終わりの無い残像 21
うっすらと汗をかくくらいじめっとした空気の中で
はしゃぎきった私達は花火がなくなったのと同時に
喉の乾きを思い出し水分補給するため
なごり惜しむ事も無く河川敷から車ごと姿を消した。
少しエアコンの効いた車の中で誰一人帰る様子が無いとわかると
思い出したように桜木君から
「美香ちゃんのお父さんにビール買ってたよね。届けないと。」
「そうだった。じゃあみんな私の家でどお?」
「いいね~♪」
全員一致で又コンビニへ追加の飲み物と軽食を調達しに立ち寄った。
数時間の間に3回目のコンビニ。
最初に桜木君と二人で来たコンビニの時間が
まるで違う日かと思うくらい状況が変わっている。
それでもその状況が嫌ではなくむしろ友達同士で遊ぶ楽しさに
桜木君の手のぬくもりもいつしか薄らいでいった。
私の家に着くと寝る寸前だった父に3人は挨拶をし
そして桜木君から父に6本入りの缶ビールが渡された。
既に冷たさを失っているビールを手渡された父は
笑顔でお礼を言った後、冷蔵庫にビールを入れてから寝室に姿を消した。
父の寝室から一番遠い私の部屋に4人が揃うと
オアシスという言葉が最もはまるくらいの気持ちで揃って缶ビールの栓を開けた。
一呼吸おいた後
「あ~~」
同じ響きに4人の笑い声が部屋の空気を一気に明るくした。
はしゃぎきった私達は花火がなくなったのと同時に
喉の乾きを思い出し水分補給するため
なごり惜しむ事も無く河川敷から車ごと姿を消した。
少しエアコンの効いた車の中で誰一人帰る様子が無いとわかると
思い出したように桜木君から
「美香ちゃんのお父さんにビール買ってたよね。届けないと。」
「そうだった。じゃあみんな私の家でどお?」
「いいね~♪」
全員一致で又コンビニへ追加の飲み物と軽食を調達しに立ち寄った。
数時間の間に3回目のコンビニ。
最初に桜木君と二人で来たコンビニの時間が
まるで違う日かと思うくらい状況が変わっている。
それでもその状況が嫌ではなくむしろ友達同士で遊ぶ楽しさに
桜木君の手のぬくもりもいつしか薄らいでいった。
私の家に着くと寝る寸前だった父に3人は挨拶をし
そして桜木君から父に6本入りの缶ビールが渡された。
既に冷たさを失っているビールを手渡された父は
笑顔でお礼を言った後、冷蔵庫にビールを入れてから寝室に姿を消した。
父の寝室から一番遠い私の部屋に4人が揃うと
オアシスという言葉が最もはまるくらいの気持ちで揃って缶ビールの栓を開けた。
一呼吸おいた後
「あ~~」
同じ響きに4人の笑い声が部屋の空気を一気に明るくした。
終わりの無い残像 20
次から次へ放たれる火の連鎖の中で
明らかに花火と違う光が走った。
いつの間にか恵が使い捨てカメラのシャッターをおしていたのだ。
「あと数枚残っていたからちょうどよかった。
持ってたんだよね~、たまたま。
は~い、こっち向いて~」
私と桜木君の距離が急に縮まり笑顔もドキドキも
なんだかわからないくらい嬉しくなった。
写真の中で笑う二人の姿は
白い煙の匂いも飛び散る火花の温度も
そのまま伝わりそうなくらい
真っすぐな同じ想いがあふれていた。
明らかに花火と違う光が走った。
いつの間にか恵が使い捨てカメラのシャッターをおしていたのだ。
「あと数枚残っていたからちょうどよかった。
持ってたんだよね~、たまたま。
は~い、こっち向いて~」
私と桜木君の距離が急に縮まり笑顔もドキドキも
なんだかわからないくらい嬉しくなった。
写真の中で笑う二人の姿は
