ちょっと間があいてしまいましたが…。
先日22日(土)、無事にこの作品が大千秋楽を迎えました!
本来だったら初夏に会えるはずだった冬組の皆、そしてカンパニーの皆。
満開の笑顔に、ようやく会えました
MANKAI STAGE A3! ~WINTER 2020~
初興行からまだ2年。
今ではすっかり大人気舞台の座をゆるがないものにした「MANKAI STAGE A3!」、通称エーステ。
本公演をもって、どの組もすべて3回ずつの公演を行った設定になりました。
MANKAIカンパニーの再出発から、これで3年が経った、ということですね
春、夏、秋とバトンをつなぎ、冬組がアンカーとして一つの区切りを迎えるはずだった記念すべきこの作品。
こんなことになるなんて、制作発表時は、全然、誰も思っていなかった…。
それに、この騒ぎがこんなに長く続くとも、多くの人は思っていなかったと思います。私は正直、あたたかくなれば自然に収まるものだと思ってました…
「これ、どうなっちゃうんだろう…。」
小さなことに一喜一憂し、舞台はどうなるんだろう、演劇はどうなるんだろう、あの物語はどうなるんだろう…ともやもやと不安を抱える日々。
でも、一番不安だったのは、作品に関わるキャストとスタッフだったはずですよね。
中止の嵐が一旦去ったあとも、舞台演劇を取り巻く環境は厳しいままでした。
本来考えていた演出も変更しなければいけない、フェイスガードも着けなきゃならない…特に、2.5次元舞台ほど、ビジュアルにこだわって作る作品なんて、そうそう無いのに…。
そんな様々な不便を抱えながらも、なんとか幕を上げてくれたこと。
そして、スタッフを含め全員が揃って無事に幕を下ろしてくれたこと。
本当に、心から感謝したいと思います。
舞台の中止が決まった時には「こんなことになるなんて思わなかった」と、悲しくて泣いてました。
が。
今回は嬉し泣きですよ…こんなふうに、皆に会えるなんて思ってなかった
そんなわけで、とりあえず最初から最後まで泣いてた私ですので、冷静な感想を述べたり分析したりするのはもうすでに無理なんですが(笑)。
いつもどおり、気ままに思いつくことを書き綴りたいと思います
まずはオープニング。
突然始まる「修羅場」にびっくりさせられますが、そこはさすが冬組コンビということで。
初演時と比べると、どの組のどのメンバー同士も全然関係性を築いていますけれど、なんだか紬と丞は、その中でもずいぶん変わったなという感じがします。
幼馴染みの二人…本当は、ずっとこんなふうだったんでしょうね。
試練があって、離れ離れになって、すれ違って、また出会って…そうやって、新しいところで、新しい仲間と共に、「元通り」よりもっと素敵な関係になる。
ここまでの軌跡を観てきた私たち「監督」にとっては、そうやってMANKAIカンパニーがどんどん豊かな場になっていくことが、なんだか嬉しくて堪らないですよね…!
まぁ、私がエーステ監督に就任したの、めちゃくちゃ最近なんですけどね
さて、次に驚くのはオープニング曲。
春組単独公演から同じ曲で幕を開けるこの作品ですが…本当にこの曲、組ごとに全然印象違うんですよね
春は華やかに、夏は元気よく、秋は力強く。
メロディはそのままに、歌詞とアレンジだけを変えて、こんなにも印象変わるんだなあ…と、本当に感心してしまいます。
今回の冬組は淑やかなイメージ。クリスマスイブの夜のような、華やかだけどしっとりとした、いいアレンジでした。
とても大人びていて、でも純粋で、触れたら溶ける雪の結晶のように繊細な…。
まさに冬組!
