感想の前に…
角田光代さんの小説は日常から始まっていつの間にか頭の中だけ空に連れてっていかれてて、でも40ページもすれば日常に戻ってて、なぜかいつもの景色が少しだけ綺麗に見えてくるような、そんな短編が多いのでマジで好きなんですよね。
そんで読みやすい。めちゃくちゃ。それなのに面白い。すんごく面白い。1.2年くらい前から本を読み始めたけど凄く良いですよ。気持ちの置き場があるっていうのは無意識の内に救ってくれてると思う。
ぜひ一読していただければ嬉しい。感想の共有はいつでも大歓迎です。
とりあえず6編ある中の3編を読んだんですが、かなり感情を揺さぶられましたね………
一言で言うとあかんって感じ。感情を司る臓器を鷲掴みにされて色んな角度、色んな強さで物理的に動かされたかのようなそんな衝撃とダメージがありました。めちゃくちゃ誉めてます。
では感想の方に…
もうひとつ
ほぼ全てが対照的な二組のカップルが旅行に行く話。
自分にあったかもしれないもうひとつの人生を考える、誰しもがあったかもしれない可能性を夢見る。
今が幸せか、そうでないかに関わらずそういった夢を見ることは人に胸の高鳴りや希望を与えてくれる。
しかし、そんなものはきっとない。それを夢見ることはもし自分が犬に生まれていたらと仮定することと何ら変わらないに違いない。
普通でないことへ向けられる人々の目線、でもどこかで持ってしまう憧れ。
日常と非日常はどこにでもある。
平日と休日。出勤と旅行。
色々な場面に潜む非日常で自分は何を演じるのか、日常での自分とは変化があるのか。
日常を愛して非日常を作らない人、日常をやりすごして非日常を謳歌する人。
色々な人がいてその数だけ理想や思想がある。
誰のどれが正解なんてものはないけど、自分の中のそれを大事にしていきたい。
いつか、自分の理想とした"もうひとつ"が今の道とほんの少しでも重なる夢を見ながら。
月が笑う
いやマジで、これほんと、クッッッッッソ。。。。。。
涙腺をぎゅうっと絞られて涙がにじみ出てしまった。
自分では円満だと思ったいた結婚生活。結婚相手が急に別れを切り出される。相手を不審がった主人公が調査を依頼して相手の浮気の証拠を掴み心の中でほくそ笑むシーンから始まるんですけど。
いや改めて見るとスタートの印象最悪なんですけど、この主人公のね、優しさというか弱さというか、でも悪い感情じゃないと思うような、そんなものにやられましたよ。。。これはうまく言葉で表せない。だから物語にしてると思うんですけど。
この物語は主人公の主観のみで最後まで進んでいくんですけど、その言葉にできない感情を、俺はどうしても肯定したいと考えてしまう。
何も救われてないのに、、、、、、許さない方が案外楽かもしれないのに。お前は。
そんなお前を見て月は笑っているよ。月は微笑んでいるよ。
切なさと人間のこれは、何なんだ、優しさと呼ぶには打算的で、でもその振る舞いに俺は誇らしさすら感じる。
きっと相手からは馬鹿にされて、利用されて、そんなしょうがないほど優しいやつなんだお前は。
お前はきっと許し続けていくんだろう、何もかもを。苦しさをずっと抱えていきながら。許さない十字架を抱えられないお前は理不尽すら許していくんだろう。
でも死ぬその直前に、お前はきっと、きっと微笑んでいると思う。月と一緒に。
心を"緩く"締め付けてくるような、こんな物語初めてでだめだった。
こんなにもリアルで切なくて悲しくて重いのに、どこかほんのすこしだけ甘い、どこか橙色の、冷たいのに温かい物語。ため息が出る。
きっとこれ女性が読んだらボロクソに言われそうな気もする。二回目読むのがちょっと怖い。情けない男による自己陶酔の極みかもしれない。
こともなし
ここまで読んでこの短編集のタイトルを「平凡」にした角田光代さんはまーーーーーーーーーーーーぶっ飛んでらっしゃいますねと思いましたよ。
この話多かれ少なかれSNSをやってる人にとっては劇薬かもしれない 。
選ばなかった誰かに対してではなく、選ばれなかったどの自分よりも今の自分が幸せでないと困る。自分が困る。
いやーー、鋭いっすね。。。鋭利すぎてその傷元に戻るか分からないっすよ。。。注意書とかしてほしかったわ。。マジで。。
いやでも、どこか清々しい。容赦ない一突きって感じでどこか嬉しさすらある。殺しきってくれたような、そんな優しさを感じましたね。
いやほんと、平凡ってタイトルからは想像もつかない中身でしたよ、まだ半分だけど。
ただ、登場人物はいやになるほど平凡なんですよね。ほんと辺りを見渡せばそこらへんにいそうな人達の話なんですよ。
改めて平凡、普通っていうものが如何にイメージでしかない、雲、気体のような不確かなものなのかを突きつけられましたね。あとの3編も楽しみです。