白い煙の匂いも飛び散る火花の温度も
そのまま伝わりそうなくらい
真っすぐな同じ想いがあふれていた。
終わりの無い残像 19
平坦な道からヘッドライトの灯りしか頼りにならないデコボコ坂道を登りきると
月明かりに照らされ
川の流れがキラキラと
深さを感じさせないくらい軽やかに
そして華やかに私達を歓迎しているかのような景色が広がった。
登りきった坂をガタガタと下ると
日曜の昼間は家族連れで賑わう河川敷は
まるで予約でもしたかのように人影はなく
滑り込むように入り込んだ車は丁寧に停車し
そして私達は勢い良く車から飛び出た。
まるで子供が新しいオモチャをむさぼるかのように
花火を分け合い点火した火を奪いあった。
湿った夏の入り口を感じさせる空気も
川のせせらぎも
月の明かりでさえも
私達のはしゃぐ姿の脇役だった。
桜木君と私は
何度も何度も数えきれないど
目を合わせ笑いあった。
月明かりに照らされ
川の流れがキラキラと
深さを感じさせないくらい軽やかに
そして華やかに私達を歓迎しているかのような景色が広がった。
登りきった坂をガタガタと下ると
日曜の昼間は家族連れで賑わう河川敷は
まるで予約でもしたかのように人影はなく
滑り込むように入り込んだ車は丁寧に停車し
そして私達は勢い良く車から飛び出た。
まるで子供が新しいオモチャをむさぼるかのように
花火を分け合い点火した火を奪いあった。
湿った夏の入り口を感じさせる空気も
川のせせらぎも
月の明かりでさえも
私達のはしゃぐ姿の脇役だった。
桜木君と私は
何度も何度も数えきれないど
目を合わせ笑いあった。
終わりの無い残像 18
助手席に茂田君、そして後部席の私は
運転席の桜木君と茂田君の間にやや身を乗り出して
近況を話したり学生時代の話をしたり
車中は三人の笑い声が随所随所で響き渡った。
桜木君と二人だけの空間よりちょっと気持ちが楽になったのは
少しだけ学生の時に戻った嬉しさだったのかもしれない。
桜木君が選んだ花火をする場所は茂田君宅から車で10分位の河川敷だった。
河川敷までの途中、花火を買おうと三人でコンビニへ立ち寄ると
見覚えのある小柄で何となくぽっちゃり...
なんとそこに恵が飲み物を物色していた。
もちろん私も恵もびっくり!
恵は私と同じく桜木君と茂田君と幼馴染み。
今この三人のいきさつを知らない恵は二人の顔を見て更にびっくり!
最近、恵の仕事も忙しくなかなかゆっくり会う時間もなかったため
私と桜木君の事は何となく電話で話していた程度。
恵がこの後の予定がない事を知り半ば強引に花火に誘ってみると
「いいよ~♪」
とにやけ顔で誘いにのってくれた。
四人を乗せた車は
どんどん街の灯りが遠くなる中でも
賑やかな声で包まれたまま
車ごと一気に河川敷まで転げていきそうなくらい弾けていた。
運転席の桜木君と茂田君の間にやや身を乗り出して
近況を話したり学生時代の話をしたり
車中は三人の笑い声が随所随所で響き渡った。
桜木君と二人だけの空間よりちょっと気持ちが楽になったのは
少しだけ学生の時に戻った嬉しさだったのかもしれない。
桜木君が選んだ花火をする場所は茂田君宅から車で10分位の河川敷だった。
河川敷までの途中、花火を買おうと三人でコンビニへ立ち寄ると
見覚えのある小柄で何となくぽっちゃり...
なんとそこに恵が飲み物を物色していた。
もちろん私も恵もびっくり!
恵は私と同じく桜木君と茂田君と幼馴染み。
今この三人のいきさつを知らない恵は二人の顔を見て更にびっくり!
