気持ちは
酷く、荒んでいるのだけれど
そこは、相当に付き合いの長い奴にしか
"見えない"ほどには

善良な…寧ろ、弱者を演じてはいられる





たぶん
今の自分の内側を暴けたら
どんな慈善家も
どれほどの聖人も
目を背けるだろうな。




大事なものを
喪うことを思えば

善良な弱者を演じるのは容易い

自尊心なぞ
幾らでも捨てられるんだ




獣は、ドコまでも
獣でしかない




仮面どころか
人間の皮も纏えず


何もかもを
喰い千切りそう





体液に塗れたベッドを祭壇に

祈りを捧げても



愉悦に濡れた神は
堕落に気付くことなく
喘ぐんだ


神を爪弾く
堕天の宵




何だろうな。

頭の芯が
異様に冴えて
眠気が訪れる気配もない。


煙草を燻らせ
夜の闇を照らす
月を見上げれば
真昼のように
明るくて
笑みが零れた


つながれる
つながれる

セカイがサカサマなのか
ボクがウラオモテなのか


黙示録が告げる
黒でも白でもないものは
真っ赤に
塗り込められて
喜劇のように吊される

サカサマなセカイを見つめたら
ウラオモテなボクの真実が
チラリと垣間見えて

神の目論見は
塵芥より粉々に砕け散った
悪魔は高笑うが
人の方が狡猾なのに
気付かない
惹かれる


齧りたい
齧られたくない

色付いた花が
身悶えしている



紫陽花路



目映く零れ落ちる
天の泪
厳かに受け止めよう


腕を伸ばし、広げて
顔を背けずに


この身の全てが
泪に
濡れても
恐れずにいよう


黄水仙




痛みを抱えるごとに

にこやかに、自分を掲げている


簡単なようでいて

とても、難解な行為だと

誰の目にも、明らか


その『つよさ』を持って

生まれたかった


もしも、僕が

その『つよさ』を持っていたなら

あの時も

あの時も

取り返しの付かない苦しみから

大切なひと達を

守ることができただろうに…






      濡れた…


零れそうな雨粒に
唾を飲む

キミから零れる甘い雫のよう

思わず
舌で、舐め取りたい
衝動に
駆られた僕

淫らな夢想で
キミを穢すばかり…




闇を手繰るように山道を踏みしめて往く
池の傍で、夜空を見上げた

水面を見下ろすと地上に堕ちた星たちが
小さくか細く
『天へ還りたい』と漏らす
もう還ることが叶わないのを知りながら
堕天な僕にしか聞こえない
哀切極まる呟きは
天に住まう者には、届かない




凍りついたように動かない水の面(オモテ)

見えそうで見えない水底は
まるで、誰人かの心

ゆっくりと沈み込んで
溶け合ってしまえば
垣間見などせずにいられるのにね

ああ、でも
全て見えてしまったら
心が萎えてしまいそうな気もするんだ
見えそうで見えないままが
イイのかもしれない