作中でもたびたび冬組は大人の集まりだということがかなり強調されていましたけれど、確かに冬組って、メンバーが大人である分、他の組にありがちな分かりやすい喧嘩や暴走ってあんまりないんですよね。
そのせいで、物語につきものの「イベント」が、ちょっと全体に地味です。
今回も、決定的に亀裂が入るような傷つけ合いは、メンバーたちが非常に上手に避けています。
物語の運営上は、トラブルの程度が激しければ激しいほどやりやすいはずなんですよね。でも、冬組はそれをしない。みんな、大人だから。
だから、物語全体が他の組に比べて控えめで静かなことは確かだと思います。
殴り合いもしないしね
でも、じゃあメンバー同士の心の距離は縮まらないのかというと、決してそんなことはありません。
他とはやり方が違うだけ。
踏み込むときには少しずつ、ほんの一歩ずつ。
臆病すぎるほどゆっくりと近づいて、相手の心にそっと触れる。それはそれは丁寧に。
ぶつかり合って分かり合う関係性もいいし、個人的には拳を交わせばわかるぜ!みたいな秋組にすっかりヤられた私ですけれど、今回冬組単独公演観て、なんかすごくしみじみと、大人になるって悪くないなぁって思いました
閑話休題
ここからは本当に、くだらないことも含めてつらつらと。笑
台本書き上げた綴がおやすみなさいするシーン。
臣さんが肩かしてくれるんですよね。
あれ、羨ましくないですか
私も臣さんに肩貸してもらいたい
綴、頼むからそこ変わってくれ
それにしても、臣役の稲垣成弥さん、本当に背が高くて素敵ですよねぇ…。
次。
誉さんには本当に泣かされる件。
前回の「仲間の心を分かりたい」と奮闘する誉さんにもジンときましたけど、今回も本当に、私の心はがっごんがっごんに打たれました
こんなに優しくて繊細なのに、自分には人の心がわからないって悩まないといけないんだろうか?
だって、他の人の心なんて、本当には誰にも分からないじゃないですか。
それは物語の中で紬も言ってたけど、自分がその人だったらどう思うかって考えることしかできないわけで。
誉さんは、自分自身のことを「人の心が分からないサイボーグ」と認識していて、それをすごくコンプレックスに思ってるけど、実際には皆そうなんじゃないかなぁって。
本当は、そう思ってる誉さんの方が、人よりずっと繊細で、優しくて、人の想いに寄り添いたい気持ちが強いんじゃないかなぁって、そんなことを感じました。
さて、一本目の劇中劇。
主演の執事を誉さん(田中涼星さん)、ミステリー付きの主人を密くん(植田圭輔さん)が演じる「主人はミステリーにご執心」。
初公演の「天使を憐む歌」とは全然テイストが違う作品ですが、落ち着いていて大人っぽい、見応えのあるお話です。
これ、エーステの凄いところなんですけど、劇中劇が本当によくまとまっていて、びっくりするほど「ちゃんと観た」感覚になるんですよ。
そんな出来のいい劇中劇の中でも、冬組の作品はほとんどトップレベルなんじゃないかなと思います。
どんな話なのかも分かるし、そこで描かれるべき心理描写も、充分な繊細さです。
おまけに、今回と(後述しますが)第3回公演の「真夜中の住人」では、とにかくリーダーの紬(荒牧慶彦さん)が演じる役が、とにもかくにも、本当に憎ったらしくて
それがまじで可愛いんですよ
しかも、汚い言葉遣いとか、過激なセリフとか、暴力シーンとか…そういう「普段の自分」なら絶対にしないことを、芝居の中でだけできることを、紬が思いっきり楽しんでいることが伝わってきて、すごくあたたかい気持ちになりました。
秋組では十座が「自分ではない誰かになりたい」から芝居をやってみたかったと言っていたけれど、結局のところ、演劇(特に演者)に魅せられる人っていうのは皆同じなんじゃないだろうか。
だからこそ、こうやっていかにも「芝居が楽しい」という様子で演じている俳優を、好きにならざるをえないんですよね。
で、もちろんそれは、紬を通して、俳優である荒牧慶彦さんがそう思っているということで。
それが、なんだかめちゃくちゃ他人事ながら、なんかすごく幸せで…
さてさて、続いては休憩を挟んだ後半戦。
第三回公演「真夜中の住人」へ向けての冬組の様子を描く約1時間ですが…このパートに関してはもう、一言しかない。
…東さんの過去が重すぎる。
雪白東(上田堪大さん)は、これまでも他組公演で大人の魅力をまき散らしてきましたけれど、特に前回の秋組単独公演では、すごい存在感を醸し出していましたよね
同じ秋組のメンバー達との差違に悩む古市左京(藤田玲さん)の良き隣人として、同等の「大人」として、彼の心の支えになった東さん。
まさかこんな重い過去があったなんて…
東さんは大人だから、感情を爆発させたり、なりふり構わず自分の思いを丸ごと仲間にぶつけることは出来ない。