最近、恵の仕事も忙しくなかなかゆっくり会う時間もなかったため
私と桜木君の事は何となく電話で話していた程度。
恵がこの後の予定がない事を知り半ば強引に花火に誘ってみると
「いいよ~♪」
とにやけ顔で誘いにのってくれた。
四人を乗せた車は
どんどん街の灯りが遠くなる中でも
賑やかな声で包まれたまま
車ごと一気に河川敷まで転げていきそうなくらい弾けていた。
終わりの無い残像 17
桜木君の話に耳を傾けていると
車が減速しだしゆっくり一軒の家の前で止まった。
茂田君の家の前だ。
今の時代のハイブリッドエンジンだったら
車の存在が分からないと思うくらい丁寧に
そして私の身体は一つも揺れる事なく停止した。
もしかして夜だしご近所の目を気にして
ゆっくり止まっただけかもしれないのに
私に対してのやさしさとストレートに感じてしまうところは
間違いなく淡い恋を体感している証だった。
窓外は深い時間の夜でもないのに薄暗い街灯が
ドアの外に出るなよと言わんばかりに
やっとのおもいで発光している。
桜木君はハンドルを抱え込むように
フロント硝子の上の方を見ながら
「おっ、茂田居るんだ。
ちょっと待っててもらっていい?」
どうやら茂田君の部屋は2階らしい。
携帯がある時代ならまだしも
この時代はいちいちこうして突然のお誘いは
玄関までお伺いをたてるのである。
数分後、桜木君とその横に同じような体型の茂田君が
笑みを浮かべながら車の方へ歩いてくる。
何年かぶりなのに遠目で見てもすぐ分かるくらい
茂田君は変わってなかった。
薄暗い街灯でも2人の表情がはっきり分かるような距離になったタイミングで
私は車のドアを開け
「久しぶり~! 変わってないね!」
無意識に出来る無難な笑顔とややトーンの高い声で
相手の笑顔を引き出す。
自分が相手に対して安心したい 唯一お披露目できる本能だ。
「美香ちゃんもかわってないね。
まさか今日、会えるとは思わなかったよ!」
そりゃそうだ。
少なくても私はそんな予定じゃなかった。
「どうする?」
桜木君が私の顔を見てそして茂田君を見る。
「どうするって?あれ?桜木なにも予定無いの?」
私も茂田君も同じ目をして桜木君を見ている。
ただ私と茂田君の内心は当然違う訳で
久々に茂田君と会うのと桜木君と会うのとでは
意味が違い過ぎる。
なのにどおして??
「ん?家には来ないの?」
と乱れた気持ちを悟られないようなるべくやさしく問いかけた。
「何だかさぁ、2人に久々に会うのに
いきなり家に入るより外でさ...花火とか...どぉ?」
2人って。。。だったら最初から誘えばよかったのに。
コンビニまでのこと、コンビニでの買い物。
何だったの??
ふつふつとそんな思いが沸いてくるのである。
「桜木が花火って...
いいよ! やろうよ!」
何だかにやけながら言う茂田君の表情は
普段こんなこと言う男じゃないんだよ。
美香ちゃんが居るからだよ。
と言わんばかりに私と桜木君を見ていた。
感情をあまり出さない桜木君も
どことなくはしゃいでいるように見える。
戸惑う理由は自然になくなり
三人で乗り込んだ車は一瞬にして
薄暗い街灯から姿を消していった。
車が減速しだしゆっくり一軒の家の前で止まった。
茂田君の家の前だ。
今の時代のハイブリッドエンジンだったら
車の存在が分からないと思うくらい丁寧に
そして私の身体は一つも揺れる事なく停止した。
もしかして夜だしご近所の目を気にして
ゆっくり止まっただけかもしれないのに
私に対してのやさしさとストレートに感じてしまうところは
間違いなく淡い恋を体感している証だった。
窓外は深い時間の夜でもないのに薄暗い街灯が
ドアの外に出るなよと言わんばかりに
やっとのおもいで発光している。
桜木君はハンドルを抱え込むように
フロント硝子の上の方を見ながら
「おっ、茂田居るんだ。
ちょっと待っててもらっていい?」
どうやら茂田君の部屋は2階らしい。
携帯がある時代ならまだしも
この時代はいちいちこうして突然のお誘いは
玄関までお伺いをたてるのである。
数分後、桜木君とその横に同じような体型の茂田君が
笑みを浮かべながら車の方へ歩いてくる。
何年かぶりなのに遠目で見てもすぐ分かるくらい
茂田君は変わってなかった。
薄暗い街灯でも2人の表情がはっきり分かるような距離になったタイミングで
私は車のドアを開け
「久しぶり~! 変わってないね!」
無意識に出来る無難な笑顔とややトーンの高い声で
相手の笑顔を引き出す。
自分が相手に対して安心したい 唯一お披露目できる本能だ。
「美香ちゃんもかわってないね。
まさか今日、会えるとは思わなかったよ!」
そりゃそうだ。
少なくても私はそんな予定じゃなかった。
「どうする?」
桜木君が私の顔を見てそして茂田君を見る。
「どうするって?あれ?桜木なにも予定無いの?」
私も茂田君も同じ目をして桜木君を見ている。
ただ私と茂田君の内心は当然違う訳で
久々に茂田君と会うのと桜木君と会うのとでは
意味が違い過ぎる。
なのにどおして??
