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黒と茶の幻想 上・下 (恩田陸  著)

【あらすじ】
学生時代からの同級生だった男女四人が、転職する同級生の壮行会で再会したのをきっかけに、旅行を計画する。

行き先は、Y島。伝説の桜と言われる『三顧の桜』を目指す。

この旅にはテーマがあった。それは、【非日常】。
そのために、旅行を計画した主催者が他の3人に提案をする。
『美しい謎』を各自持参すること。

四人は大小さまざまな謎解きをしながら森の中を進んで行く。
それぞれ胸中にさまざまな思いを抱えながら・・・。

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こんな感じなのですが、面白そうじゃないですか??
本当に、私のどストライクなんです!!!上下巻なんですが、何回も読み返してます。

登場人物が四人で、利枝子、彰彦が上巻の第一部、第2部。蒔生、節子が下巻の第三部、第四部で、四人の視点からそれぞれ物語が語られます。
各自のパートで呟かれる独白と、他の3人から見たその人物が読めるのも物語を引き立てます。

この四人の関係性は、次のようなもの。
蒔生と節子は幼い頃からの知り合い。
蒔生と利枝子は高校から大学時代にかけての恋人同士。
節子と利枝子は高校時代からの友人。
彰彦は、大学から蒔生たち3人と仲良くなった友人、です。

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Y島とは、屋久島のことだと推測されるのですが、各部の冒頭の書き出しが森についての各自の想いから始まるのですが、それも美しい、と、感じます。

例えば、第一部・利枝子。
森は生きている、というのは嘘だ。
いや、嘘というよりも、正しくない、と言うべきだろう。
森は死者でいっぱいだ。森を見た瞬間に押し寄せる何やらざわざわした感触は、死者たちの呟きなのだ。
(中略)すなわち、気の遠くなるような時間の蓄積を目の当たりにして、我々は森に圧倒され、畏怖を覚えるのだ。

これが、第二部・彰彦では次のように語られます。
森に入ると、いつも誰かに愛されているような気がする。
 もちろんそんなものはロマンティックな錯覚だ。けれど、森に踏み込んだこの瞬間だけは、必ずふわりと手を差し延べられたような安堵を覚えるのだから仕方ない。

ざわざわと、安堵。畏怖と、愛。森という同じ対象に対して、ひとによりガラリと違う印象を持つのがわかります。
こういう視点の違い、というのが、同じ物事を見ても、見る視点が変われば違うものに見えるのだ、という伏線。

 物語のなかにでてくる『美しい謎』、ですが、大小さまざまで、物語のなかで解決するものもあれば、結論が出ないものもあります。
正直、その謎でひとつ物語ができるのでは?という謎の大盤振る舞い!!ミステリ好きとしては、すごく贅沢な気持ちになります。

そもそも、四人が目指す『三顧の桜』自体が、実在するのかどうかわからない謎。

・・・でも、物語には、まだ最大の謎が横たわっているのです。
四人の共通する美しい友人、梶原憂理。
彼女は、ある夜を境に消息を絶ちました。
彼女は今どこで何をしているのか、なぜ消息を絶ったのか、という謎です。

四人はそれぞれ、異なる関係性で憂理と友人関係を結んでいました。
利枝子と憂理は親友。しかし、蒔生がそこに加わり、3人の関係性は複雑なものになります。
そして、その3人をそばで見つめていた彰彦と節子。

憂理は演劇をしているのですが、この劇中劇も、実は恩田陸さんの別の作品に繋がっています。(また別の機会に書きますね)

『三顧の桜』を目指しながら進む四人の旅が終わりを迎えたとき、物語がどう終結していくのか・・・。
ぜひ、読んでいただきたい作品です✨✨

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分けても長くなりましたね😅

恩田陸さんは、デビュー作の『6番目の小夜子』から、注目していた作家さんで。
しかも、初版はライトノベル扱いだったんじゃないかなあ・・・。今は新装版になってると思うんですが、実家から出た時に無くしてしまったのか、珍しく本が手元に残ってなくて😣

『6番目の小夜子』も大好きで、スピンオフ作品も読んでるので、また書きたいと思います。

恩田陸さんといえば、本屋大賞の『夜のピクニック』が有名かと思うのですが、『黒と茶の幻想』は、それを更に濃ゆく煮詰めたような作品というか。
『黒と茶の幻想』の方が先に刊行されているので、しかも大好きな作品なので、持ってはいるんですが、私は逆に『夜のピクニック』が読み込めていなくて。

最近の著作は少し系統が変わってきた気がして恩田陸さんを追いかけれていなかったんですが、今回の記事を書くにあたり、恩田陸さんが好きすぎる😂と改めて実感したので、最近の作品も読み直していこうかな、と思いました😊

そして、この記事を書くにあたり、ずっと持ってるのに気づいてなかったことに気付きました!

なんかカバーの色がそれぞれ違うな〜、と思ってたら、上巻が黒、下巻が茶じゃないか!‼️

こんな遊び心大好きなのに、ずっと気付いてなかったとか😂😂😂
・・・発見は色々あるものですねぇ。

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長くなりましたが、あと、恩田陸さんの魅力をもう少し。
情景が細部まで書き込まれているため、場面が描きやすいというか、映画やドラマを見ているようなリアリティが味わえます。映画がお好きなようなので、その影響でしょうか。

あと、文章が綺麗というか、流れるように読みやすいのに、サラリと毒を忍ばしたような文章が滑り込んでくるのに、ドキリ、とします。

『キッチン』で、吉本ばななさんの作品から受ける印象が私小説的、と書いたのですが、恩田陸さんの文章はあくまで客観的。シニカルな部分を感じます。

記事の1で書きそびれたのですが、そういうところが湊かなえさん、石持浅海さんと重なるなあ、というか。
吉本ばななさんが文系なら、恩田陸さんは理系、みたいな印象です。(個人的見解なので、伝わるかな 、と思いますが💦💦)


ニコニコニコニコニコニコお願いニコニコ

・・・書いていて、すごく楽しかった!!完全に自己満足の世界です😅
お付き合いいただけた方、ありがとうございます💕💕