試験の帰り道、彼は言った

もう帰る?いちど会社に寄るなら送って行くけど…

私はすかさず

はい。と答えた

急いで支度をして
早歩きで歩く彼の姿を私は必死に追いかけた

彼は途中立ち止まり自販機でジュースを買ってくれた

好きなのどうぞ


私はそこでジュースを買ってもらったが
緊張のあまりその缶ジュースを開けることなく家路につくことになる

駐車場につくと彼はトランク開け
私のスーツケースをしまい込んだ

人生初のポルシェ


スポーツカータイプ
黒のポルシェ
車内が革張りの座席の匂いは
とても大人な感じがした

2人きり

今まで話したことがなく

間が持たない

ふと私は車窓を眺めた

飛び込んでくるのは東京の高層ビルの街並

私は

今どこら辺ですか

彼に尋ねた

すると丁寧に彼は東京の街並みについて教えてくれた

私銀座初めてです

興奮気味にそう答えると彼は笑った

子供のように笑った

初めてなの?

横浜の人だよね?

私は内向的な性格で
インドアな人間だったので
銀座に繰り出すような
背伸びをしたような生活をしたことがなかった

目を見張るような高層ビル群
おのぼりさん丸出しの発言に
彼は私を子供扱いしたかのように
いろいろな会話を振ってくれるようになった

あっという間の時間だった


途中渋滞もあったが
何の事は無い
もっともっとこの車の中,
彼を夜独占したいと思ってしまった


彼に好きはないのは分かってる

隣に乗せてくれたのも、
上司としての義務感からだ

1度も,横顔見ることができなかった
見ると私の真っ赤な顔がばれてしまうそう思った

会社につくと彼は、彼の上司にこう告げた

大丈夫合格してるよこの子は

彼は淡々と上司にそう告げた

結果は明日だ…
合格してるかどうかは…
神のみぞ知る

私は彼の言葉を嬉しく思うとともに
しかし自信がないのもまた本音だ…