「ん?家には来ないの?」
と乱れた気持ちを悟られないようなるべくやさしく問いかけた。
「何だかさぁ、2人に久々に会うのに
いきなり家に入るより外でさ...花火とか...どぉ?」
2人って。。。だったら最初から誘えばよかったのに。
コンビニまでのこと、コンビニでの買い物。
何だったの??
ふつふつとそんな思いが沸いてくるのである。
「桜木が花火って...
いいよ! やろうよ!」
何だかにやけながら言う茂田君の表情は
普段こんなこと言う男じゃないんだよ。
美香ちゃんが居るからだよ。
と言わんばかりに私と桜木君を見ていた。
感情をあまり出さない桜木君も
どことなくはしゃいでいるように見える。
戸惑う理由は自然になくなり
三人で乗り込んだ車は一瞬にして
薄暗い街灯から姿を消していった。
終わりの無い残像 16
コンビニを出て目の前に止めてある桜木君の車は
ほんの数歩で乗り込める距離だ。
その数歩の足取りが
軽やかではない理由は
桜木君の口から私に対しての
気持ちが言葉として一つもないからだった。
母の影響なんだろうか。。。
父が無口なことで
「何を考えているのさっぱりかわからない。
言葉で表現してくれないとわからないじゃないの!」
よくキリキリと言っていたセリフだ。
このセリフの時は必ず早口になっていたのをふと思い出す。
結局、父にない姿を他の男に求めて
家を出た母を思うと知らず知らずに
私はああはなりたくないと
女としての母を自分と重ねてしまう事が多くなってしまった。
当然、桜木君の事も生涯のパートナーとして妄想したりすると
母の早口のセリフが頭をよぎり
急に隣にいる自信がなくなり
気持ちがどんよりしてしまうのだ。
2人とも車に乗り込み
桜木君はガチャッとキーを差し込みそれを回しながら
「そういえば茂田憶えてる?
実は今日、誘いがあったんだよね。
あいつ家に居るのかなぁ。」
「茂田」とは中学生の時の同級生で
私は中三の時に同じクラスだった。
茂田君自身はこれといって目立つタイプではなかったが
スラリとスリムな体型と小さな顔つきは
桜木君とどことなく似ていて
2人で居る時は何気に女子がざわめくような目立ち方を
していた事は記憶にあった。
桜木君と茂田君は中一の時に一緒のクラスになって以来
今まで何かと会っている友達の一人らしい。
「ちょっと茂田の家の前通っていい?」
「うん。」
桜木君は理由も話す事無く私の家とは逆方向に車は走り始めた。
車中では桜木君が茂田君ともお互い忙しく
しばらく会っていないという事や
今も実家に居る事。
茂田君の家族構成や仕事の内容。。。
私に自分の長年の友の情報をあれやこれやと話してくれた。
それまでの桜木君との電話の会話で
こんなにしゃべる姿をイメージできなかっただけに
思わず前を向く事を忘れるくらい桜木君を見つめてしまった。
時折、重たくどんよりする気持ちは
こんな瞬間に雲の隙間から少しだけ日が差すのであった。
初めてつないだ手の温もりが言葉よりも遥かに大切で
それが桜木君にとってストレートな私に対しての愛情表現だったことを
後に知る事になるなんて思いもせずに。。。
ほんの数歩で乗り込める距離だ。
その数歩の足取りが
軽やかではない理由は
桜木君の口から私に対しての
気持ちが言葉として一つもないからだった。
母の影響なんだろうか。。。
父が無口なことで
「何を考えているのさっぱりかわからない。
言葉で表現してくれないとわからないじゃないの!」
よくキリキリと言っていたセリフだ。
このセリフの時は必ず早口になっていたのをふと思い出す。
結局、父にない姿を他の男に求めて
家を出た母を思うと知らず知らずに
私はああはなりたくないと
女としての母を自分と重ねてしまう事が多くなってしまった。
当然、桜木君の事も生涯のパートナーとして妄想したりすると
母の早口のセリフが頭をよぎり
急に隣にいる自信がなくなり
気持ちがどんよりしてしまうのだ。
2人とも車に乗り込み
桜木君はガチャッとキーを差し込みそれを回しながら
「そういえば茂田憶えてる?
