退院して2週間目、術後3週間目になると、傷口はかなり治ってきて、同時に痛みの種類も変わってくる。

傷口自体の痛みより、そこと繋がる筋肉だか筋膜だかが激しく痛い。

自分の場合はとにかく胸全部が痛い。乳腺がパンパンに腫れ上がってひとまわり大きくなっているかのように痛い。

触ると、皮膚表面は痺れていて感覚がないけど、内側はヒリヒリ焼けるよう。

服と擦れても、揺れても、内側と外側から激痛が走るので、胸を持って支えてないと歩けない。

筋肉も筋膜も大きく切ってるんだから、そりゃそうなるよね。


それとは別に、時折、胸のおくを突き上げるような痛みが脈打つように続くこともある。こっちは神経痛かな。


とにかく胸が揺れると痛いので、しっかりと下着をつけてみることにする。

痛い部分を締め付けるのでそれはそれで痛いけど、揺れからくる痛みより幾分かマシ。


傷口は塞がっているので、この痛みは「ただ痛いだけ」のどこも悪くない状態。であれば、守っていても仕方ない。

怖がって大事をとると、身体がこわばって、筋肉も減る一方なので、痛いのは我慢して動き続けないといけない。


それにしても、こんなに痛いと、筋膜が腫れ上がってないだろうかと、心配にならなくはない。


退院して初めての検診で、異常もなく順調だと確認できて安堵。

痛み止めはないか相談すると、「リリカ」という薬を処方された。肋間神経痛に効くらしい。


これで少しでも楽になるならと、夜早速飲んで寝た。薬のせいか、何日ぶりか、深く眠れた気がした。


目が覚めて一番に、痛み止めが効いたかどうか、ワクワクした。……が、天井を見て違和感を覚える。

視点を動かすと、天井が大きく回転したように見えた。トイレに行こうと身体を起こすと、それが気のせいでないことに気付く。

今まで感じたことのない大きな目眩で、真っ直ぐ歩くことも難しい。動く度に視界がグラグラし、そのせいで吐き気が止まらない。

その割に、胸の痛みは改善されていない。

もう、何これ⁈


なんとか携帯を手にして「リリカ」を調べると、副作用含め、危ない薬だと判明。

痛み止めとして、効く人と効かない人がある上に、副作用は頭痛・目眩・眠気で、車の運転はNG。中毒性があるっぽく、止める時に苦労するらしい。

副作用に「目眩・吐き気」があると、必ず具合が悪くなる自分には完全に不向き。

痛みもおさまらないのでなおさら使えない。


酔い止めの薬を飲んでみたものの、後頭部の不快感は抜けず、一日寝込むハメになった

夜飲んで1日潰れるとは、なんて強い薬なんだ「リリカ」はもう絶対飲まない。


翌日、まだ少し頭がスッキリしないけど、職場復帰に向けて、会社に電話をいれた。

「ただ痛いだけ」の状況でダラダラしていても怠けるだけなので。

週末には出社することに決め、所属部署のLINEにその旨を書き込むと、温かい返信が続々と帰ってきた。

近年見たことのない情のある対応に感動早く貢献しなくては、なんて、数年ぶりに思った。

退院後の自宅療養は、自宅でできる傷口へのケア対策に試行錯誤する。


初めの1週間は、医療用ボンドも縫合の糸も残っていて、傷口自体の鈍痛が続いて、ゆるい肌着しか着れない状態。

生活を取り戻す為筋力を取り戻したいけど、

抜糸までは重いものを持つなとか、傷口に負荷をかけるなとか言われたので、ウォーキングを続けるくらいしかリハビリができない。

抜糸までは我慢と、せめて123km歩こうと決めた。


気になるのは医療用ボンドのかぶれ。

前回は派手にかぶれて、傷口よりそっちの方が重傷になってしまい、かなり後悔したので。

夏場ともあり皮膚も熱を持ちやすく、早々に痒くなりだしたので、相方にお願いして無理やり剥がしてもらった。ワセリンを塗ると剥がしやすいとのことで早速実行。

その他、かぶれ用に軟膏を塗りこんでいるとボンドがボロボロと取れてきたので、これも有効かもしれない。

とにかく早く剥がしてよかった。剥がして分かったけど、ボンドのあった部分だけ赤くなっていて、退院1日目で大分かぶれてた。


