幼少期、母は魔女を自称した。
鼻筋が長く、髪の毛はくるくるしていて、確かに魔女の風貌だ。
それに普段私達姉妹には出来ない事、知らない事を素知らぬ顔でやってのける。
母は本当に魔女なんだと思った。
実は魔法が使えたり、私達をいつか取って食べようとたくらんでいたり、
そんな空想をしていた気がする。
母は優しい魔女だった。
母親としての芯が強い女性だった。
子供のため、家族のため、真摯に問題と向き合う人間だった。
いつも客観的に物事を俯瞰してみる事が出来て、落ち着いた、理性的な印象があった。
こちらが何かしでかした時にすぐ取り乱して手を上げる父とは対照的だった。
一層母が優しくて心強い存在に感じていた。
時が過ぎて、大人になった。
母は別に魔法が使えるわけではなかった。
母は別に取って食べようなんて思ってもいなかった。
でも私は、母はやっぱり魔女だったと、
大人になってから、気が付いた。
母は、思えば、長らく私達姉妹に呪いをかけていたのだ。
父を嫌悪し、母を慕う呪いを。
母にとっては、それは呪いではなかったかもしれない。
愛情だったかもしれない。
私達に向けた愛情なのか、あるいは