それが仲間達にとってはもどかしいところなんだけど…でも、出来ない。
そんな東さんが、自分の淋しさ、苦しさを、少しずつ仲間へ開示していくことで、舞台の上で「別人に」なり、孤独な心を溶かしていく…
これが後半のおおまかなストーリー。
普通に考えたら、もうこれだけで2時間も3時間もかかるような話ですが、エーステではたった1時間ちょっとで、しかも「公演を成功させる」ところまで含めて描写しなければならない…これは大変なことです。
ところが。
今回はこの難題を実に見事にクリアしていたように思われます。大人ばかりの、臆病な冬組のメンバー達特有の繊細な描き方で、丁寧に、不足なく、しっかり描いていたと思います。
そして今回、東さんのために一番働いたのは、間違いなく助演の高遠丞(北園涼さん)ですね。
さしあたって後半の最初。マジウケだったのは紬とたすくの劇団トークのシーン
二人が色々な劇団のチラシを持ち寄って、お互いに「ここ、どう?」みたいな情報交換をしている訳なのですが。
この時のワンシーンが本当にリアルでwww
丞「ここは?」
紬「あー、ここは…うん。『…うんっ。』って感じかな。」
丞「あ〜…。」
わかる〜
こういう会話、する〜笑
冬組は、やはり繊細さが売りの組ですから、こういうところがリアルだと、すごく現実味が増すんですよね。笑
さ、他にも色々細かな楽しいポイントがあります。
例えばパンフ撮影の時。見た目を気にする誉さんに「内面の美しさ」云々を説く臣さんの、案外腹黒たらしなところとか
そういえばあのシーン、誉さんの手が大きいのがすごく印象的だったなぁ…。
そして、自分たちの距離感は…?って悩む紬さんの呟くセリフ。
怖くて、なかなか前に進めないんだって言った時、それに続けて紬は「俺たちは、大人だから…」と呟くんです。
自分が大人ならば、誰しも覚えがあるだろうその感覚。
紬のいう通り「傷つかない距離」は、でもなにも変わらない距離でもあります。近づくかどうかは、近づきたいかどうかだよね。
冬組の皆は、結局互いに傷ついても近付くことを選ぶけど…現実では、なかなかそうもいきません。
というか、そこまでしたいと思う関係性も、なかなか築けないしね…大人になると。
脚本家は凄いですよね。
そういう、自分では痛くて言えないような心の内側を、容赦なく言葉にしてしまうんですから…。
あとは、そうですね。
丞の大活躍は、本当に印象的でした。
ドライブに誘って、それなのにやることは台本の読み合わせだったりね
普通、ドライブって言ったら、もうその時点でいいムードじゃないですか。いい男が本命をデートに誘う時の手段みたいな感じだし。
ぶっちゃけ秋単の時の臣さんと太一なんて「おまえら付き合ってるんか?」って思ったもん私。笑
なのに、読み合わせですよ
そんな無神経魔神な丞のドア開けてください、ってLINEに「へ?」ってなる東さんが、普通に面白かった。
みんなで東さん家に押しかけて、ひとりぼっちの空間が賑やかな空間になって。
結局は稽古場みたいになって。
台本汚いって言われて微妙に傷つく丞が可愛かったりして。笑
夜は更けて、今まで言えなかったことを(無理のない範囲で)伝え合うなんて、まるで青春なことをしちゃったりして。
身体を寄せ合ってうたた寝する誉さんと密。(これが激烈に可愛い)
うつ伏して、結構本格的にすやすや寝ちゃう紬。
朝日が昇る時間まで東と丞はぽつぽつと話をしていて。
そんな二人が、なんだかとても、素敵な関係に見えました。
うん。
芝居にしか興味がない、ってきっと東さんは丞のことを思ってたんだろうけど、でも、丞は丞で、ちゃんと東さんのことを仲間だと思ってるし、ちゃんと大切にしているんだよな…と、じんときました。
ま、あいつ大事なところで寝落ちするんですけどね
でも、いい関係性だなぁ…って思うんですよね。
優しい他人って、もう大人になったら出会えないって、私は思ってるんですけど…演劇を見ていると、時々、もしかしたらまだ、奇跡みたいに魂が震えて繋がるような出会いが訪れるかもしれないって思ったりします。
お互いを尊重して、互いの「領土」を踏み荒らすことなく、ただ穏やかに寄り添えるような、そういう「他者」。
大きくても小さくても、自分では触れられない痛みってあるから。
丁寧に、臆病に仲間が触れたら、もうすっかり痕になっていた古い傷。
正直、東さんのお兄さんは、きっと戻ってこないんだろうと思います。でも、髪を切っちゃダメだって言ってくれる仲間がいて、良かった。
なんか、上手く言葉にできないけど。
…本当に良かった。
あとはもう、言うことないです。
劇中劇はあまりにも素晴らしかった。
大人の魅力満載で、正直他のどの組のどの公演(の劇中劇)よりも色っぽかったです。笑
特記すべきは上田堪大さんの歌唱力!
