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束縛


徹は束縛を嫌った。

当時高校生であった徹にも何人か彼女らしき人物はいたのだが、すぐに別れてしまった。


それも、束縛を嫌って徹本人が別れを切り出すのではなく、ことごとく振られた。


まぁそのはずである。

根っからの自由人であるので、自分が気乗りしなければそそくさと帰ってしまうのである。


そのくせ彼女のことは好きなのだから意味不明である。


見里という彼女がいた。


彼女はずいぶんと積極的で付き合う前から、

「遊びに行こう」

と、何度も誘ったりしてくれていた。


徹本人も見里を嫌いではないので、二人でよく遊んだりした。

ただ、徹はもともと約束の時間というものを持たないので、待ち合わせなどは30分遅れるのが普通であった。


というのも、ぎりぎりまで寝ているとかそういうんではなくて、

「まだ全然余裕だろう」

とゆっくり用意しているうちに、時間が来てしまうのだ。


この性格は一向に直る気配がなく、見里ともこれが原因で別れた。


しかも、たちが悪いことに、周りにはすぐにふっ切ったと言い切るのだが、

内心いつまでたっても尾を引いてしまう性格だった。


ただ、復縁を迫る勇気も度胸もないために一人悩んで終了するのがいつものパターンである。


(こんなこと話すのは恥ずかしい)

と、徹の中にはかたくななまでの羞恥心があるので、誰かに相談もしない。

これは、幼いころの経験から心を閉ざしているのだが、それは後ほど話そうかと思う。


徹はこういう風に見てみると至極情けなくて頼りない人間に見えるが、

人前ではそんな一面みせもしないので、誰にもわからないばかりか。


(あいつは悩みなんて全然ないんだろうな)

などと思われている。


まったくもってそんな性格だ。

『知弘』


知弘は4つ下で、とにかくわがままであった。

小さい頃からなぜか金に目がないらしく、よく母に

「内職をやらせろ」

とせがんでいるのを徹は

(何を意味のわからないことを)

などとあきれていた。


いわゆるジャイアン的な思想の持ち主で、

(自分のものは自分のもの。人のものは自分のもの)

と、家庭内では思っているらしく、徹はその考え方が嫌いでならなかった。


さらに、よほど普段ストレスがたまっているらしく、毎夜はっきりした口調で寝言を言っていた。


ちなみに知弘は映画好き、というよりビデオが好きで、幼いころから何度もビデオに撮った映画を見ていた。

これは、ゲームがあまり復旧していないころ、貧乏だった徹一家にはゲームなどあるはずもなく、

暇つぶしにはもってこいだったのであろう。



両親


母は『一美』

父は『康成』

である。


徹が知っている限り、父康成は金勘定がくるっているらしく、祖父母に多大な迷惑をかけてきたようだ。

母は母で、世の中の仕組みを全く理解しておらず、それをなぜか嘆くだけで何もしようとはしなかった。


はっきりいってしまえば、ダメな大人の代表格なのである。

今現在徹は父の消息を知らない。

両親は離婚しており、父とは連絡を取っていないからだ。


康成は不動産会社に勤めていたが、肌に合わなかったのか、それとも飽きたのかはわからないが、

職場を幾度か変えている。

それでも、不動産の道からは抜けていないところを見ると、天職なのではないだろうか。


康成は酒は飲めず、煙草も吸っていたが徹が高校に上がることにはやめていた。

逆に一美は祖父に似て酒好きで、煙草こそ吸わないものの、夕飯の支度ついでにビールをよく飲んでいた。