実は今日、誘いがあったんだよね。
あいつ家に居るのかなぁ。」
「茂田」とは中学生の時の同級生で
私は中三の時に同じクラスだった。
茂田君自身はこれといって目立つタイプではなかったが
スラリとスリムな体型と小さな顔つきは
桜木君とどことなく似ていて
2人で居る時は何気に女子がざわめくような目立ち方を
していた事は記憶にあった。
桜木君と茂田君は中一の時に一緒のクラスになって以来
今まで何かと会っている友達の一人らしい。
「ちょっと茂田の家の前通っていい?」
「うん。」
桜木君は理由も話す事無く私の家とは逆方向に車は走り始めた。
車中では桜木君が茂田君ともお互い忙しく
しばらく会っていないという事や
今も実家に居る事。
茂田君の家族構成や仕事の内容。。。
私に自分の長年の友の情報をあれやこれやと話してくれた。
それまでの桜木君との電話の会話で
こんなにしゃべる姿をイメージできなかっただけに
思わず前を向く事を忘れるくらい桜木君を見つめてしまった。
時折、重たくどんよりする気持ちは
こんな瞬間に雲の隙間から少しだけ日が差すのであった。
初めてつないだ手の温もりが言葉よりも遥かに大切で
それが桜木君にとってストレートな私に対しての愛情表現だったことを
後に知る事になるなんて思いもせずに。。。
終わりの無い残像 15
桜木君が私の顔を覗き込む。
「これでいい?」
桜木君は首をかしげながら
私の目の高さに少し明るいブラウン色の瞳を
しっかり合わせて聞いてきた。
真っすぐな視線に瞬きも出来ず
初めて近くで見るその瞳は
胸が苦しくなるくらい綺麗だった。
やや猫背気味の桜木君と私は15㎝位身長差がある。
コンビニの飲料コーナーの
硝子越しに映る2人並んだ姿でその身長差を感じた時
「男の人」を意識させるしっかりした体のシルエットに
理屈無しに安堵感を感じていた。
ほんの短い時間
つないでいた桜木君の手の温もりが
急に恋しくなってしまい
ドキドキが又始まった。
私は「うん、それでいいよ。ありがとう。」
その言葉を言い終わらないうちに
体は桜木君を先導するかのごとく
レジに向かって早歩きになった。
ここで時間が少しでも過ぎていく事より
早くこの場を出て2人だけの空間を感じたかった。
幼い頃に感じた初めてのドキドキと
23才になろうとする歳に感じるドキドキが
同じ人だなんて想像できなかっただけに
今まで感じたことがない幸福感が湧いてきた。
でも
桜木君はどうなんだろう。。。
コンビニを出た瞬間
夏の扉が開いたようなジワッとした蒸し熱さが
気持ちの高ぶりを冷まさせるミストのように
高ぶり続けそうな気持ちを
一瞬にして押さえつけた。
「これでいい?」
桜木君は首をかしげながら
私の目の高さに少し明るいブラウン色の瞳を
しっかり合わせて聞いてきた。
真っすぐな視線に瞬きも出来ず
初めて近くで見るその瞳は
胸が苦しくなるくらい綺麗だった。
やや猫背気味の桜木君と私は15㎝位身長差がある。
コンビニの飲料コーナーの
硝子越しに映る2人並んだ姿でその身長差を感じた時
「男の人」を意識させるしっかりした体のシルエットに
理屈無しに安堵感を感じていた。
ほんの短い時間
つないでいた桜木君の手の温もりが
急に恋しくなってしまい
ドキドキが又始まった。
私は「うん、それでいいよ。ありがとう。」
その言葉を言い終わらないうちに
体は桜木君を先導するかのごとく
レジに向かって早歩きになった。
ここで時間が少しでも過ぎていく事より
早くこの場を出て2人だけの空間を感じたかった。
幼い頃に感じた初めてのドキドキと
23才になろうとする歳に感じるドキドキが
