今日はよろしくね

扉の向こうに彼はきた

スマートな出で立ち
ジャケットを羽織
磨かれた靴
裾から光る高級時計
全てが洗練された立ち姿

試験の緊張
本当に彼が来たと現実がそこにある
私の鼓動は止まらなくなってしまった

試験の動揺なのか
彼への動揺なのか
集中しなきゃいけない時に私の頭と心がくちゃくちゃになってしまった。


試験が始まるまで,
しばらくの時間があった

落ち着かない私に彼はこういった

座ってたら本番に疲れてしまうよ

そう言って彼の指は隣の席を指した

座ってもいいの?

胸の鼓動がよりいっそう激しくなった

いつまでも座らない私に
彼は座るように催促した

私を従った
しばらくの間彼の隣で時が過ぎるのを待った
試験の始まる直前
彼は私にいくつかのアドバイスをした

真剣なその表情にしばし邪念を忘れる
試験に集中しよう
ただそれだけを考えて話を聞いた

コントロールできない鼓動が
いつしか穏やかな鼓動に変わっていた

そしていよいよ試験が始まる