「千万人と雖も吾往かん」 高須院長の愛知県・大村知事リコール運動、成立すれば日本の戦後政治に風穴を開ける一大事。 河村たかし名古屋市長も参戦、吉村大阪府知事も支持を表明。
2020.7.2   夕刊フジ(産経新聞)より ⇒ 

    
 

    

始まりは6月1日(月曜日)の夕方近く、一本の電話からだった。

 

着信画面を見ると作家の百田尚樹さんだ。

            
「急な話なんやけど、明日の午後、高須先生が名古屋で大村知事リコールの記者会見するんやて。
有本さん、現地、行かれへんよな」
おなじみの高須克弥院長が、昨年夏の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」の件で、
愛知県の大村秀章知事に怒り心頭、リコール(解職請求)を考えておられることは、院長のツイートなどから察していた。

      
それにしても急な展開だ。今日の明日。少し調整の時間を…と答えようとすると、それを見透かしたように受話器の向こうから、「(評論家の)竹田恒泰さんは『行く』と即答してくれたで」」と百田さんが一言。

             

思わず、「わかりました。『私も参ります』と高須先生にお伝えください」と答えていた。
翌日、会見場に着いてみると、科学者の武田邦彦氏もおられた。

            

高須院長の応援団として、インターネット番組「真相深入り 虎ノ門ニュース」のレギュラー出演者が期せずして顔をそろえた。
私は会見を取材するつもりで出かけたのだったが、その場の雰囲気に圧され、高須院長と並んでメディアの質問を受ける側に座ることになってしまった。

             
会見の様子と、その後1カ月間の高須院長の見事な闘いぶりは夕刊フジでも折に触れ報じられているので、ここではなぞらない

ただ、肝心ないくつかのみ、あえて強調しておきたい。
まず、都道府県知事のリコールは、過去に例がない。

数百万の有権者に「イエス・ノー」を問う知事のリコールは、その運動が惹起(じゃっき)されたことすら例がないのだ

もし成立すれば、史上初、日本の戦後政治に風穴を開ける一大事である。が、その重大性に「メディアの皆さま」が、いまひとつピンときておられないように見える。
第2のポイントは、今回の「争点」だ。
高須院長や私たちが問題視しているのは、端的に言えば、極めて不適切な公共事業であり、税金の使途である

前代未聞のとんでもない公共事業をゴリ押しした大村知事の行政手法を「許せん」と、高須院長は一貫して主張している。
ところがこれを、あたかも「表現の自由」を認めない偏狭な考えの人々が騒いでいるかのようにミスリードするメディアがあるのは甚だ残念である。もちろん「朝日新聞」である。

 
日本国憲法第一条で、「日本国と日本国民統合の象徴」とされている天皇陛下であられた昭和天皇の写真をバーナーで燃やし、灰を足で踏みつける。良識のある日本国民なら正視に耐えないこの表現でも、私的に行う分には強制的にやめさせることはできない。
しかし、公金を注ぎ込む公共の場に展示するものとして、ふさわしいと言えるのか。それを改めて愛知県民に問おうというわけだ。

      
      

加えて、昨年10月3日発行の本コラムで書いたとおり、この企画展のプロセスには重大な疑惑がつきまとっている。

 

 

慰安婦像など、不適切とされそうな作品の存在を「隠して」文化庁に補助金申請したのではないかとの疑惑が完全に払拭されたとは言い難い。一部関係者の証言どおりなら、補助金詐取かとも思えてしまう。
ところで、高須院長はがんの闘病中でもある。その体でまさか、蒸し暑い名古屋の街頭に自ら立ってハガキ配りまでするとは思わなかった。

文字通り命を削って、「日本のため」「郷土・愛知県の尊厳のために」闘っているのだが、院長に悲壮感はない。
「戦いの火蓋は8月1日に切っておとされます。(中略)(署名受任者のハガキに署名して)身内となった皆さん、僕の総攻撃の合図を待ってください。僕は一瞬でリコールを成立させ、勝負をつけるつもりです。歴史に残ります」
院長のこのツイートにしびれたのは私だけではないだろう。風は少しずつ、しかし着実に変わってきている。
高須院長は2日、県議会での陳述に立つ。

まさに「千万人と雖(いえど)も吾(われ)往かん」の気概を示されるに違いない。とかく群れるのが好きな永田町の皆さまよ、よく目を開いて高須院長の闘いぶりをご覧あれ。
             

■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。