同じ人だなんて想像できなかっただけに
今まで感じたことがない幸福感が湧いてきた。
でも
桜木君はどうなんだろう。。。
コンビニを出た瞬間
夏の扉が開いたようなジワッとした蒸し熱さが
気持ちの高ぶりを冷まさせるミストのように
高ぶり続けそうな気持ちを
一瞬にして押さえつけた。
終わりの無い残像 14
バイトを始めて何ヶ月か経過した頃の私は
数ヵ月前とはまるで別人のように
毎日を慌ただしだしく
そしてよく笑うようになっていた。
今まで崩れていた生活のリズムがスムーズになると
又別の何かが一つ崩れてくるもので
それまで愚痴やたわいもない話を聞いてくれていた
彼氏の幸雄とのすれ違いが多くなり
むしろ幸雄との時間よりバイトをしている時間を
次第に優先するようになり
結局2年近く続いた交際が終わっていった。
そんな幸雄と付き合っていた頃は
よくコンビニデートをしていた。
学校帰りやバイトの帰り。。。
あれから数年経った今
私の隣には桜木君が
ビールの銘柄を父の為にと選んでくれている。
恋に恋していた10代の頃。。。
その当時の出来事は
家族の事も幸雄の事もそんな言葉で
閉じ込めておきたい。。。
どろどろしたものではなく
淡い色のものとして…
そう思うようになったのもこの頃だった。
毎日にハリが出てきた私は
もう どろどろとやりきれない気持ちになることだけは
なにがなんでも嫌だと強く思っていた。
気持ち がそこに引き戻されないよう
忘れられない出来事は
せめて綺麗にしまっておきたかったからかもしれない。
数ヵ月前とはまるで別人のように
毎日を慌ただしだしく
そしてよく笑うようになっていた。
今まで崩れていた生活のリズムがスムーズになると
又別の何かが一つ崩れてくるもので
それまで愚痴やたわいもない話を聞いてくれていた
彼氏の幸雄とのすれ違いが多くなり
むしろ幸雄との時間よりバイトをしている時間を
次第に優先するようになり
結局2年近く続いた交際が終わっていった。
そんな幸雄と付き合っていた頃は
よくコンビニデートをしていた。
学校帰りやバイトの帰り。。。
あれから数年経った今
私の隣には桜木君が
ビールの銘柄を父の為にと選んでくれている。
恋に恋していた10代の頃。。。
その当時の出来事は
家族の事も幸雄の事もそんな言葉で
閉じ込めておきたい。。。
どろどろしたものではなく
淡い色のものとして…
そう思うようになったのもこの頃だった。
毎日にハリが出てきた私は
もう どろどろとやりきれない気持ちになることだけは
なにがなんでも嫌だと強く思っていた。
気持ち がそこに引き戻されないよう
忘れられない出来事は
せめて綺麗にしまっておきたかったからかもしれない。
終わりの無い残像 13
大切な。。。
でも今はない家族の温もり。。。
寂しいのに寂しいと素直に言えない
むしろ何が素直さなのかわからなくなってしまったまま
バイトを探し続け時間が過ぎていった。
そんな状況をすべて知っていた
小学校から今でも親友、恵と礼子。
小、中とロングへアーだった私は
毎日髪型を変えて登校し
そして手芸が得意だった。
そんな事を覚えていたのかどうか分からないが
ある日、恵が時給の高い美容室のバイトを
礼子が時給はさほど高くないアパレルのバイトを
見付けてきてくれた。
2人と会っている時は
たわいもない話題で笑えるどこにでもいる高校生。
かなり気も紛れるとともに
恵は両親が揃っているごく普通の環境。
礼子は両親が手広く事業をしていて何一つ不自由の無い環境。
環境の違う2人に今の私の状況を逐一言うことで