あと、術後必ず困るのが「睡眠」。痛みで度々目が覚めて熟睡できない日々が続く。

1週間たったとこで、それは変わらない。

今回は肩甲骨に沿って傷口があるので、仰向けに寝ると圧迫されて痛い。横を向いても腕の重みで背中が引っ張られて痛い。

うつ伏せだと、肺が圧迫されて咳込んでしまうし、もうどう寝たらいいのか分からない。

日によっては、肺の中が、液体が溜まったような感じにゴボゴボとして、違和感と咳で眠れない。

痛みで目が覚める時は、すでにかなり痛くなった状態なので、簡単には元に戻らず、とりあえず寝てはいられない。一旦起き上がって、痛みが落ち着くのを待つしかない。


病院は介護用ベッドなので、上半身を起こして座位で寝ることで回避していたけど、家だとコレができない。

あまりに辛くて、夜中なのに相方に弱音を吐いた時、枕を積み上げて即席の背もたれを作ってくれた。これがとても功を奏して、ひとまずもう一眠り出来た。感謝でいっぱいなのと同時に、つもりつもった辛くわびしい思いがあふれて、涙が出た。


前向きに腹を括って走っていても、心の隅っこには「なぜ」という思いがなくはない。

常に、あえてそれを見ないよう気をつけているけど、終わりの見えない痛みにひたすら耐え続ける日々は精神がすり減らされてしまい、まれに気持ちが溢れてしまう。


「なぜ」なんてものは私の人生には付き物で、言っても仕方ないことだし、いつもの様に歯を食いしばって、立ち上がるしかないなぁと、自分で尻を叩くイメージをする。


ドレーンもとれて、レントゲンも良好、いよいよ退院。

窓いっぱいに広がる素晴らしい展望もこれが見納めかと、感慨深く荷物をまとめた。

一週間ぶりに化粧の為に鏡を見て、ケア不足の肌にゲンナリ🌀時間をかけて、見てくれの修復に尽力。

退院後初めての昼ご飯は何がいいだろうとか、スイーツなら何がいいかとか、想像するだけで気持ちが上がる。


退院前に、相方も一緒に術後結果の説明を聞くとのことで、面談室へ。

切除した腫瘍の分析結果は、やはり癌細胞で、それも前回のものとは違い、7割型悪質なタイプという芳しくない結果。

「悪質」というのは、この手のものが含まれた癌は「再発や転移が多く見られる」ということ 

現段階ではステージ1の初期の方なので、切除すれば終わるはずだけど、このタイプの細胞が見つかったということ自体が問題で、つまり、新たにまた発生する可能性があるということ。

通常このステージで抗がん剤は不要だけど、不安であれば飲み薬タイプの弱いものを使うことも出来ると、選択肢をいただいた。

自分の中ではインフルエンザの予防接種と同じイメージで、必ずしもその癌を抑えられるとは限らないし、そもそも再発するかどうかも分からない状況で、やるかどうか。非常に悩ましい

まあまずは今の傷を治すのが先決なので、ひとまずは今のことだけを考えることにした。


病院を出る頃にはちょうど昼飯時で、相方が焼肉屋のカルビ弁当を大盤振舞いしてくれた。

病院では魚か鶏肉しか出なかったので、ものすごく美味しかった。


病院内とは違い外は猛暑で、リハビリの「散歩」ができない為、近くのショッピングモールまで行くことに。

が、久々に来たのでつい普通に店をのぞいてしまい、全然散歩なってない。

相方の為に入ったメガネ屋で、たまたまかけてみたエモめのメガネがあまりに似合いすぎて、イイなぁと思っていたら、相方が買ってくれた

装飾品は常に自分で買っていたので、こんなカンジに突然買ってくれると、サプライズプレゼントみたいでとても嬉しい😊


その後もペットショップをのぞいたり、ファッションチェックをしたり、クレープ買ったり、もはやリハビリではなかったかもしれないけど、時間に縛られず無心で相方とブラブラした時間は、ここ近年ないくらい何とも癒された。

サングリア風のソーダに入ったフルーツが食べたくて、肺が痛いことも忘れ全力で太いストローに吸い付いていたことに、自分でもビックリした。いやしいというより、今この時間を余すことなく楽しみたかったんだなぁ。


自分の夏休みは今始まったと感じて、病気療養期間とはいえ、心躍った。