私には実の母の様に慕う
北海道の母がもう1人居ました


子供達と出掛けたり
自分が落ち込んで凹んでいる時
新しい報告をしに出掛けたり
身寄りが無い為に手術の際には
私が保証人になるなど

喜びも悲しみも一緒に包み込み
支えられ元気を分けてくださる身内の様な方でした

ほぼ半世紀近くを厳しい環境下で1人で過ごす
強く、そして深い情を持つ方で

久々に温泉にでも誘おうとし
昨日連絡を取ると連絡が取れず
一度きりお会いした故人の友人Nさんに連絡をすると

一昨年、肺炎によって他界されたと告げら

Nさんより当時の話しを聞かされると
身寄りの無い故人の為に色々と尽くして下さった様子で、どうしても故人の話しが聞きたく
そして自分の気持ちにも整理をつけたくて
お会いして頂く時間を本日頂きました



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お時間を作って下さったNさんもまた女性の1人暮らしです
車を運転出来る歳では無く
故人と所縁の有る温泉へ赴きました


里山に囲まれた静かな場所に有る温泉で
空から降りてくる小さな雪は懐かしい様な
刹那い様な.......
ただただ静かに次から次から下り続けます









ここね数年前に送迎バスが無くなってから
なかなか来れなくなってね
それでもどうしても出掛けたいと彼女に言われて
二人でタクシーを拾って1度来たわ
彼女にとって5千円程のお金も
暮らしていくお金として大きかったと思うの
お湯に浸かるとね命の洗濯になるわって
長い事二人で浸かったのよ


故人は一昨年に
Nさんはその1年前に互いに同じ郷に嫁いだ地から
離れていた

『出て行く者は使い捨てだ』
郷の者一人が放った言葉に二人共、心を痛めていた事を以前、私も聞かされていた



お二人共、好きで離れた訳では無い

車も運転出来ない老女二人である
厳冬の厳しい冬には一人で広い敷地を
雪投げをせねば成らず
病院へ行くにもバスの本数は少ない
友人が居ない訳では無かった
でも迷惑ばかりも掛けられぬと街へ出るしか
無かったのです




Nさんが故人の話しを淡々と綴る

貴女は故人と同じ東京出身だから話しも合って
東京の話しもしたのじゃない?

故人はそんなに深く東京の話しは私にしなかった
それには北海道の厳しい暮らしより
もっと辛い記憶と大切な人を残して来て居たからだと思います

東京の話しを最後にして下さった時は
堰をきるように
ご主人との出会い、ご主人と再婚される馴れ初め
ご主人と北海道へ来る時に起きた出来事
北海道へ来てからの事

どれも決して笑顔でうなずける話しでは無かった


私もね嫁ぎ先を出てから入院中の主人が亡くなり
嫁ぎ先の地で葬儀を行った時にね
嫁ぐ前の地の友人や嫁ぎ先以外の人達が
来てくれた時
郷の人達の一部は目を合わせてくれ無かったわ

それでも故人や一部の友人達には
親切にされて本当に心が救われたの
でも郷を離れたらその地の人達は薄情よ冷たいものだわ

Nさんは時折、離れた郷の事を口にしては
こんな事ばかり言ってはダメねと遠くを見る




私は珈琲が美味しくて有名なお店へ行きませんかと誘うと
もう何年も行ってないわいいの?と笑顔になって下さいました







ここも少し変わったかしら
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ウェルカムモニュメントの雪をホウキで形どる
1人の男性にNさんの目が止まる


何処かでお会いしてませんか


先程まで郷の地名を口にしなかったNさんが
男性に声をかける
この男性は郷の人じゃないの?大丈夫なの
私を一寸の不安が過ぎります


この方は今過ごしてる地で知り合った男性で
互いに嬉しそうに語り始めます


お連れして良かった
徐々にでは有る様ですがNさんは
新たな地で知人友人を築きあげていた様子


足元が滑るからお気を付けてお出かけ下さい
と手を振る男性に送られて
私達はお店に入りました

Nさんは
カレーがお好きとの事でカレーを二人で食べ
初めて挽くミルに喜び

どうしてこんなにまで親切にしてくれるのか
私に尋ねてきました

私も応えます
実は私も東京出身だと住む地の人に言うと
素っ気無い態度を取られた事も有り
今の会社に所縁の有る方からも
あんたはよそ者と言われた事は忘れないかもしれない
それに故人が繋いでくれた縁ですから
大切に紡ぎたいじゃないですか



Nさんがバックから故人の写真を出して
見せてくれ話しは
故人は生活保護の為にご主人が眠る郷の墓には
入れなかった事
置いて来てしまった大切な人と連絡が取れたけど
最期に来てくれなかった事を告げてくれました
私は抑えてた感情が急に緩み涙が止まらなくなってしまいました


私これから故人の分まで楽しむわ
だから宜しくね
Nさんは私に気を使って下さったのかな
涙を浮かべて嬉しいと笑顔をで語り
私も故人への気持に少し区切りがつくような言葉
だった様な気がしました

Nさんと故人の所縁の地
嫁ぎ先の郷は私に至っては、かつては友人も居て
多くの思い出が詰まる場所
珈琲を飲みながら
Nさんも懐かしい話しへと変わっていく


やがて
此処を好きになってくれて嬉しいわ
嬉しいわへと変わっていた


人は一人になる時
どれ程寂しくなるのでしょう
私には未だ経験が無いので分かりません
でも
辛い場所だった時も
やはり何処かで懐かしい人の温もりが有った場所は
時間の経過と共に帰りたい郷なのだと思える様になるのかもしれませんね





故人からは新たな繋がりを頂き
もう一つ自分もいつか辿るであろう自分の郷になる場所の事を教えて貰えた様な気がしました



北海道のお母さん
ありがとう
形見のオルゴールと一期一会を大切にしていきます