2人の笑顔が少なくなる方がもっと悩んでしまいそうで
そうそう家の事は話さないようにしていた。
小、中、高と一緒、しかも歩いて行き来出来る程
近所の私達は言ってしまえば
逐一話さなくても自然と状況は分かってしまう。
それだけにバイトの話をいつものノリで
まるで何かのついでのように持ちかけてくれた時には
ビックリしたのと嬉しいのとそのやさしさに
心から「マジで!あいがとう!」と何回も言っていた。
昔も今も2人は私を自然に素直にしてくれるスペシャリストなのだ。
まだ何も決まっていないバイトなのに
気持ちはかなり明るく
最初にいった美容室の面接も受かる気満々だった。
しかし内容を聞いているうちに
「これはきつすぎる。。。」
と自信がなくなり
最後まで話は聞いていたがほぼ聞き流し状態で
まだ内容もさっぱりわからないアパレルのバイトに
気持ちは奪われていた。
翌日、学校終わりで連絡を入れ早速面接を受けれる事になった私は
ありったけの洋服を引っ張り出し
今の流行を着こなしていますと言わんばかりに頑張り
それまで運動一直線の私は
まるで雑誌から抜け出してきたような外見を
いけてないとはこれっぽっちも思わず
面接に挑んだのだ。
結果、その当時DCブランドブームもあり
翌日から派遣された比較的家から近いショップで
仕分けや陳列の作業をする事になった。
後々、その時面接したそのショップの店長は
「あの服装はないよ!びっくりしたもの!」
とかなり笑いのネタにされ
今の私ならともかく
まだ10代の私は笑いながらも
ちょっぴり落ち込んだりもしていた。
でもそんな気持ちが
本格的に洋服に興味を待ち始めた第一歩だった。
友達といる以外ふさぎ気味だった日常も
日に日に笑顔が多くなり
そして父との会話も少しずつ少しずつ増えていった。
でも今はない家族の温もり。。。
寂しいのに寂しいと素直に言えない
むしろ何が素直さなのかわからなくなってしまったまま
バイトを探し続け時間が過ぎていった。
そんな状況をすべて知っていた
小学校から今でも親友、恵と礼子。
小、中とロングへアーだった私は
毎日髪型を変えて登校し
そして手芸が得意だった。
そんな事を覚えていたのかどうか分からないが
ある日、恵が時給の高い美容室のバイトを
礼子が時給はさほど高くないアパレルのバイトを
見付けてきてくれた。
2人と会っている時は
たわいもない話題で笑えるどこにでもいる高校生。
かなり気も紛れるとともに
恵は両親が揃っているごく普通の環境。
礼子は両親が手広く事業をしていて何一つ不自由の無い環境。
環境の違う2人に今の私の状況を逐一言うことで
2人の笑顔が少なくなる方がもっと悩んでしまいそうで
そうそう家の事は話さないようにしていた。
小、中、高と一緒、しかも歩いて行き来出来る程
近所の私達は言ってしまえば
逐一話さなくても自然と状況は分かってしまう。
それだけにバイトの話をいつものノリで
まるで何かのついでのように持ちかけてくれた時には
ビックリしたのと嬉しいのとそのやさしさに
心から「マジで!あいがとう!」と何回も言っていた。
昔も今も2人は私を自然に素直にしてくれるスペシャリストなのだ。
まだ何も決まっていないバイトなのに
気持ちはかなり明るく
最初にいった美容室の面接も受かる気満々だった。
しかし内容を聞いているうちに
「これはきつすぎる。。。」
と自信がなくなり
最後まで話は聞いていたがほぼ聞き流し状態で
まだ内容もさっぱりわからないアパレルのバイトに
気持ちは奪われていた。
翌日、学校終わりで連絡を入れ早速面接を受けれる事になった私は
