイ部類だったから、それもあるかもだけど。


その時の仲間たちいわく、Tくんはそれから暫く「もなか(私)はおもしろいなあ」と繰り返しボヤいていたらしい。


良くない意味で、面白がられ、目をつけられてしまった私。

男耐性のない女を振り回す、悪趣味な奴だ。


でも当時の私は、未知な世界を面白く魅せてくれるTくんに、少しずつ興味を持ち始めていた。