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月館の殺人(佐々木倫子 漫画/綾辻行人 原作)

【内容】
唯一の家族である母を亡くした、沖縄に住む高校生の空海。
進路に悩むなか、北海道から母方の祖父の弁護士・中在家が訪ねてきます。
「北海道に来て、お祖父さまに会ってください」という中在家。

生前母は、空海が電車に乗ることを許さず、空海は、「ゆいレール」にすら乗ったことがありませんでした。母が許さないのでは・・・、と悩む空海でしたが、中在家の説得もあり、祖父に会いに行くことを決めます。

空港から駅まで中在家と車で向かう予定でしたが、道中、車にトラブルが起こります。そこに偶然通りかかった日置と名乗る男性。
 彼の行き先が自分たちと同じであると知り、中在家が空海を一緒に連れて行ってくれるよう頼みます。
祖父に会うため、稚瀬布発月館行き【幻夜】号に、日置とともに乗り込む空海。

【幻夜】は、D51が引っ張るオリエント急行でした。
【幻夜】の乗客は、空海の他は日置を合わせて男性五人。皆、風変わりな乗客でした。
男性五人は、この【幻夜】に招待されたのだ、と言います。
乗客は皆、鉄道オタクであるところの【テツ】でした。

変わった乗客に翻弄される空海。そんななか、殺人事件が起こります ー。

【幻夜】は目的地である月館まではノンストップです。走っている電車という密室のなか、一体誰が殺人を犯したのか・・・。




綾辻行人さんは、私が今もミステリ小説を読み続けているきっかけとなった作家さんです

小学生の頃はシャーロック・ホームズにハマり、そこから読みやすい赤川次郎さんの三毛猫シリーズをはじめとした作品を読んでいました。(赤川次郎さんは、今また読み返していきたいなと思っています)

中学生になって、新井素子さんのようなSF小説に流れ、部活も忙しかったので、本自体をあまり読んでいませんでした。

高校生になり、高校の図書館が充実していたことや、本好きの友達がいたことから読書熱が再燃メラメラ

そこで出合ったのが、綾辻行人さんの『十角館の殺人』でした。
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今も昔も変わらず、【雰囲気のある作品】が好きで
そういう意味で、『十角館の殺人』は鮮烈でした。

『十角館の殺人』の解説のなかで、鮎川哲也氏が、次のように書かれています。

かつて本格ミステリーを書いていた人々は、あるいは亡くなり、あるいは筆を折ってしまった。そして残ったのは高木彬光氏と土屋隆夫氏、それにわたし。プロの作家はわずか三人に減っていった。わたしはペシミストのせいか、本格物を書ける作家はこの三人でおしまいになるものと考えていた。それが時勢というものだろうと諦めてもいた。わたしの耳に、評論家やアンチ本格派の作家の「本格物は古い」という大合唱聞こえてきたりした。
(中略)
島田荘司氏の登場を皮切りに、綾辻行人氏の処女作が紹介され、陸続として後継者があらわれて来たのである。戦前の慣用句を以ってすればわたしは欣喜雀躍した。

鮎川哲也氏は以下の各氏を後継者として挙げておられます。法月倫太郎、我孫子武丸、歌野晶午、有栖川有栖、山口雅也、今邑彩、依井貴祐、芦辺拓(敬称略)。

私はこうした流れを知らず、綾辻さんにハマりましたが、【古くて新しい】独自の雰囲気を持つ【新本格派】にリアルタイムで触れられたのは、幸せなことだな、と思います
(正直、好き嫌いは分かれるだろうな、と思うので、万人向けではないかと思いますが・・・)

『十角館の殺人』から始まる【館シリーズ】では、「中村青司」という建築家が設計した風変わりな館で起こる殺人が描かれています。
推理小説でありながら文学的な雰囲気を持ち、人物が魅力的に描かれている点、そして何より【館】の魅力に取り憑かれ、館シリーズを買い集めました。

【館】シリーズは、仕掛けを考え、読者に驚きを与えるために、執筆するのに苦労が多い作品だと思います。
綾辻さんのミステリに対する情熱が溢れているなと感じ、時折読み返しています。

綾辻さんは、私にとって、特別な思い入れのある作家さんのうちのお一人です

そんな【館シリーズ】が、佐々木倫子さんが漫画を描かれた『月館の殺人』として並んでいるのを見たとき、びっくりしました。そして、即買いしました

佐々木倫子さんの作風も好きで、『動物のお医者さん』はじめ、何シリーズか持っています
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「中村青司」の建築した館はこの作品には出てきませんが、【幻夜】には謎が秘められています。

他の館シリーズとは雰囲気が違いますが、綾辻行人さん、佐々木倫子さんがお好きな方に読んでみてもらいたい一冊です