ありったけの洋服を引っ張り出し
今の流行を着こなしていますと言わんばかりに頑張り
それまで運動一直線の私は
まるで雑誌から抜け出してきたような外見を
いけてないとはこれっぽっちも思わず
面接に挑んだのだ。
結果、その当時DCブランドブームもあり
翌日から派遣された比較的家から近いショップで
仕分けや陳列の作業をする事になった。
後々、その時面接したそのショップの店長は
「あの服装はないよ!びっくりしたもの!」
とかなり笑いのネタにされ
今の私ならともかく
まだ10代の私は笑いながらも
ちょっぴり落ち込んだりもしていた。
でもそんな気持ちが
本格的に洋服に興味を待ち始めた第一歩だった。
友達といる以外ふさぎ気味だった日常も
日に日に笑顔が多くなり
そして父との会話も少しずつ少しずつ増えていった。
終わりの無い残像 12
それまでの生活から一転。
部活動をなくした生活は
朝早く起きるどころか毎日の様に学校は遅刻。
かといって環境が変わった事でグレる事もばかばかしく
経済的に辞めた部活動だったはずなのに
体を動かさない日々の私は
バイトを探す意欲もなくなり
なんとなく毎日が過ぎていくのを
無気力のまま待つ毎日だった。
無気力というのは退屈なもので
この頃スポーツを通じて
以前から知り合いだった2才年上の先輩、幸雄と
付き合いがスタートしたものの
退屈さからは抜け出せず
私、何やってんだろう。。。
辞めた意味ないじゃん。。。
無気力も退屈も体の筋肉が落ちていくことも
だんだん目の前から光が奪われていくようで
耐え難いことになっていった。
相変わらず父との会話はなく
挨拶を交わす程度。
家にいてもな。。。
そんな状況がやっとバイトを探すために
重たい体と動かすことになった。
不思議なもので何かしら行動するという事は
新しいスタートきった感じがして
少しづつ気持ちが動きだし
それまで時給が高い事が一番の条件から
どうせやるなら興味がある内容にと変わっていった。
必死で無くなった目標を又見つけたかったことと
無くなった目標は家庭環境のせいではないと
心のどこかで思っていたからだと思う。
今はバラバラの家族でも
幼い時、みんなで笑い転げた暖かい家の匂いが
たまらなく恋しかったのだ。
部活動をなくした生活は
朝早く起きるどころか毎日の様に学校は遅刻。
かといって環境が変わった事でグレる事もばかばかしく
経済的に辞めた部活動だったはずなのに
体を動かさない日々の私は
バイトを探す意欲もなくなり
なんとなく毎日が過ぎていくのを
無気力のまま待つ毎日だった。
無気力というのは退屈なもので
この頃スポーツを通じて
以前から知り合いだった2才年上の先輩、幸雄と
付き合いがスタートしたものの
退屈さからは抜け出せず
私、何やってんだろう。。。
辞めた意味ないじゃん。。。
無気力も退屈も体の筋肉が落ちていくことも
だんだん目の前から光が奪われていくようで
耐え難いことになっていった。
相変わらず父との会話はなく
挨拶を交わす程度。
家にいてもな。。。
そんな状況がやっとバイトを探すために
重たい体と動かすことになった。
不思議なもので何かしら行動するという事は
新しいスタートきった感じがして
少しづつ気持ちが動きだし
それまで時給が高い事が一番の条件から
どうせやるなら興味がある内容にと変わっていった。
必死で無くなった目標を又見つけたかったことと
無くなった目標は家庭環境のせいではないと
心のどこかで思っていたからだと思う。
今はバラバラの家族でも
幼い時、みんなで笑い転げた暖かい家の匂いが
たまらなく恋しかったのだ。