こんなに歌が上手だったなんて、今まで全然気が付きませんでしたよ
綺麗な声だし、伸びはいいし、情感的だし…あとから聞けば、歌手としてのソロデビューが決まってるんですって
そりゃ上手い訳だわ…。
その他にも、丞の脚の長さに対してベッドの長さが圧倒的に足りなかったり、誉さんが思いがけずイケメンサラリーマン感がでてたり、初日より紬のバンパイアハンターが強そうになってたり、密が演じる吸血鬼のフランツが時折チョロ松(別作品ですすみません)に見えたりと盛りだくさんでしたが…。
結局のところ「真夜中の住人」でのイチオシは。
丞が首筋を差し出すところでした
おまえ…エッチすぎか
はい。そろそろ通報されそうなので、もうまとめ。
とにかく今回の冬組単独公演、どこを切っても素晴らしかったです。
冒頭でも申し上げた通り、まずはもう、幕が上がって無事に下りただけでも感謝なのに、こんなにも素晴らしい作品にしてくれたなんて。
この時期、今まで当たり前にしていた「みんなで盛り上がる」ことが出来なくなった状況で、しっとりと心の機微を見せつける冬組単独公演だったというのは、観る側にとっては本当に天啓であったかもしれません。
とはいえ。
本来なら無かったはずのフェイスガードや、それに伴うマイクワークの難しさ、客席に下りられないことや、皆が楽しみにしていたコール&レスポンスの禁止など、エンタメの玉手箱みたいなこの作品にとっては、いまの状況は本当にしんどいものだと思います。
ましてや季節が一巡して、このあとはライブがあって…一部ではこれを区切りに、大幅な変革があるのではないかとも言われています。
真実がどうであれ、今回が冬組メンバーの集大成であったことは確かで。
それを、本来皆が思っていたような形で実現できなかったのは、本当に悲しいことです。
でも。
ラストソングの前に、紬役の荒牧さんが高らかに宣言した通り、この作品は、すべてのエンターテインメントへのエールになったんじゃないかと思います。
まだまだ、演劇界を取り巻く状況は厳しく、ここから先の公演も、今後どうなるか分からない状態です。
元々考えていた通りには出来なくなるかもしれない。それを理由に中止する舞台はこれからも出るだろうし、演出を大幅に変えて原型とは全く異なる形で公演する作品も出てくると思います。
それを、そう考えるかは、本当に個人の考え方だと思うんです。
形式が変わった舞台を「元通りのすがたで観たい」と思っても、「形が違っても観たい」と思っても、それはどちらも正解だと思うんです。
作り手も、観客も、自分の気持ちに向き合うことが大切だと思うんです。
自分の心の赴くままに、自分を楽しませるために、自分を生かすために楽しむのが、エンターテインメントだと思うんです。
だからこれからも、エンターテインメントが、舞台が、演劇が、この世界にありますように。
閉塞したこの世界で、それでも明日へ、明日へと、バトンが受け継がれていきますように…
そんなことを感じながら、ディレイ配信ぎりぎりまで、冬組の雄姿を噛みしめました。
本当に、素晴らしかったです。ありがとうございました。
もちろん円盤も予約したけれども。笑
さぁ、このバトンは、ライブを経て、次の季節へと繋がるはずです。
新しい春は、どんな姿をしてるんだろう?
いつまでも、未来へ繋ぎ続けていく「想い」のバトンを、出来るだけ長く見守り続けていられたらいいな、と、そんなことを思う、夏の終わり。
そう、冬単観てたから忘れてたけど、世の中はまだ8月なんですよね…。
涼しいのは、家の中だけ。とほほ